空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
426 / 465
武神女帝編

ep426 敵の総本山に突入だ!

しおりを挟む
「空鳥、赤原。待たせたな」
「早速で悪いんだけど、オレッチのガンシップに乗ってくれ。このままクジャク様のタワーまでひとっ飛びするっしょ」

 少し待って陽が沈み始めた頃、フクロウさんのガンシップがアタシ達の元へやって来てくれた。
 フェリアさんも黒いレインコートに身を包み、高周波ブレードも握って準備万端だ。ガンシップの翼に乗りながら、やる気に満ちた表情をしている。

 ――てかさ、別にそのガンシップは二人乗りなんだから、フェリアさんだけでもコクピットに座ってる方がよくない? サラッとやってるけど、結構危ないよね?
 後、その黒いレインコートってフェリアさんにとっての戦闘装束なのね。狐面は外してても、そっちは外さないのか。

「まだ本当にタワー内にクジャクさん達がいるかの確認は取れてない感じ?」
「ああ。フロストも将軍艦隊ジェネラルフリートを使って情報を集めてくれてるが、まだどこにいるかも分からねえみてえだ」
「だが裏を返せば、今から向かうタワーにいる可能性だってあるってことっしょ。あそこは迂闊に立ち入れる場所でもないし、目立った場所でも身を隠すにはおあつらえさ」
「灯台下暗し……てか」

 何はともあれ、アタシとタケゾーもガンシップの上へと飛び乗り、移動をフクロウさんに一任する。
 どうやら機体周辺領域に光学迷彩フィールドが展開されているらしく、これなら上に乗ってるアタシ達の身も隠せる。
 ガンシップの上に三人で乗るのは無作法だけど、潜入するにはこの方法が一番だ。

 ――とりあえずはヒーローとして『ガンシップの上に乗りながら飛行してはいけません』って警告は促しておこう。

「今は姿を隠せてますが、乗り込む方法はどうしますか? ギリギリまでガンシップを横付けして、飛び移るとか?」
「いや、そこまでコソコソやってたら、流石に向こうにバレそうだ。だからオレッチもフロストの旦那から、作戦をたまわっている」
「へー。フロスト博士、わざわざこっちのために作戦まで用意してくれたのね」

 エンジン音を抑えて静かに、しかして速やかにタワーを目指すガンシップ。姿も消して、今のところは誰にも悟られずに進めている。
 今回の騒動において前線指揮を任されているフロスト博士の作戦もあるし、乗り込む心構えは万全だ。
 向かった先にデザイアガルダだろうが何がいようが、ドンと来いってもんよ。



「このままガンシップでタワーの窓に突撃して、三人を中へと届ける。そこで飛び降りて……後は頑張ってくれ」
「何それ!? ちょっと無茶苦茶じゃない!?」



 作戦内容が真っ当なものならね。何さ、ガンシップごとタワーに突撃するって?
 中に入った後のことより、突入方法の時点ですでに身構えなきゃいけないやつじゃん。

「こ、これって、隠密にコッソリ潜入するんじゃないんですか!?」
「『中に入っちまえば、どのみち騒動は確定だろーが』ってのがフロストの旦那の弁だ」
「確かにそうかもしれませんが、もうちょっと手優しくしてもらえません!? フェリアもこんな作戦で大丈夫なのか!?」
「栗阿を救うためだ。そのためだったら……俺はいくらでも無茶してやる!」
「くそっ!? どこまでも一途な王子様だな! 俺は戦闘に関してはこの中でもぶっちぎりの素人だぞ!?」

 タケゾーも思わずツッコミを入れるも、フクロウさんもフェリアさんも完全に覚悟を決めてる感じだ。
 まあ、アタシもできなくはないと思う。ただ、タケゾーは経験の浅さからどうにも及び腰だ。
 ジェットアーマーなんて力を持っていても、そこはやはりタケゾーか。本職は保育士だもんね。荒事とか苦手だし。

 ――てか、フェリアさんは普通にオッケーなんだ。この人、別にアタシみたいな強化人間でもタケゾーみたいなパワードスーツもない普通の人間だよね?
 それなのに乗ってくるあたり、流石はウォリアールの王子様。最大の理由は洗居さんへの想いの強さだろうけど。

「ほれ! もうグダグダ言ってる暇もないっしょ! 後は三人で頑張っておくんなよ!」
「どわぁぁあ!? ぶ、ぶつかるぅぅうう!?」
「やれやれ……。タケゾーには刺激が強すぎたか。これは嫁のアタシがフォローしますかねぇ」

 結局、タケゾーのことなど考えてもらえず、ガンシップはタワーの窓へと突撃していく。
 いざ突撃って時にパニくられてたら気分も乱れるし、タケゾーのことはアタシでどうにかしましょう、そうしましょう。


 バリィィィイイン!!


「よし、中に入れた! 俺達は飛び降りるぞ!」
「ほれ、タケゾー! アタシに掴まんな!」
「す、すまん! 隼!」

 ガンシップの先端で窓ガラスを砕き、アタシ達はタワー内部へと盛大に飛び込む。
 フェリアさんは生身で普通に飛び降りるも、タケゾーは慌てふためいてタイミングを見失いかけている。そんなわけで、アタシが代わりにお姫様抱っこしながら緩やかに滑空しながら着地。

 ――流れで普通にやったけど、立場が逆よ、逆。

「てか、フェリアさんの身体能力ヤバいよね。何か特別な肉体改造とかはしてないんでしょ?」
「してねえよ。訓練を積んだだけだ。これぐらいだったら、ラルカも問題なくできるだろうよ」
「恐るべき、ウォリアール。アタシ達の日常的常識が通用しない。……タケゾーの反応の方がアウェイって感じだね」
「う、うるさい。ウォリアール基準で考えないでくれ。……後、早く下ろしてくれ」

 フクロウさんはガンシップを反対の窓ガラスへと突撃させ、再び外へと出て行った。
 流石にガンシップを使ってタワー攻略とはいかないからね。一時的にタワー内を通過する操縦技術だけでも十分すぎるけど。

 とりあえずはアタシもお姫様抱っこしていたタケゾーを下ろし、軽くあたりを見回してみる。
 ここには見覚えがある。アタシとフェリアさんが戦った吹き抜け空間か。

「どうする? とりあえず、上に向かってみる?」
「その必要もねえだろ。こんだけ派手に突入した以上、向こうからお出まししてくれるさ。……あそこのテラスみてえにな」

 ここからどこを目指すか考えていると、フェリアさんが室内上部のテラス部分に目線を送りながら話を紡いでくる。
 アタシも同じように目を向ければ、いかにも胡散臭そうな男が一人。さらにその下、アタシ達の周囲を囲むように姿を見せるのは、白人と黒人の護衛役を中心とした六人組。

 全員の姿に見覚えがある。新たに追加された四人についても、アタシやタケゾーでも見知った顔だ。
 騒動を聞きつけて自ら姿を現すとは、こっちとしてはありがたい話かもね。



「先日はどうも……天鐘。ラルカさんの部下四人まで連れて、盛大なお出迎えご苦労さん」
「ホホホ。そちらこそ、わざわざワタシの元に戻って来てくださったのですか? ……空鳥様」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...