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大沢幹①
しおりを挟む「ねぇ、ちょっと道を教えてもらってもいい?」
このスマホ時代において道を聞くという行為が醸し出す違和感はかなり大きい。
それがワゴン車のバックドアを開き、荷物室に紙の地図を置いている怪しい男ともなれば役満揃ったり、といったところで、話しかけられたセーラー服の女の子は当然のように警戒心をむき出しにしていたが、彼女の中の親切心みたいのが勝ったのか険しい視線を送りながらも私に近づいてきてくれた。
「えっと、ここって…、地図のここら辺でいいのかな?」
私が地図を指差すと、女の子は無防備にも前かがみになり指の指している箇所を見てくれる。左手で髪をかきあげ、地図を真剣に見て、現在地を割り当てようとしている。
ストン
そんなことで、手刀を無防備な女の子の延髄に入れるのは簡単なことだった。崩れ落ちる身体を私は抱きかかえる。
誰かに見られないように素早く女の子の身体を開けっぴろげの荷物室に投げ入れ、素早く車を発進させていく、手際よく私は犯行現場から去っていった。
「みきさん、みきさん」
大沢 幹(おおさわ みき)の両肩を軽く揺さぶると、幹さんはゆっくりと目を開けた。
「大丈夫、起きた?」
幹さんの顔を覗き込むと、幹さんの目が恐怖心を取り込むように徐々に大きくなるのが観察できた。やがて両手足の自由がきかないことに気づき絶望的な表情を見せるまでの変化を私は間近で楽しむことができた。
「な、にこれ?」
幹さんは冷静さをギリギリに保った声を私に投げかける。いきなり叫んだりしない辺りに中○生らしいプライドが見え隠れする。
幹さんの身体は立ったまま柱に縛られ、手は後ろ手に縛られていた。運動会の時に繰り返される休めのような姿勢を強制されている。
「ねぇ、なんなんですか?これ、解いてください」
幹さんは言いながら身体を揺らし縄を解こうとするも、柱がギシギシと揺れるだけで解ける気配はない。
私は苛立ちが募ってきた質問を無視し、全身を舐め回すように見る。陸上部らしく健康的に焼けた小麦色の肌にショートボブの髪型、小さな顔に少し高い鼻でハーフのような顔立ちでありながら全体的に幼さが抜けきれず、美しさよりかわいさの際立つ顔をしている。
控えめながらセーラー服越しでもわかる膨らみと滑らかなくびれが女を見せつけ、この年代特有のアンバランスに長い脚は筋肉をほどよく付け、ヒップからの華麗な曲線美を体現していた。
「ねぇ、なんなのこれって、答えろってひゃっ」
私が無言で幹さんの胸をちょこんと触ると幹さんは新鮮な驚きの声を上げる。
「大沢幹さん、中○2年生、陸上部、160cm、好きな男の子はサッカー部の小倉裕也(おぐらゆうや)。」
手を胸から離し、私は淡々と幹さんの個人情報を呟く。全ては彼女のスマホから得た情報だ。ちなみにそのスマホは途中の道で投げ捨てた。
「えっ、なっんで、どういうこと、もうなんなの」
彼女は混乱が募り、しきりにかぶりをふっている。
「ねぇ、どういうこと。なに?、なにするつもりなの」
表情に怒りが芽生え、私をキッと睨む目に私はゾクゾクする。
私は無言のまま幹さんの背中側に回る。私の背中に隠れていた三脚とそれに載ったカメラが幹さんの目の間に露わになる。
「なにするかって?わかってるでしょ?」
今度は後ろから右手で幹さんの胸を鷲掴みにし、幹さんの耳に囁く。
幹さんの横顔から表情と血の気が引いていくのがわかった。
私はその表情の変化に喜びの口づけを彼女の頬に与えた。
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