上 下
376 / 465
ウォリアール新婚旅行編

ep376 カジノで勝たなきゃ社長の元旦那がヤバい!

しおりを挟む
 ラルカさんとも別れ、ヘリポートで待つこと数分。本当に空を飛んでやって来たフレイムによって、アタシ達はカジノ前へと送迎してもらった。
 フクロウさんのガンシップに増設していた旅客ユニットをそのままフレイムが持ち運んで空を飛ぶという荒業だけど、中々快適だった。
 流石は将軍艦隊ジェネラルフリート最強のサイボーグ。タクシーとしても優秀だ。

 ――そんでもってラルカさんも言ってた通り、フレイムがカジノ前に現れても道行く人々は気にしていない。
 恐るべし、ウォリアールの常識。

「よっし、到着! フレイムもわざわざありがとね!」
「フオオォ、フオ、フオオオォ」
「え? 何々……? 『頃合いを見てまた迎えに来ます』……って、フリップに書いてまで説明どうも」

 アタシ達を降ろしたフレイムはフリップで説明を付け加えると、再び旅客ユニットを持って空へと消えていった。
 見た目とんでもサイボーグなのに、やるべき仕事はきっちりこなすんだ。喋れないから気持ちを読み取りにくいけど、中身は意外と普通な人なんだろうね。
 もしかすると、兄のフロスト博士より常識人かも。



「はてさて、紆余曲折を経てウォリアールのカジノにやって来たのはいいけれど……」
「……これ、一山当てないとフクロウさんが悲惨なことになるぞ?」
「ほ、本当に頼む……! 今収入をカットされたら、オレッチは生きていけない……!」



 とまあ、ようやくカジノにやって来たのはいいけれど、ここで問題が絶賛発生中だ。
 アタシ達がカジノで使うことになるクレジットなんだけど、これって元々はフクロウさんのお賃金なんだよね。で、話を総括するとこれを少なくとも倍に増やさないと、フクロウさんの生活が崩壊しちゃうわけ。
 せめてもの貯蓄ぐらいはして欲しかったのに、どうにもフクロウさんには貯金の習慣がないらしい。日本にいる時も結構使い込んだらしく、本当に貯蓄ゼロなんだとか。

 ――星皇社長が愛した人らしいけど、夫としてはどうだろうか? あるいはその関係が引き裂かれた反動か。

「しっかし、アタシもタケゾーもカジノは初心者だよ? 正直、勝てる見込みなんてないんだけど?」
「隼も楽しむこと目的で、勝つつもりはなかった感じか……」
「だ、だったら、オレッチに任せてくれ! カジノには何度も挑んでるし、今回は本気で勝ちに行くから……!」
「それで勝ててないから貯蓄がないんでしょ?」

 待ちに待ったカジノの外観は立派で、アタシも『いよいよだ!』って意気込みたくなる。だけど、同時に襲い掛かってしまうのは想定外のプレッシャー。
 ラルカさんも後で収支確認をするだろうし、下手に小細工が通用する相手でもない。ここで一山当てないとフクロウさんが飢え死んでしまう。
 自分達のお金で遊ぶよりプレッシャーだ。こういう緊張感はいらなかった。

「とりあえず、中に入ろっか。アタシ達も頑張って勝てるようにはするからさ」
「た、頼む……! 正義のヒーロー、空色の魔女として、オレッチの生活を救ってくれ……!」
「どう考えてもヒーローの仕事じゃないでしょ……」

 アタシもタケゾーも呆れ気味だけど、まずはカジノをしないことには始まらない。
 ただのお遊び感覚だったのに、まさかフクロウさんの生活がかかっちゃうなんて思わなかった。
 本気で頑張って勝たないとマズいし、気を引き締めていきますか。

 ――ギャンブルでどうやって頑張るのか知らないけど。





「うひゃー……! まさにザ・カジノって感じだねぇ……!」
「この光景だけでも圧巻ものだな……! 日本じゃ見られないぞ……!」

 何はともあれ、アタシ達は三人でカジノの中へと入る。そこで目にする内装は、まるでゲームの中やハリウッド映画で見るような豪華なカジノの姿。
 煌びやかな装飾に鳴り響くコインの音。多くのお客さんで賑わってるし、まさに異国に来たってところだね。
 少し小耳に挟んだんだけど、このカジノには海外有数のVIPも訪れるんだとか。アタシとタケゾーの場違い感が凄い。

「こちらのカードに入っているクレジットならば、当カジノのどの遊戯でもご利用いただけます。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください」

 入口でラルカさんにもらったカードを見せれば、従業員の黒服が丁寧に対応してくれる。
 てか、ウォリアールって日本語も問題なく話せる人が多いのよね。ちょっと異国情緒が失われるけど、便利だからまあいいや。

「……で、ここからどうするよ? まずは一山当てなきゃいけないのよね?」
「そんなこと言ったってだな……。フクロウさん、このカジノで一番儲かりそうなのって何ですか?」
「スロットは当たり目が出るまでが長いし、ポーカーは勝負勘が必要になってくる。ハイリスクハイリターンだが、やはり狙い目はルーレットだろうな。うまく行けばジャックポットも出てくれるし、ここはもう大勝ちを狙うしか……!」
「……フクロウさん、ちょっとヤケ起こしてない? 瞳孔開きながらカジノの考察しないでよ」

 異国情緒を楽しんでいたいのは山々だけど、アタシ達にはやることがある。
 このカジノでクレジットの残高を少なくとも倍にして、フクロウさんへキャッシュバックしないといけない。
 ラルカさんには不良債権を掴まされた感じだけど、ここまで来たらやるっきゃない。フクロウさんを救うためだ。

 ――普段のヒーロー活動とは全然違うけど。なんだったらフクロウさんの自業自得も含まれるけど。

「とりあえず、アタシもルーレットは賛成かな。スロットやポーカーって、ルールがイマイチ分かんないからね」
「ああ、頼んだぜ。少なくとも倍額にして、オレッチの給料分をキャッシュバックしてくれ……! マジで……!」
「気持ち分かりますが、フクロウさんも必死過ぎますよ……。目が怖いんですが?」

 まあ、アタシもフクロウさんをこのままにはしておけない。ここで負けて明日になったら、文字通り首が回らなくなった光景なんて結末まで見えてくる。それぐらい今のフクロウさんはヤバい。
 煌びやかな内装やお客さんに混ざりながら、アタシ達もルーレットのテーブルへと向かう。
 その内心はスリルを超えたストレスで曇りまくってるけど。



「……ん? オマン、空色の魔女ばい?」
「へ? どちら様?」



 そうしてやって来たルーレットテーブルに到着すると、向かいにいるディーラーに声をかけられた。
 なんだか馴れ馴れしく声をかけられるし、思いっきりアタシの正体も知っている。
 ただ、その顔に覚えはない。割とハンサム顔な壮年男性だけど、こんな知り合いいたっけ?
 どこか奇妙な日本語で話しかけてくるのが特徴的だけど――



「……って!? あんた、もしかして将軍艦隊ジェネラルフリート五艦将のベレゴマ!?」
「今更気づいたけんね? ……そげんいえば、ベーゴマドローン用のゴーグル外して話すのさ初めてばいか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

基本中の基本

黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。 もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

処理中です...