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武神女帝編
ep442 タケゾー「本当の黒幕が見えてしまった」
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「武蔵殿よ。難しい顔をして、何を考えているのかな?」
「ちょいとこのままにした方がいいっしょ。どうやら、アカッチャンには何かが見えてきたみたいだ」
クジャクさんとフクロウさんに見守られながら、俺は頭の中の情報を整理する。
こちらにとっては大逆転とも言える今の情勢を踏まえ、一つだけ考えられる可能性がある。
もしも隼がウォリアールに来なかったら? もしも天鐘が反乱を起こしていなかったら?
ラルカさんと牙島の裏切り、クジャクさんの行動、フェリアの関与。これら全てがなかった場合の未来は?
――あらゆる要素を繋ぎ合わせた結果、俺の中で一つの結論が生まれつつある。
「……一応、俺の中で納得できる考えには至りました。ただ、このことを話すべきかどうか……」
「……ふむ。武蔵殿は殊勝な人物故、私もその言葉には従おう。だが、隼には話してやってくれぬか?」
「え? 隼だけに……ですか?」
俺の中で推測が形になるも、今度は『これが事実だった場合、口にしてもよいのか?』という不安が募ってくる。
ふとそのことを口にすると、クジャクさんが力強い眼差しで俺に訴えてくる。
「隼ならば、武蔵殿の言葉に気持ちが揺らぐこともなく、正面から受け止めるであろう。私もまだ短い期間での交流だが、信ずるに値する器量は見えている。何より、二人は夫婦であろう? 隠し事は野暮というものだ」
「……そうですね。なら、隼だけには心の隅に留めてもらいますか」
その言葉を聞けば、俺も少し安心できる。クジャクさんだって、隼のことを想って言葉を交わしてくれてるのは間違いない。
この人が隼の叔母さんでよかった。デザイアガルダのような私欲とは違い、隼を我が子のように大事にしてくれてるのが自然と理解できる。
「タケゾー! クジャクのおばちゃん! 戻るのが遅くなっちゃったね! ちょいと作戦会議で――あれ? フクロウさんも来てたの?」
そうしているうちに、渦中の人物である隼が部屋へと戻ってきた。作戦会議をしてたらしいが、調子はいつもと変わらない。
この様子なら、俺の話にも落ち着いて耳を傾けてくれそうだ。
「おお、隼も戻ったか。ならば、私とフクロウ殿はお暇させてもらうとしよう」
「え? もう帰っちゃうの?」
「もう数時間もすれば、天鐘との決戦っしょ? ソラッチャンも今は旦那と一緒に、残りの時間をゆっくり使えばいいさ」
俺に気を使ってくれたのか、クジャクさんとフクロウさんは部屋を後にしてくれる。まだ推測の域を出ないし、あまり広く話すと混乱をも招きかねない。
隼も不思議そうにしながら、ベッドに腰かけて俺と向かい合ってくる。
「ねえねえ、何の話をしてたのさ? ちょいと気になる空気なんだけど?」
「流石にお前でも勘付かれるぐらいには、何かしらの思惑は垣間見えたか」
「むぅ。『お前でも』って何さ? それじゃまるで、アタシが思惑絡みの話が――」
「『苦手じゃない』……と、言い切れるか?」
「……すんません。言えません。メッチャ苦手です」
「……ブフッ。隼らしい」
「うぐぐ~! タケゾーのくせに生意気だぞ! 何があったか教えなさい!」
思わず幼い頃から慣れ親しんだやりとりをするも、誤魔化すことで隼に話さず乗り切ることはできそうにない。
まあ、俺も隼にだけは話すつもりだったんだ。今更誤魔化しに頭を使う必要もない。
「……なあ、隼。今から俺が話すことは、あくまで一つの可能性だ。そのことを念頭に置いて、一応は耳にしてほしい」
「……もしかして、またまた名探偵タケゾー?」
「好きだな、そのフレーズ。まあ、そんな感じだ」
話題を振ってみれば、隼は少しお茶ら気ながらも顔を寄せて話を聞こうとしてくれる。
思えば、これまでも俺がいくらか推理担当になることはあった。俺の素人推理でしかないが、今回の件でもいくらか自信はある。
――もっとも、その規模が壮大過ぎて俺も全部を信じ切ることはできない。
「ウォリアールでの話をまとめてみて、俺は一つの可能性に辿り着いた。……ただ、このことは『あくまで可能性の一つ』に留めると約束してくれ。天鐘との決戦だって近いんだからな」
「くどいよ、タケゾー。アタシのやることが変わんないのなら、動揺なんてしないさ。……タケゾーだって何かに気付いちゃったから、こうして話してくれるんでしょ? 余計な心配などせず、奥様を信じなさいな」
どうしても顔に出てしまう不安も、隼は期待と信頼の笑顔で受け入れてくれる。
俺も頭の中に浮かんだ以上、一人で脳内に留めておくのは辛い。何より、隼ならば理解してくれる。
――それに隼も言う通り、この推察を踏まえても俺達の目指す道はもう変わらない。
「俺が思うに、今回の騒動における『本当の黒幕』は――」
「ちょいとこのままにした方がいいっしょ。どうやら、アカッチャンには何かが見えてきたみたいだ」
クジャクさんとフクロウさんに見守られながら、俺は頭の中の情報を整理する。
こちらにとっては大逆転とも言える今の情勢を踏まえ、一つだけ考えられる可能性がある。
もしも隼がウォリアールに来なかったら? もしも天鐘が反乱を起こしていなかったら?
ラルカさんと牙島の裏切り、クジャクさんの行動、フェリアの関与。これら全てがなかった場合の未来は?
――あらゆる要素を繋ぎ合わせた結果、俺の中で一つの結論が生まれつつある。
「……一応、俺の中で納得できる考えには至りました。ただ、このことを話すべきかどうか……」
「……ふむ。武蔵殿は殊勝な人物故、私もその言葉には従おう。だが、隼には話してやってくれぬか?」
「え? 隼だけに……ですか?」
俺の中で推測が形になるも、今度は『これが事実だった場合、口にしてもよいのか?』という不安が募ってくる。
ふとそのことを口にすると、クジャクさんが力強い眼差しで俺に訴えてくる。
「隼ならば、武蔵殿の言葉に気持ちが揺らぐこともなく、正面から受け止めるであろう。私もまだ短い期間での交流だが、信ずるに値する器量は見えている。何より、二人は夫婦であろう? 隠し事は野暮というものだ」
「……そうですね。なら、隼だけには心の隅に留めてもらいますか」
その言葉を聞けば、俺も少し安心できる。クジャクさんだって、隼のことを想って言葉を交わしてくれてるのは間違いない。
この人が隼の叔母さんでよかった。デザイアガルダのような私欲とは違い、隼を我が子のように大事にしてくれてるのが自然と理解できる。
「タケゾー! クジャクのおばちゃん! 戻るのが遅くなっちゃったね! ちょいと作戦会議で――あれ? フクロウさんも来てたの?」
そうしているうちに、渦中の人物である隼が部屋へと戻ってきた。作戦会議をしてたらしいが、調子はいつもと変わらない。
この様子なら、俺の話にも落ち着いて耳を傾けてくれそうだ。
「おお、隼も戻ったか。ならば、私とフクロウ殿はお暇させてもらうとしよう」
「え? もう帰っちゃうの?」
「もう数時間もすれば、天鐘との決戦っしょ? ソラッチャンも今は旦那と一緒に、残りの時間をゆっくり使えばいいさ」
俺に気を使ってくれたのか、クジャクさんとフクロウさんは部屋を後にしてくれる。まだ推測の域を出ないし、あまり広く話すと混乱をも招きかねない。
隼も不思議そうにしながら、ベッドに腰かけて俺と向かい合ってくる。
「ねえねえ、何の話をしてたのさ? ちょいと気になる空気なんだけど?」
「流石にお前でも勘付かれるぐらいには、何かしらの思惑は垣間見えたか」
「むぅ。『お前でも』って何さ? それじゃまるで、アタシが思惑絡みの話が――」
「『苦手じゃない』……と、言い切れるか?」
「……すんません。言えません。メッチャ苦手です」
「……ブフッ。隼らしい」
「うぐぐ~! タケゾーのくせに生意気だぞ! 何があったか教えなさい!」
思わず幼い頃から慣れ親しんだやりとりをするも、誤魔化すことで隼に話さず乗り切ることはできそうにない。
まあ、俺も隼にだけは話すつもりだったんだ。今更誤魔化しに頭を使う必要もない。
「……なあ、隼。今から俺が話すことは、あくまで一つの可能性だ。そのことを念頭に置いて、一応は耳にしてほしい」
「……もしかして、またまた名探偵タケゾー?」
「好きだな、そのフレーズ。まあ、そんな感じだ」
話題を振ってみれば、隼は少しお茶ら気ながらも顔を寄せて話を聞こうとしてくれる。
思えば、これまでも俺がいくらか推理担当になることはあった。俺の素人推理でしかないが、今回の件でもいくらか自信はある。
――もっとも、その規模が壮大過ぎて俺も全部を信じ切ることはできない。
「ウォリアールでの話をまとめてみて、俺は一つの可能性に辿り着いた。……ただ、このことは『あくまで可能性の一つ』に留めると約束してくれ。天鐘との決戦だって近いんだからな」
「くどいよ、タケゾー。アタシのやることが変わんないのなら、動揺なんてしないさ。……タケゾーだって何かに気付いちゃったから、こうして話してくれるんでしょ? 余計な心配などせず、奥様を信じなさいな」
どうしても顔に出てしまう不安も、隼は期待と信頼の笑顔で受け入れてくれる。
俺も頭の中に浮かんだ以上、一人で脳内に留めておくのは辛い。何より、隼ならば理解してくれる。
――それに隼も言う通り、この推察を踏まえても俺達の目指す道はもう変わらない。
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