上 下
253 / 465
新世代ヒーロー編

ep253 新人三人組を追っ払え!

しおりを挟む
 いちゃもんをつけられる形で始まった、アタシVS新人三人組というヒーロー同士のバトル。
 中学校の校庭を借りて、世の中を守るヒーロー同士がぶつかり合ってしまう。

「うおおぉ! 空色の魔女と政府の犬パーティーのバトルだぁぁあ!」
「頑張って! 空色の魔女ぉぉおお!」
「ほう……! わしも若い頃、合気道で地下格闘場のリングに上がったのを思い出すわい……!」

 教室から生徒達もその様子を眺め、授業そっちのけで観戦している。てか、おじいちゃん教師まで観戦してる。
 まさにオーディエンスは大盛り上がりだ。アタシとしては学校なんだから、本分の学業に力を入れて欲しいもんだ。
 将来何になるか分からないんだから、多くを学んで知っておくことは重要なんだよ? アタシもエンジニアから清掃業になってそう感じるよ。



「おい、空色の魔女! 真面目に僕達の相手をしろ!」
「敵を眼前に集中しないなど、無礼にもほどがあんだろ!?」
「私達のことを舐めすぎでしてよ!」
「あー、ごめん。ぶっちゃけ、片手間でどうにかなる感じだったから、意識が逸れてたや」



 そんでもって肝心の新人三人組なんだけど、まあ決して動き自体は悪くない。
 どんな肉体改造をしたのかは不明だけど、身体能力自体は確かに高い。平常時のアタシぐらいのスペックはある。
 勇者仮面は素早く剣を振るい、戦士仮面は鎧で身を守りながら殴り掛かり、僧侶仮面がバリアで防御に回る。こっちと違って連携だってとれる。

 ――だけど、本当に『ただそれだけ』って話だ。
 身体能力に関しては牙島よりはるかに劣り、連携についてもラルカさんとその部下達ほど恐ろしくはない。
 それに何より、まだ能力の使い方がなっていないとでも言うべきか、アタシにはどこか『強大な能力に振り回されている』感じがするのよね。

 これなら正直、デザイアガルダあたりを一人で相手する方が厳しいぐらいだ。

「パワーもチームワークもテクニックも、もうちっと磨いてから出直してくるこったね! オーディエンスには悪いけど、さっさとゲームセットさせてもらうよ!」

 アタシもヒーロー同士のバトルなんて無益なことを、そう長々と続けたくはない。
 もう一気に勝負に出るためにも、空中で電撃魔術玉の構えをとり、一ヶ所に集まった新人三人組へと狙いを定める。
 この距離での一掃が狙いなら、チャージの必要があっても広範囲を攻撃できるこっちの方がビームライフルより好都合だ。

「くっ!? 降りてこい! 空色の魔女! 空を飛ぶなんて卑怯だぞ!?」
「これはアタシの固有能力なもんでね。卑怯だ何だはお門違いってもんよ」
「私が防御するわ! あんな電気玉の一つぐらい、私の手で……!」

 チャージタイムに関しても、向こうは空を飛べないからこっちが範囲外でやれば問題ない。
 それでも僧侶仮面が前方に躍り出て、電撃魔術玉をバリアで食い止めようと構えてくる。
 あのバリアって、どれぐらいの強度なんだろうね? 電撃魔術玉を防がれると面倒だ。

 ――だったら、もう一手先も講じておきますか。

「まずは……電撃魔術玉! 発射ぁぁああ!!」

 とりあえず、初手は変わらない。チャージしておいた電撃魔術玉を三人目がけて、宙を舞ったまま発射する。
 僧侶仮面のバリアがあるけど、はてさてどこまで耐えられるものか。


 ギュゴォォォオン!!


「くうぅ……!? す、凄まじい衝撃……!」
「だが、よく耐えた! この技は空色の魔女の必殺技! これに耐えきれた以上、僕達の勝利は目前だ!」

 衝撃でかなり後逸はしてるけど、僧侶仮面のバリアはアタシの電撃魔術玉を耐えきった。
 やっぱ、能力自体は大したもんなんだよね。アタシも威力を加減はしたけど、あの電撃魔術玉を耐えるのは見事なもんだ。
 実際、これがアタシ一番の必殺技ではあるけれど、次の一手はもう用意してある。威力を抑えたのもそれが理由だ。

「勝ち星が見えそうなところ悪いんだけど、そいつはちょいと油断しちゃったもんだねぇ!」
「なっ!? もう突進してきた!?」
「お、俺が仁王立ちで――」
「残念! もう手遅れってもんよ!」

 電撃魔術玉を発射するとほぼ同時に、アタシ自身もデバイスロッドに腰かけながら三人のもとへ突っ込んでいく。
 完全に電撃魔術玉に意識を向けてたから、アタシに気付いたころにはもう遅い。こっちは戦いの年季が違うってもんだ。年単位で戦ってないけど。
 ともあれ、突進で三人の懐まで潜り込めばこっちのもんだ。デバイスロッドを両手で握ってスタンロッドへと機能変更し、ここからは近接勝負となる。
 僧侶仮面のバリアも電撃魔術玉で解除されたし、戦士仮面の鎧もここまで懐ならば突き破れる。
 勇者仮面が剣を構えなおす余裕もなく――


 バコォン! バコォン! バコォン!


「ガハッ……!? ぼ、僕達が……負けた!?」
「お、俺の鎧の上からでも電撃が……!?」
「な、なんでモグリのヒーローがこんなに強いのよ……!?」

 ――アタシがロッドをそれぞれに振り抜いていき、あえなく撃沈。普段のヒーロー活動よりは骨が折れたけど、それでも強豪ヴィランを相手にするほどでもない。
 今はそういうヴィランもいないからいいけど、これはちょいと実力不足ではなかろうか? もしもまた本当に本物のヴィランが出てきたら、この三人組だけじゃ対処しきれないよ?
 将軍艦隊ジェネラルフリートだってまた何をするか分からないし、正直言うとこの新人三人組に街の平和は託せないね。

「あんた達さ、本当にもうちょっと鍛え直した方がいいと思うよ? アタシ一人に軽くいなされるようじゃ、この先のヒーロー活動も苦しくなっちゃうよ?」
「ほ、本当に腹の立つ魔女だ……! どこまで偉そうに先輩面すればいいんだ……!?」
「お、俺らは政府公認のヒーローなんだぞ……!?」
「ど、どうして私達の方が、あなたみたいなみたいなモグリなんかに……!?」

 校庭のど真ん中で政府公認のヒーローがうずくまり、モグリと呼ばれるアタシが上からご高説を垂れるというのもおかしな光景だ。
 アタシだって、本当はこんな風にしたくはないのよ? だけど、そうせずにはいられないのよね。

 これまでそれなりにアタシもヒーローをやってきたけど、その力にも行動にも責任が伴う。アタシだって、まだまだ未熟だと感じてる。
 それをどうしても理解してほしくもなるし、ヒーローをするんだったら覚悟が必要だ。

 ――正直、ヒーローをやることって憧れとかよりも、背負うものの重さが上回るのよ。
 星皇社長との戦いを通じてアタシもそれを学んだ。独善的かもしれないけど、そこの理解を求めずにはいられない。



「ほぉう? 流石は空色の魔女。ヒーロー制定法が施行されるよりも以前から、ヒーローとして戦っていただけのことはある。そこの三人が相手でも、後れを取る様子もなしか」
「ん? どちら様? ……って!? あ、あんたはまさか……!?」



 そうこう新人三人組にお説教をしていると、校庭にまた別の人物がやって来た。
 こんなヒーロー同士のくだらない喧嘩に割り込むなんて物好きだとも思ったけど、この人は新人三人組とも大いに関係がある人だ。
 てか、なんでここにいるのよ? こんな場所に姿を見せるのは、似つかわしくない人だよね?
 まさに元相撲取りのようなガタイをして、高そうなスーツに身を包んだこの人は――



「ウチのヒーローがお世話になったみたいだな。流石はヒーロー制定法が定められるよりも前から、ヒーローをしているだけのことはあるか」
「こ、固厳こげん首相……!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

【総集編】SF短編集

Grisly
SF
⭐︎登録お願いします。 【1話完結 読切SF短編集🛸】 《各話1分で読めます》

神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行
SF
 主人公 須舞 宇留は、琥珀の巨神アンバーニオンと琥珀の中の小人、ヒメナと共にアルオスゴロノ帝国の野望を食い止めるべく、日々奮闘していた。  最凶の敵、ガルンシュタエンとの死闘の最中、皇帝エグジガンの軍団に敗れたアンバーニオンは、ガルンシュタエンと共に太陽へと向かい消息を絶った。  一方、帝国の戦士として覚醒した椎山と宇留達の行方を探す藍罠は、訪ねた恩師の居る村で奇妙な兄弟、そして琥珀の闘神ゼレクトロンの化身、ヴァエトに出会う。  度重なる戦いの中で交錯する縁。そして心という琥珀の中に閉じ込めた真実が明らかになる時、宇留の旅は、一つの終着駅に辿り着く。  神樹のアンバーニオン 3  絢爛!思いの丈    今、少年の非日常が、琥珀色に輝き始める。

処理中です...