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VRワールド編
ep273 初心者狩りが現れた!
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「そこの新人三人パーティー! 悪いんだが、俺達二人の実績の糧になってもらうぞ!」
「覚悟しなさい!」
「いくら政府の訓練プログラムであっても、こういう初心者狩りが出てくるのは多人数型オープンワールドゲームの宿命かねぇ……」
アタシ達家族三人パーティーの前に現れたのは、よくある全身タイツとマスクの戦隊ヒーローの姿をした、男女二人の経験者コンビ。
どうにも、アタシ達三人を実績解除の糧としたいらしい。
こういうところはゲームだよね。でも、プレイヤー同士を無闇に競わせるのはいかがだろうか?
まあ、政府としても競争を生み出すことで、より効率的にヒーローの適性を見極めたいのかもね。
「ところで、あの二人のレベルっていくつだろ?」
「ステータスを確認したところ、レベル50らしい」
「対するこっちは?」
「全員レベル1だ」
「数字だけ見ると、勝ち目も何もありゃしないねぇ……」
とはいえ、こちらも挑まれた以上は逃げ出せる状況ではない。そもそも、レベルは向こうの方がはるかに上だ。
仮にここから逃げ出そうとしても、その圧倒的なレベル差による能力差で追いつかれてバックアタックされて狩られるのがオチか。
もう覚悟を決めて戦うしかない。アタシもとりあえずはデバイスロッドが初期装備になってるし、これで殴って攻撃ぐらいはできるか。
「ねえ、隼さん。ボクも刀で攻撃はできるけど、勝てる気がしない」
「倒されてもその場でリスポーンできるみたいだし、ここは開幕早々の初全滅するしかないか……」
「ちょっとちょっと、二人とも。そんな弱気になんないでよね。勝てればアタシ達のレベルだって鯉のぼりなんだから、ここは勝ちを狙いに行くよ!」
「それを言うなら『ウナギ上がり』だ。そもそも、勝つための手段がないだろ……」
レベル1が三人VSレベル50が二人という状況のせいで、ショーちゃんとタケゾーはかなりの敗色濃厚ムードだ。
でも、アタシは諦めない。ヒーローとは最後まで諦めない者のことを言うのだ。
――まあぶっちゃけ、アタシも負けるのが嫌なだけなんだけどね。
こうなったら、あらかじめ仕込んでおいた秘密兵器を使ってみましょうか。
「さっさと終わらせるぞ! 火球連弾をくらえ!」
「私の氷結連弾も一緒よ!」
初心者狩りコンビもすでに交戦態勢へと入り、両手から挨拶程度の炎魔法と氷魔法のようなものを飛ばしてくる。
流石はゲームの中の世界。レベルが上がれば、あんなこともできるんだね。
こっちはまだ単純に殴ったり蹴ったりぐらいしかできないから、この魔法攻撃だけでも十分な脅威だ。
――まあ『当たればの話』なんだけどね。
「ショーちゃんは一歩後ろに下がって。タケゾーは二歩前ね」
「んぅ? どういうこと?」
「よ、よく分からないが、今は隼の言葉を信じるぞ!」
対するこちらの戦法だけど、まずはショーちゃんとタケゾーをそれぞれ指定の位置へと誘導する。
アタシの方は動かなくても問題ない。もうすでに計算は終えている。
それぞれこの位置にいれば、あの炎魔法や氷魔法が襲ってきても――
ゴオオオォ! シュオオオォ!
「あ、あれ? 当たってない?」
「ず、随分と運がいい初心者ね……」
――こちらに攻撃が当たることはない。連発された炎魔法も氷魔法も、アタシ達の周囲に着弾してダメージはゼロだ。
これで計算通りに攻撃を回避できることは確認できた。後は攻撃が成功する確立を引けば何とかなりそうだ。
「確かこのゲームでは通常攻撃のクリティカルなら、相手の魔法攻撃も跳ね返せるんだよね。……よし。ならばここで杖を三回地面で突いて……と」
「な、なあ、隼? さっきの攻撃が当たらなかったことといい、何をやってるんだ?」
「ああ、その説明は後でするね。とりあえず、タケゾーは前方を確認してて。ショーちゃんも今は待機でね」
「待機? どうしてか分かんないけど、今は隼さんの言う通りにする」
攻撃方法についてもアタシには見えてきた。
タケゾーとショーちゃんは不思議がってるけど、こっちもこっちで計算が忙しい。説明はこの二人を倒した後にしよう。
アタシの計算が正しければ、もうじき敵二人も大技を放ってくるんだけど――
「よく分からないことをしてるが、この技ならどうしようもあるまい!」
「極大クラスの魔法の一撃! 今度こそ私達が仕留めてあげるわ!」
――その期待通り、両手を構えてそこにそれぞれ強大な炎と氷の魔法玉を形成している。
アタシが普段使ってる電撃魔術玉に近い性質の技か。でもまあ、こっちはすでに『数字』を読み取ることに成功している。
「吹っ飛べぇえ!」
「くっらえぇ!」
ギュゴォォオオ!!
「タケゾー! そっちは炎の魔法玉に殴りかかって! アタシは氷の魔法玉に対処する!」
「簡単に言ってくれるなよ!? でもまあ、隼の言葉を信じるぞ!」
そして溜め終わった魔法玉がそれぞれタケゾーとアタシに飛んでくるのだが、もう問題ない。
『数字』を読み取り『確率』を引くこともできた。このタイミングならば、それぞれの魔法玉に殴り掛かるなりすれば――
バゴォォンッ! バゴォォンッ!
「なっ!? ば、馬鹿な!? 魔法攻撃をクリティカルで跳ね返しただと!?」
「しょ、初心者なのに!? ビギナーズラックだとでも!?」
――跳ね返して逆に攻撃として利用できる。
タケゾーは素手で殴って炎の魔法玉を、アタシはロッドを振るって氷の魔法玉を跳ね返し、狙い通りに相手の方へと吹き飛んでいく。
この後についても計算通り。相手は回避する余裕もなく――
ズゴォォォオオンッッ!!
「ガハッ……!? ま、負けた……!?」
「レ、レベル1相手に……!?」
――自分達が放った攻撃により、あえなく自沈。
まあ、向こうとしても驚きだろうね。レベル50なのにレベル1に負けるなんて、それこそ信じたくもないだろう。
とはいえ、これでアタシ達の勝ちだ。結構頭を使っちゃったけど、これならこのVRワールドで多少の困難があっても、同じ方法で対処できそうだ。
結果として、初心者狩り二人組の方がアタシの実験台になっちゃった感じだね。
「……なあ、隼。お前、絶対に何かしてただろ? こんな都合よく勝てるなんて、いくらなんでもおかしいぞ?」
「まあ、確かに少しばかりズル賢い手は使わせてもらったよ。ここは敵陣でもあるわけだし、警戒するに越したことはないからねぇ」
「でも、一体何をやっていたの? 奇妙な動きもしてたし、ボクも分からない」
無事に勝ち星を拾うと、タケゾーとショーちゃんも気にしてくるアタシの手品のタネ。ここまで幸運が重なると、やっぱり気になっちゃうよね。
まあ、ズルいのはアタシだって承知の上さ。だけど、別にこのゲームそのものに何か手を出していじくったわけじゃない。
アタシはただ事前準備により『ゲームのバックログを見れるようにした』だけ。
そのバックログから『計算して確立を引き当てた』だけ。
チートコードとかは使ってないし、こちらからゲームに干渉はしていない。あくまで受信結果をもとに計算しただけだ。
――本来なら『ツールアシストスーパープレイ』に使われる技法を、アタシがこのゲームで再現したって話だ。
「所謂『乱数調整』って奴さ。現実に近いフルダイブVRとはいえ、電子の世界ならアタシにも取れる対処はあるってもんよ」
「覚悟しなさい!」
「いくら政府の訓練プログラムであっても、こういう初心者狩りが出てくるのは多人数型オープンワールドゲームの宿命かねぇ……」
アタシ達家族三人パーティーの前に現れたのは、よくある全身タイツとマスクの戦隊ヒーローの姿をした、男女二人の経験者コンビ。
どうにも、アタシ達三人を実績解除の糧としたいらしい。
こういうところはゲームだよね。でも、プレイヤー同士を無闇に競わせるのはいかがだろうか?
まあ、政府としても競争を生み出すことで、より効率的にヒーローの適性を見極めたいのかもね。
「ところで、あの二人のレベルっていくつだろ?」
「ステータスを確認したところ、レベル50らしい」
「対するこっちは?」
「全員レベル1だ」
「数字だけ見ると、勝ち目も何もありゃしないねぇ……」
とはいえ、こちらも挑まれた以上は逃げ出せる状況ではない。そもそも、レベルは向こうの方がはるかに上だ。
仮にここから逃げ出そうとしても、その圧倒的なレベル差による能力差で追いつかれてバックアタックされて狩られるのがオチか。
もう覚悟を決めて戦うしかない。アタシもとりあえずはデバイスロッドが初期装備になってるし、これで殴って攻撃ぐらいはできるか。
「ねえ、隼さん。ボクも刀で攻撃はできるけど、勝てる気がしない」
「倒されてもその場でリスポーンできるみたいだし、ここは開幕早々の初全滅するしかないか……」
「ちょっとちょっと、二人とも。そんな弱気になんないでよね。勝てればアタシ達のレベルだって鯉のぼりなんだから、ここは勝ちを狙いに行くよ!」
「それを言うなら『ウナギ上がり』だ。そもそも、勝つための手段がないだろ……」
レベル1が三人VSレベル50が二人という状況のせいで、ショーちゃんとタケゾーはかなりの敗色濃厚ムードだ。
でも、アタシは諦めない。ヒーローとは最後まで諦めない者のことを言うのだ。
――まあぶっちゃけ、アタシも負けるのが嫌なだけなんだけどね。
こうなったら、あらかじめ仕込んでおいた秘密兵器を使ってみましょうか。
「さっさと終わらせるぞ! 火球連弾をくらえ!」
「私の氷結連弾も一緒よ!」
初心者狩りコンビもすでに交戦態勢へと入り、両手から挨拶程度の炎魔法と氷魔法のようなものを飛ばしてくる。
流石はゲームの中の世界。レベルが上がれば、あんなこともできるんだね。
こっちはまだ単純に殴ったり蹴ったりぐらいしかできないから、この魔法攻撃だけでも十分な脅威だ。
――まあ『当たればの話』なんだけどね。
「ショーちゃんは一歩後ろに下がって。タケゾーは二歩前ね」
「んぅ? どういうこと?」
「よ、よく分からないが、今は隼の言葉を信じるぞ!」
対するこちらの戦法だけど、まずはショーちゃんとタケゾーをそれぞれ指定の位置へと誘導する。
アタシの方は動かなくても問題ない。もうすでに計算は終えている。
それぞれこの位置にいれば、あの炎魔法や氷魔法が襲ってきても――
ゴオオオォ! シュオオオォ!
「あ、あれ? 当たってない?」
「ず、随分と運がいい初心者ね……」
――こちらに攻撃が当たることはない。連発された炎魔法も氷魔法も、アタシ達の周囲に着弾してダメージはゼロだ。
これで計算通りに攻撃を回避できることは確認できた。後は攻撃が成功する確立を引けば何とかなりそうだ。
「確かこのゲームでは通常攻撃のクリティカルなら、相手の魔法攻撃も跳ね返せるんだよね。……よし。ならばここで杖を三回地面で突いて……と」
「な、なあ、隼? さっきの攻撃が当たらなかったことといい、何をやってるんだ?」
「ああ、その説明は後でするね。とりあえず、タケゾーは前方を確認してて。ショーちゃんも今は待機でね」
「待機? どうしてか分かんないけど、今は隼さんの言う通りにする」
攻撃方法についてもアタシには見えてきた。
タケゾーとショーちゃんは不思議がってるけど、こっちもこっちで計算が忙しい。説明はこの二人を倒した後にしよう。
アタシの計算が正しければ、もうじき敵二人も大技を放ってくるんだけど――
「よく分からないことをしてるが、この技ならどうしようもあるまい!」
「極大クラスの魔法の一撃! 今度こそ私達が仕留めてあげるわ!」
――その期待通り、両手を構えてそこにそれぞれ強大な炎と氷の魔法玉を形成している。
アタシが普段使ってる電撃魔術玉に近い性質の技か。でもまあ、こっちはすでに『数字』を読み取ることに成功している。
「吹っ飛べぇえ!」
「くっらえぇ!」
ギュゴォォオオ!!
「タケゾー! そっちは炎の魔法玉に殴りかかって! アタシは氷の魔法玉に対処する!」
「簡単に言ってくれるなよ!? でもまあ、隼の言葉を信じるぞ!」
そして溜め終わった魔法玉がそれぞれタケゾーとアタシに飛んでくるのだが、もう問題ない。
『数字』を読み取り『確率』を引くこともできた。このタイミングならば、それぞれの魔法玉に殴り掛かるなりすれば――
バゴォォンッ! バゴォォンッ!
「なっ!? ば、馬鹿な!? 魔法攻撃をクリティカルで跳ね返しただと!?」
「しょ、初心者なのに!? ビギナーズラックだとでも!?」
――跳ね返して逆に攻撃として利用できる。
タケゾーは素手で殴って炎の魔法玉を、アタシはロッドを振るって氷の魔法玉を跳ね返し、狙い通りに相手の方へと吹き飛んでいく。
この後についても計算通り。相手は回避する余裕もなく――
ズゴォォォオオンッッ!!
「ガハッ……!? ま、負けた……!?」
「レ、レベル1相手に……!?」
――自分達が放った攻撃により、あえなく自沈。
まあ、向こうとしても驚きだろうね。レベル50なのにレベル1に負けるなんて、それこそ信じたくもないだろう。
とはいえ、これでアタシ達の勝ちだ。結構頭を使っちゃったけど、これならこのVRワールドで多少の困難があっても、同じ方法で対処できそうだ。
結果として、初心者狩り二人組の方がアタシの実験台になっちゃった感じだね。
「……なあ、隼。お前、絶対に何かしてただろ? こんな都合よく勝てるなんて、いくらなんでもおかしいぞ?」
「まあ、確かに少しばかりズル賢い手は使わせてもらったよ。ここは敵陣でもあるわけだし、警戒するに越したことはないからねぇ」
「でも、一体何をやっていたの? 奇妙な動きもしてたし、ボクも分からない」
無事に勝ち星を拾うと、タケゾーとショーちゃんも気にしてくるアタシの手品のタネ。ここまで幸運が重なると、やっぱり気になっちゃうよね。
まあ、ズルいのはアタシだって承知の上さ。だけど、別にこのゲームそのものに何か手を出していじくったわけじゃない。
アタシはただ事前準備により『ゲームのバックログを見れるようにした』だけ。
そのバックログから『計算して確立を引き当てた』だけ。
チートコードとかは使ってないし、こちらからゲームに干渉はしていない。あくまで受信結果をもとに計算しただけだ。
――本来なら『ツールアシストスーパープレイ』に使われる技法を、アタシがこのゲームで再現したって話だ。
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