空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
上 下
313 / 465
将軍艦隊編・破

ep313 戦ってる場合じゃなくない!?

しおりを挟む
「フ、フロスト博士? もしかして今の状況って、将軍艦隊ジェネラルフリートだけじゃなく、アタシにとってもマズい感じ?」
【その通りだってーの! 空色の魔女! 将軍艦隊ジェネラルフリートが固厳首相から切り離された今、こっそりコメットノアを持ち出して完全に手切れとするつもりだったってーのに、これじゃ完全に動きがバレちまったじゃねーか!? しーかーもー! テメー自身も固厳首相には狙われてる立場だろーが!? コメットノアから警報が発信されちまったら、そっちも追われちまうだろーが!? その辺り、考えて動いてんのかってー話だ!!】
「……言われてみると、改めて脅威を実感しました」

 通信機から聞こえてきたフロスト博士の怒鳴り声で、アタシもようやく現状のマズさを理解した。
 今の大局って、アタシ達VS将軍艦隊ジェネラルフリートVS固厳首相の三つ巴なのよね。
 将軍艦隊ジェネラルフリートが固厳首相や星皇カンパニーの所有するコメットノア強奪を食い止められても、それを妨害したアタシ自身にも矛先が向けられてしまう。
 将軍艦隊ジェネラルフリートからコメットノアを奪われないようにすること優先で動いてたけど、こっちも派手に動き過ぎたか。

 ――てか、こうなった最大の原因って、アタシが牙島を戦艦コメットノア側面に牙島を叩きつけたからだよね?
 アタシも奇襲とか言って、テンション高く突っ込みすぎたか。

「ボス。自分達はいかがいたしましょうか?」
【コメットノアを持ち出す計画は頓挫だ! 固厳首相が将軍艦隊ジェネラルフリートにどー打って出てこよーが、本国から呼び寄せた本隊がいれば返り討ちにはできる! ……だが、空色の魔女は話が別ってーもんだ! この場で叩きのめしちめーな!】
「かしこまりました。ボスの命令により、空色の魔女を排除いたします」
【後、ラルカ! 今は平静を装ってるが、オメーももーちょい落ち着いて動けってーんだ! 空色の魔女が突入する前、荒れまくってたのは俺様だって知ってんだからな!?】
「……申し訳ございません。少々、日頃のストレスも溜まっていたもので。ですが、今は眼前のターゲットに狙いを絞ります」

 フロスト博士も相当お怒りなのか、もはやアタシのことは見逃せないといった様子でラルカさん達に命令を下している。
 そりゃそうなるか。固厳首相が敵に回ったのに、これ以上は余計な敵を増やしたくもないのだろう。

 ――ただ、あんまりラルカさんに怒鳴るのはやめてあげてほしいかな?
 声では落ち着いてるけど、さっきからアタシには眉がピクピクして苛立ちを抑えてるのが見えてるのよ。

【コメットノアの機体を動かすための白陽はくよう炉はそのままにするしかねーな! 俺様とフレイムも出撃するから、まずは空色の魔女をどーにかするぞ! 将軍艦隊ジェネラルフリート! 全部隊、出撃しやがれぇぇええ!!】
「そういうことです、ミス空鳥。あなたはここで将軍艦隊ジェネラルフリートの手により、今度という今度こそ再起不能になってもらいます」
「冷静に宣戦布告しとるけど、顔が引きつっとんぞ?」
「今はそげん余計なこと言っとる場合でもなか。固厳首相が動く前に、空色の魔女さぶちのめすこと考えるけん」

 なんだか思わぬ展開になっちゃったけど、将軍艦隊ジェネラルフリートの皆さんはやる気満々だ。
 こっちとしても敵に回す覚悟はあったわけだし、向かってくるなら蹴散らしたい。

【……隼。気合は入ってるみたいだが、ここは一度退却した方がいいぞ? あそこまで堪忍袋の緒が切れた将軍艦隊ジェネラルフリートが相手なだけでなく、フロスト博士やフレイムまでこっちに向かってるんだ。流石に危険すぎる】
「……冷静なブレイン、タケゾー参謀のおっしゃる通りで。フロスト博士はともかく、フレイムとの再戦はできれば御免だね。こっちとしても、この場に留まるのは得策じゃないか……」

 とはいえ、アタシも冷静に動くべき場面だ。ウィッチキャット越しにタケゾーがアドバイスを送ってくれて、アタシも落ち着いて考え直す。
 そもそもこの場所に固厳首相の手先が向かっているとすれば、それだけで単身のアタシは窮地に立たされてしまう。
 おまけにここにはコメットノアがあるから、下手に暴れすぎて破壊なんてしたくない。そんなことになったら、フクロウさんにどんな顔をすればいいのやら。

 そうなると、まずとるべき手段は一つ――



「来て早々だけど……アディオス!」
「あ、あいつ!? 好き放題に暴れてから逃げおった!? 何がしたかったんや!?」
「逃げるのが適切な場面とはいえ、どこか腹が立ちますね……!」
「とにかく追うばい! 逃がしゃせんね!」



 ――戦力的撤退しかない。いきなり奇襲をした直後だけど、戦況って常に流転するからね。仕方ないね。
 洞窟内にいた将軍艦隊ジェネラルフリートの構成員も撒きながら、アタシは大急ぎで外へ出る。
 ウィッチキャットもデバイスロッドに掴まってくれてるし、ある程度高度を上げておけば敵さんもすぐには追って来れないでしょ。

「ごめん! フクロウさん! マズいことになった! 要点だけ言うと『将軍艦隊ジェネラルフリートのコメットノア強奪は阻止できた』んだけど『固厳首相と将軍艦隊ジェネラルフリートから追われる立場になった』って状態!」
【おいおい!? そりゃまたとんでもない急展開じゃんか!? 何があったかは後にするけど、とりあえず将軍艦隊ジェネラルフリートの強奪計画を阻止できただけでも上出来だ! ソラッチャンもすぐにそこから逃げてくれ! オレッチも援護に入る!】
「うん、お願い! アタシも迎撃はするけど、今は逃げの一手しかないからね!」

 空を飛びながらイヤホンマイクでフクロウさんと連絡を取り、とりあえずの状況だけは伝える。
 通話越しに驚いてるけど、今はとにかく逃げるのが一番ってことだけ伝わればいい。
 フクロウさんも大事な部分だけは理解してくれたし、今頃ガンシップを出撃させてるはずだ。

「アタシは一度、タケゾー達と合流するよ! 追われながらの逃亡だし、みんなでバイクに乗った方が効率的かもね!」
【分かった! 俺も一度ウィッチキャットの操縦を切って――って!? あ、あれってまさか!?】
「え!? 今度はどうしたのさ!? ただでさえ色々と起りまくってる状況なのに!?」

 タケゾーともバイクでの合流を図るも、ウィッチキャットから聞こえる声にはどこか焦燥の色が見える。
 本当に何が起こってるのよ? 次から次へ状況が流転しすぎて、アタシも軽くパニくるんだけど?
 なんだか、デバイスロッドに掴まってるウィッチキャットの視線の先に何かあるっぽいけど――



「空色の魔女ぉぉおお!! ワイからそない簡単に逃げられると思ったら、大間違いもええとこやでぇええ!!」
「き、牙島ぁぁあ!? あんたの舌、そんなに長く伸ばせるのぉおお!?」



 ――なんと、一際高い木の上から牙島が舌を伸ばし、デバイスロッドへ巻きつけてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

処理中です...