空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
上 下
323 / 465
将軍艦隊編・破

ep323 旗艦戦行の艦橋将:フラグシップギアⅢ

しおりを挟む
「テメーら二人が一緒になっても、フラグシップギアの本領を前にすれば無意味ってーもんだ! 俺様の技術の結晶……受けてみやがれぇぇええ!!」

 ロボットに変形したフラグシップギアを操縦し、フロスト博士はアタシとタケゾーへと襲い掛かる。
 まずは小手調べとでも言いたいのか、腹部の機銃をこちらに連射してくる。
 こっちだって負けられない。タケゾーもすぐさまバイクを走らせる。

「俺はこのままフラグシップギアの周囲を旋回するように動く! 隼は攻撃できそうか!?」
「任せなって! アタシも伊達にヒーローとしての場数は踏んでないさ! どんな状況だろうが、これまで通りに乗り越えてみせる!」

 アタシもだけどタケゾーも場数を踏んできたためか、機銃で追われようが的確にバイクを操縦してくれる。
 これなら移動は任せられる。アタシはデバイスロッドを構え、サイドカーから攻撃に専念すればいい。

「ほれほれ! 戦車形態とは違うパワーアップをしたみたいだけど、人型ロボットには関節部があるんだよ? 人間と同じで脆いもんさ!」
「クカー! その程度のこと、俺様だって計算の内だ! このステージに合わせて戦ってるってーんだよ! 戦略だ何だをテメーらみてーな若造にとやかく言われる筋合いはねーな!」

 デバイスロッドをビームライフルにして、狙うは人型ロボットとなったフラグシップギアの関節部分。
 機体全体が大きく展開されたことで形成された関節は、フラグシップギアにとっての弱点だ。
 ただ、そんなことは搭乗者にして設計者であるフロスト博士本人も織り込み済みである。
 戦いの舞台となった場所はさっきの道路と違って狭く、あの戦車形態がどれだけ旋回性能に優れていても小回りが利きづらい。
 今のロボット形態は後輪をスケート代わりにすることで、この舞台に機動力を合わせている。


 バシュゥゥウンッ! バシュゥゥウンッ!

 ガンッ! ガンッ!


「チィ!? 関節部が露出しても、相応の強度は維持してるのか……!」
「あったりめーだ! それに機銃だけじゃーねー! アームと化したこのドリルもまた、テメーらを穿つ強力な武器ってーことだ!」

 ビームライフルを当て続けても、フラグシップギアの動きは止まらない。
 それどころか今度は近づきながら両腕のドリルを振り回し、アタシ達をすり潰そうと攻め立ててくる。
 ただのロマン兵装かと思ってたけど、実際に襲い掛かってくるとかなりの脅威だ。タケゾーに移動を任せていなかったら、アタシ一人での対処は難しかっただろう。

「くうぅ……!? 意気込み勇んで勝負に出たのはいいけど、やっぱ相手が悪かったか……!?」
「そのビームライフルでもダメとなると、電撃魔術玉はどうだ!?」
「あれでも勝算は薄いね……。せめて機体内部に攻撃できれば話も違うんだけど……!」

 どうにか攻撃を続けるも、このままでは埒が明かない。
 タケゾーだってバイクの運転で疲弊してるだろうし、長期戦は避けたい。
 何かいい手立てはないものか――



「……隼。フラグシップギアの懐に潜り込めば、機体外面に損傷を負わせることはできるか?」
「へ? う、うん。至近距離の物理攻撃なら、懐部分の装甲も貫けそうだけど……?」



 ――そんな時、タケゾーが覚悟を決めた表情で提案を始めた。
 こんな時だけど、不覚にもイケメンだと思ってしまうぐらいには覚悟が顔に出てる。
 だけど、一体何を企んでるんだろ?

「……よし。俺は今からあいつの股下に潜り込む。隼はそのタイミングで攻撃を加えてくれ」
「ほ、本気で言ってんの!? 確かにあの部分は機体が展開されたことで、防御が一番薄い部分ではあるけど……!?」
「危険なのは承知だ。隼を危険に晒すことは俺もしたくない。……だが、チャンスがあるならそこだ」

 アタシとしてはタケゾーを危険に晒す方が嫌なんだけど、その表情に滲む決意は固い。何より、アタシにもそれぐらいしか手段が思い浮かばない。
 タケゾーもここまで腹を括ってくれたのならば、アタシも応えないと罰が当たる、

 ――ここで勝負に出ないと、これまでの想いも無駄になってしまう。

「……タケゾー、お願い! アタシも一発で仕留めてみせる! むしろ、チャンスなんて一回だけさ……!」
「分かってる。俺だって戦う力がない分、こういう場面で役に立つさ!」

 タケゾーは自分が戦えないのを気にしてるけど、アタシとしてはとんでもない。むしろ、アタシの方は戦うことしかできない。
 バイクも車も免許は持ってないし、炊事家事はタケゾーがメインだ。こういう場面でしか役に立てないアタシの方が申し訳ない。

 ――なんて感慨は後のお楽しみだね。

「ゴタゴタぬかしてんじゃねーぞ! この一撃で……完全にバラバラになりやがれぇぇええ!!」

 アタシとタケゾーの作戦が決まったタイミングで、フロスト博士も次の攻撃を仕掛けてくる。
 背中のロケットエンジンでフラグシップギアを大きく飛翔させ、真上からドリルを突き立てながら襲い来る。
 完全に頭上をとられてるけど、あの巨体なら股下は十分な隙ができる。

「行くぞ! 隼!」
「あいよ!」

 もう余計な言葉もいらない。アタシはタケゾーを信じ、デバイスロッドを両手で握りしめる。
 頭上から飛び降りてくるフラグシップギアの股下のわずかな隙間を狙い、タケゾーはバイクを旋回させる。


 ズガァァアアンッ!!


「クカー!? 外したか!?」
「今だぁぁああ!!」

 本当に両腕のドリルと両足のギリギリのラインを攻め、バイクは股下へと潜り込めた。
 フロスト博士が驚いてわずかに隙を見せてるうちに、アタシは手に持ったデバイスロッドを全力で突き刺す――


 ブスンッ!!


「ク、クカー!? おい、テメー! フラグシップギアのどこにその杖を突き刺してやがんだぁあ!?」

 ――人間でいう股間にあたる部分に。
 フロスト博士には『下品な奴』みたいに罵倒されるけど、こっちだって仕方ないのよ。だって、あの場所の防御が薄いもん。
 案の定他の場所よりは脆く、アタシが全力で突き刺したデバイスロッドはフラグシップギアの股間に突き立てられた。

 ――なんだか、ちょっと卑猥。

「どこに刺してるんだよ!? ……って、言ってる場合でもないか!」
「そういうことさね! ちょいと悩ましい場所だけど、あれなら機体内部にまで攻撃が通る!」

 デバイスロッドを突き刺すと、タケゾーもバイクの距離をとってフラグシップギアへと向き直る。
 これで準備はできた。後は電撃魔術玉をチャージし、トドメの一撃をぶち込むのみ。

「く、くそ!? 変な真似をしやがって! どうにか抜いて――し、しまった!? フラグシップギアの両手はドリルじゃねーか!? 掴むことも股間部に近づけることもできねーぞ!?」
「ロマンと破壊力を兵器に求めるのもいいけど、もうちょい汎用性を持たせておくべきだったね! そして……これが最後の一撃だぁぁああ!!」

 フロスト博士に突き刺さったデバイスロッドを抜き取る手段はない。あのドリルの両手で下手に抜き取ろうとすれば、逆に本体にダメージが入ってしまう。
 色々と突っ込まれてたりツッコミどころ満載な光景だけど、ここで決めずしていつ決める。
 満身の想いを込め、チャージ完了した電撃魔術玉をサイドカーの上から解き放つ――



 スギャァァアアアンッ!!


「ク、クカー!? こ、こんなふざけた形で――ギゲェェエエ!?」



 ――フラグシップギアの股間目がけて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...