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将軍艦隊編・急

ep331 話をつけるぞ! 将軍艦隊!

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 一夜明けた翌日。アタシ達の乗る船は予定通り、将軍艦隊ジェネラルフリートのもとへ向かい始めた。
 表向きには固厳首相の命令で将軍艦隊ジェネラルフリートを討伐することになってるけど、それが無理なことは現場の人間なら百も承知だ。
 本当の目的は交渉による戦いの終焉。それ以外、誰の犠牲もなくこの騒動を終わらせる方法はない。

「SNSにもメッセージがいっぱい届いてるねぇ。もうじき電波も圏外だし、少しだけ返しておこっか」

 街のみんなによる空色の魔女用SNSにも、心配や応援をするメッセージが投稿されている。
 『無事で安心したが本当に大丈夫なのか!?』とか『何が起こるか分からないけど応援してるから!』とか。
 アタシも詳細までは説明できないけど、一つだけメッセージは送っておきますか。

【大丈夫!(`・ω・´) アタシにも考えがあるから、みんなは安心して待っててね!(∩´∀`)∩ この騒動が終わったら、みんなで祝賀会でもしよう!(*´ω`*)】

 この交渉がうまく行かなければ、街のみんなにも被害が及んでしまう。そんなことにはさせない。
 みんなが安心して過ごせる日常。それこそがアタシの望む一番の理想。
 そのためならば、アタシはいくらでも心を強く持てる。

【ソラッチャン。もうじき将軍艦隊ジェネラルフリートの潜伏している海域だ。デッキに上がって様子を見ててくれ】
「了解、フクロウさん。ガンシップから姿は確認できてる?」
【それなんだが、どこにも見当たらないんだよね。場所自体は合ってるはずだし、この近くにいるのは確かなはずだが……】

 イヤホンマイクにフクロウさんからの連絡も入り、アタシはスマホをしまって部屋を出る。
 纏う魔女装束は昨日から引き続きモデル・パンドラ。いくら交渉が目的とはいえ、相手は戦闘集団だ。戦わずに済む補償なんてない。
 デバイスロッドも手に取って準備は万端。ただ、肝心の敵の姿が見えないらしい。

「アタシもラルカさんの艦艇だけ少し見たけど、そこそこのサイズだよね? 水平線が見えるような場所で、どこに隠れてるんだろ?」
【さあな……。光学迷彩かとも思ったが、オレッチのガンシップのレーダーにも映らない。相手がフロスト博士だから、想像以上の技術を持ってる可能性はあるな。オレッチももう少し将軍艦隊ジェネラルフリート本隊の様子を調べるべきだったか……】

 フクロウさんはアタシ達の乗る船の頭上で、ガンシップから周囲を確認してくれている。
 それでも姿が確認できないなんて、敵はどこに潜んでいるのだろうか?

「どうやら将軍艦隊ジェネラルフリートは俺らに恐れをなし、撤退したと見えるな! 戦うまでもなかったか!」
「ええ。これが国も認めたヒーローの力というものね」

 こっちは警戒心満々なのに、先にデッキへ上がっていた戦士仮面と僧侶仮面は呑気なもんだ。
 逃げたわけないじゃん。むしろ、こっちが逃げててもおかしくない相手なのよ。
 アタシは何度も戦ってきたから分かるけど、将軍艦隊ジェネラルフリートの戦闘技術はこちらの想像のはるか上を行く。

「空鳥さん。あの二人のことは大目に見てやってほしい。どうにも、現実を直視できないみたいでね……」
「気にしないで大丈夫さ。それより、宇神君も警戒しておいてね。本当にどこから出てくるか分からない連中だからさ」
「もしかして、空を飛んでるとか? あのゲームの戦艦みたいに?」
「それが『ありえない』と言い切れないのが将軍艦隊ジェネラルフリートだからな……」

 対して、宇神君にショーちゃんにタケゾーは警戒しながら辺りを伺っている。
 みんなも言ってるけど、本当に急に空から降って来てもおかしくない相手なのよね。
 もしそうだとしたら、本当に文字通り想像の上を行くわけで――


 ゴボボボボボォ……!


「……え? 何これ? 海面が揺れてるってより……うごめいてる?」
「こ、これはまさか……!? みんな! 船体にしがみついてくれ!」

 ――そう考えていると、アタシ達の乗る船の周囲が突如大きく波打ち始める。
 それこそまるで、巨大な何かが海から湧き上がってくるような感じだ。
 宇神君も何かを直感したようで、アタシ達もその言葉の通りにデッキの柵へとしがみつく。


 ザバァァアアン!! ザバァァアアン!!


「か、海中から出てきた!? まさか、潜水機能まで持ってたの!?」
「う、嘘だろ!? あのサイズの船が四隻も潜水したまま待機してたのか!?」

 アタシとタケゾーも思わず声を上げてしまう光景だ。想像の上ではあったけど、敵が潜んでいたのはアタシ達の下の方だった。
 将軍艦隊ジェネラルフリートのものと思われる巡洋艦が四隻、こちらを包囲するように海中から姿を見せてきた。
 マジでどんな技術力よ? 巡洋艦に潜水艦としての機能を併せ持たせるなんて、アタシからすると意味不明なんだけど?

「ほ、包囲されただと!? だが、今こそ俺らの出番だ! 国家認定ヒーローの力を見せるぞ!」
「え、ええ! お、怯えてなんかいられないわ!」
「こんな光景を見てもまだそんなことが言えるなんて、呆れるを通り越して尊敬しちゃいそうだ。……だけど、敵はまだもう一隻残ってるね」

 戦士仮面と僧侶仮面は及び腰になりながらも、戦う意志は崩そうとしない。根性があるというより、引くに引けなくなったって感じだ。
 そもそも、包囲のために姿を見せた艦艇はまだ四隻だけ。全部ラルカさんが指揮していた巡洋艦と同規模のものばかりだ。

 ――おそらく、ボスであるフロスト博士が指揮する艦艇がまだ残っている。


 ゴボボボォォオオ!!


 ひと際大きな水音を響かせながら、こちらの船の前方へ最後の一隻が姿を見せる。
 激しく海面を波立たせ、水中から現れるのは他の四隻とは明らかに規模が違う艦艇。見るからにこの艦隊の旗艦と思われる船だ。

 ――その規模はこの場に揃った全ての船と明らかに違う。もはや戦艦クラスだ。

「あ、あわわ……!? こ、こんな船までいたなんて……!?」
「さ、流石に冗談じゃないわ……!? こ、こんなの勝てっこない……!?」
「アタシは最初からそう思ってたんだけどね。これで敵さんとの戦力差を理解できたかな? 戦意を失ったのなら、おとなしく下がってて頂戴な」

 見上げるほどに巨大な戦艦を前にして、流石の戦士仮面と僧侶仮面も腰を抜かしてへたり込んでいる。
 まあ、そうなるのが普通だよね。こんな艦隊と戦おうとしてたなんて、悪い夢だと思いたくなる。
 でも、アタシにはまだやることがある。

「……タケゾー。一緒に来てくれるね?」
「何度も確認しなくて大丈夫さ」
「そいつは失敬した。……そいじゃ、まずは申し出るとしましょうか」

 タケゾーと手を繋いで目を合わし、最後の確認をとっておく。するまでもない話かもしれないけど、気持ちの入れ直しってことで。
 そしてアタシは船のデッキから戦艦を見上げ、こちらを見ているであろうフロスト博士へ声をかける。



「フロスト博士! 聞こえてるよね!? この空色の魔女とその旦那で、あんた達と交渉がしたい! まずは攻撃せず、話を聞いてはもらえないかい!?」
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