銀色の救世主

ユリ

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第1章 世界へ

星の湖

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 星の降る夜。雨水が溜まり、大きな鏡となったその湖は、壮大な星空を映す。

 湖はきらきらと輝いていた。
 
「これはたしかに星の湖のようだ」

 ふと、アーティールは呟く。

「それはそうですが、ア、アーティール様。どうか落ちないで下さい…」

 心配そうに、そわそわとミシェルはアーティールを見守る。


 アーティールとミシェル、その他の使用人たちは星の湖と言われる湖を見に夜遅くこんなところまでやってきた。

 普段は外出禁止令の出ているアーティールも、使用人たちと、剣を振ることができるミシェルが付いていればいいということで、この景色を見ることができていた。


「分かっているよ。さすがの私でも湖に落ちるなんてこと………」


つるり


 アーティールは全身がふわりと浮いた気がした。というか浮いた。

 立ち上がった拍子に背中から転けてしまったのだ。

「…!アーティール様っ!」

 とっさに、ミシェルは手を伸ばし、引き寄せる。が、ミシェルの力では足りず結局二人もろとも湖に落ちた。

 湖は冷たく、そして力強かった。圧力がすごい。


(っ!深い)

 そこは思った以上に深く、足がつかない。

アーティールとミシェルは必死にもがき、陸へ上がろうとするが、水の重みが二人を襲う。

 実を言えば、ミシェル一人ならこんな状況なんてすぐ切り抜けられるのだが、自分と同じくらいの大きさの人間をいっしょに引っ張るとなると、さすがに無理だった。

 (…あ、もう、無理だ)

 体が空気を求める。意識は遠くなり、上も下もよく分からない。


 二人の記憶はそこで途切れた。




***




「救世主様がやってきた!」

 多くの人々の声。

「え、ちょっと、待ってくれ…きゅーせーしゅ?」

  

 二人の身に何が!?
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