235 / 465
魔女と家族の新たな日常編
ep235 タケゾー「こいつ、俺の嫁の裸を見たのか?」
しおりを挟む
「わ、悪かったとは思ってるさ。でもよ、あの時はそうしないと空鳥も助からなかったわけだし……」
「ああ、理解してる。俺はあんたに感謝してる……!」
「ほ、本当に感謝してるのか? 俺の胸倉を掴みながら言うセリフか?」
『フェリアが隼の裸を見ていた』という事実が、俺の心の中に憎悪を湧き立たせてしまう。
頭では状況を理解してても、この濁った心を抑えられない。今なら、この感情だけでヴィランになれそうだ。
「つうか、そもそもなんであんたはそんなに女装がうまいんだ? 後、どうしてシスターなんて役職までしてる?」
「こ、これはウォリアールの諜報訓練で得た技術だ。医療技術も身に着けてたし、そこに海外要素も合わせれば、教会でシスターをするのが身分も誤魔化せるって……ラルカが言ってた」
「ラルカって、将軍艦隊幹部のラルカか? まあ、そこはどうでもいいな。……俺としては、やはり隼の裸を見たことが許せない。俺だって、まだ見たことないのに……!」
「み、見たことなかったのか!? 結婚まで行ったくせに、どんだけ初心なカップルだよ……!?」
フェリアの気になる点を聞くことで気を紛らわせようとするも、俺の中の憎悪は収まりそうにない。
隼の生まれたままの姿なんて、それこそ幼稚園時代まで遡らないと見た記憶がない。そんなものはノーカンだ。
夫である俺よりも先に嫁の裸を他の男に見られるなんて、これこそまさに屈辱の極み。どれだけ誤魔化そうとしても、自然と目がつり上がってフェリアの胸倉を掴む手にも力が入ってしまう。
――だが、これでは以前おふくろにビンタされた時の二の舞だ。
「……今回だけだ。今回だけは大目に見てやる」
「あ、ありがとよ……。助かったぜ……」
「だが、次はないぞ? もう隼の裸を見て、欲情なんかさせないからな?」
どうにかして呼吸を整え、俺は掴んでいた手を放してフェリアを解放する。
俺としてはショックだったが、なんだかんだでこいつは命の恩人だ。これ以上、激情に駆られるわけにはいかない。
そもそもさっきまでの話の通りにフェリアと洗居さんがウォリアールに向かえば、少なくとも当分は隼の裸をこいつに見られることも――
「まあそもそもの話、俺は空鳥みてえなデカすぎる胸には欲情しねえしな」
「なんだとぉぉおお!? フェリアァァアア!! てめぇぇえええ!!??」
――ないのではあるが、フェリアの余計な一言で俺の堪忍袋の緒が切れた。
隼の胸に欲情しないだと? あのサイズもモデルも完璧なおっぱいを見てもだと?
こいつ、本当に男か? 隼の胸なんて、男なら誰もが夢見る理想郷だろ?
――その疑惑が、俺を一瞬で憤怒の炎に陥れた。
「な、何しやがる!? 欲情する胸だったら、栗阿の胸こそが至高だろうが!? 大きすぎず小さすぎず、それでいて形もいい! 空鳥のデカ乳と一緒にすんなぁぁああ!!」
「言っていいことと悪いことがあるだろ!? 隼の胸はデカいだけじゃない! 形も弾力も……最強で最高だぁぁあ!!」
「当人の裸も見たことねえのに、なんでそんなことを言い切れるんだぁぁあ!?」
「前にその胸で押しつぶされて、ガチで天国に逝きかけたからだよぉぉおお!!」
俺は思わずフェリアの胸倉を掴み直し、自分でも分かるほど鬼気迫る勢いで怒鳴りかかる。
だが、フェリアも今回は違う。同じように俺の胸倉を掴み、あろうことか自身の想い人である洗居さんのおっぱいを題材に出し、反論をけしかけてきた。
「テメェとは分かり合える気がしたのに、どうやらその本性はクソみてえだなぁあ! 赤原ぁああ!! 栗阿のおっぱいこそが至高だと……認めろぉぉおお!!」
「認めてたまるかぁぁああ!! そっちこそ強がってないで、隼のおっぱいが究極だって認めやがれぇ! フェリアァァアア!!」
その後はお互いに取っ組み合いの喧嘩にまで発展し、室内にあった花瓶や窓ガラスまで破壊する始末。
後にして思えば、やり過ぎたとは思う。だが、男には時として譲れない一線がある。
――愛する女のおっぱいを馬鹿にされた。些細に聞こえることでも、それが俺達のような男の劣情に火をつけることにもなる。
たかがおっぱい。されどおっぱい。
――お互いに愛する女のおっぱいを譲らぬために、男と男の勝負が始まってしまった。
「おいこらぁあ! フェリアァアア!! 隼の胸の方が魅力的に決まってんだろぉおお!?」
「ああぁ!? やるってんのかぁ!? 赤原ぁああ!! デカけりゃいいってもんじゃねえだろ!? 栗阿のサイズが丁度いいに決まってんだろがぁああ!?」
「いい加減にしろよ……! 人の嫁の胸を治療の時に見ておいて、その言い草はなんだぁぁああ!? 第一、隼の胸はただデカいってだけじゃない!! 形だって、絶対に隼の方が上だぁぁああ!!」
「舐めてんのかぁぁあ!? そこのバランスも含めて、栗阿の方が上に決まってんだろがぁぁああ!!」
その後も取っ組み合いの喧嘩を続けながら、互いが愛する女のおっぱいの方が上だと主張し合う。
いつの間にか俺もフェリアも上着がはだけ、半裸になるほどの大乱闘。本当に後にして思うと、何をやっていたのかと思わずにはいられない。
「あ、あのー……お二人とも? ちょーっといいかな?」
「だ、誰だ!? ……って、隼!?」
「ああぁ!? 今はこの赤原と――って!? え、ええぇ!? な、なんでこいつがここに!?」
そして気が付けば、何故か部屋の中に入り込んでいた隼。その声を聴き、俺とフェリアもようやく落ち着いた。
どうやら、部屋の窓が割れたのは俺とフェリアの乱闘ではなく、隼が飛び込んできたことによるものだったそうだ。
どうして隼がここにいるのかも気になったが、こっちもこっちでとんでもない勘違いをしていたらしい。
なんでも、俺がフェリアと不倫してるとかなんとか。やめてくれ。俺にそっちの気はない。
ただまあ、そんな隼のとんでも勘違いも、俺とフェリアが乱闘していた原因に比べれば些細なことか。
こうやって冷静になると、どうして俺とフェリアはあんな無駄な時間を過ごしてしまったのか――
――そうして、現在に至るというわけだ。
「ああ、理解してる。俺はあんたに感謝してる……!」
「ほ、本当に感謝してるのか? 俺の胸倉を掴みながら言うセリフか?」
『フェリアが隼の裸を見ていた』という事実が、俺の心の中に憎悪を湧き立たせてしまう。
頭では状況を理解してても、この濁った心を抑えられない。今なら、この感情だけでヴィランになれそうだ。
「つうか、そもそもなんであんたはそんなに女装がうまいんだ? 後、どうしてシスターなんて役職までしてる?」
「こ、これはウォリアールの諜報訓練で得た技術だ。医療技術も身に着けてたし、そこに海外要素も合わせれば、教会でシスターをするのが身分も誤魔化せるって……ラルカが言ってた」
「ラルカって、将軍艦隊幹部のラルカか? まあ、そこはどうでもいいな。……俺としては、やはり隼の裸を見たことが許せない。俺だって、まだ見たことないのに……!」
「み、見たことなかったのか!? 結婚まで行ったくせに、どんだけ初心なカップルだよ……!?」
フェリアの気になる点を聞くことで気を紛らわせようとするも、俺の中の憎悪は収まりそうにない。
隼の生まれたままの姿なんて、それこそ幼稚園時代まで遡らないと見た記憶がない。そんなものはノーカンだ。
夫である俺よりも先に嫁の裸を他の男に見られるなんて、これこそまさに屈辱の極み。どれだけ誤魔化そうとしても、自然と目がつり上がってフェリアの胸倉を掴む手にも力が入ってしまう。
――だが、これでは以前おふくろにビンタされた時の二の舞だ。
「……今回だけだ。今回だけは大目に見てやる」
「あ、ありがとよ……。助かったぜ……」
「だが、次はないぞ? もう隼の裸を見て、欲情なんかさせないからな?」
どうにかして呼吸を整え、俺は掴んでいた手を放してフェリアを解放する。
俺としてはショックだったが、なんだかんだでこいつは命の恩人だ。これ以上、激情に駆られるわけにはいかない。
そもそもさっきまでの話の通りにフェリアと洗居さんがウォリアールに向かえば、少なくとも当分は隼の裸をこいつに見られることも――
「まあそもそもの話、俺は空鳥みてえなデカすぎる胸には欲情しねえしな」
「なんだとぉぉおお!? フェリアァァアア!! てめぇぇえええ!!??」
――ないのではあるが、フェリアの余計な一言で俺の堪忍袋の緒が切れた。
隼の胸に欲情しないだと? あのサイズもモデルも完璧なおっぱいを見てもだと?
こいつ、本当に男か? 隼の胸なんて、男なら誰もが夢見る理想郷だろ?
――その疑惑が、俺を一瞬で憤怒の炎に陥れた。
「な、何しやがる!? 欲情する胸だったら、栗阿の胸こそが至高だろうが!? 大きすぎず小さすぎず、それでいて形もいい! 空鳥のデカ乳と一緒にすんなぁぁああ!!」
「言っていいことと悪いことがあるだろ!? 隼の胸はデカいだけじゃない! 形も弾力も……最強で最高だぁぁあ!!」
「当人の裸も見たことねえのに、なんでそんなことを言い切れるんだぁぁあ!?」
「前にその胸で押しつぶされて、ガチで天国に逝きかけたからだよぉぉおお!!」
俺は思わずフェリアの胸倉を掴み直し、自分でも分かるほど鬼気迫る勢いで怒鳴りかかる。
だが、フェリアも今回は違う。同じように俺の胸倉を掴み、あろうことか自身の想い人である洗居さんのおっぱいを題材に出し、反論をけしかけてきた。
「テメェとは分かり合える気がしたのに、どうやらその本性はクソみてえだなぁあ! 赤原ぁああ!! 栗阿のおっぱいこそが至高だと……認めろぉぉおお!!」
「認めてたまるかぁぁああ!! そっちこそ強がってないで、隼のおっぱいが究極だって認めやがれぇ! フェリアァァアア!!」
その後はお互いに取っ組み合いの喧嘩にまで発展し、室内にあった花瓶や窓ガラスまで破壊する始末。
後にして思えば、やり過ぎたとは思う。だが、男には時として譲れない一線がある。
――愛する女のおっぱいを馬鹿にされた。些細に聞こえることでも、それが俺達のような男の劣情に火をつけることにもなる。
たかがおっぱい。されどおっぱい。
――お互いに愛する女のおっぱいを譲らぬために、男と男の勝負が始まってしまった。
「おいこらぁあ! フェリアァアア!! 隼の胸の方が魅力的に決まってんだろぉおお!?」
「ああぁ!? やるってんのかぁ!? 赤原ぁああ!! デカけりゃいいってもんじゃねえだろ!? 栗阿のサイズが丁度いいに決まってんだろがぁああ!?」
「いい加減にしろよ……! 人の嫁の胸を治療の時に見ておいて、その言い草はなんだぁぁああ!? 第一、隼の胸はただデカいってだけじゃない!! 形だって、絶対に隼の方が上だぁぁああ!!」
「舐めてんのかぁぁあ!? そこのバランスも含めて、栗阿の方が上に決まってんだろがぁぁああ!!」
その後も取っ組み合いの喧嘩を続けながら、互いが愛する女のおっぱいの方が上だと主張し合う。
いつの間にか俺もフェリアも上着がはだけ、半裸になるほどの大乱闘。本当に後にして思うと、何をやっていたのかと思わずにはいられない。
「あ、あのー……お二人とも? ちょーっといいかな?」
「だ、誰だ!? ……って、隼!?」
「ああぁ!? 今はこの赤原と――って!? え、ええぇ!? な、なんでこいつがここに!?」
そして気が付けば、何故か部屋の中に入り込んでいた隼。その声を聴き、俺とフェリアもようやく落ち着いた。
どうやら、部屋の窓が割れたのは俺とフェリアの乱闘ではなく、隼が飛び込んできたことによるものだったそうだ。
どうして隼がここにいるのかも気になったが、こっちもこっちでとんでもない勘違いをしていたらしい。
なんでも、俺がフェリアと不倫してるとかなんとか。やめてくれ。俺にそっちの気はない。
ただまあ、そんな隼のとんでも勘違いも、俺とフェリアが乱闘していた原因に比べれば些細なことか。
こうやって冷静になると、どうして俺とフェリアはあんな無駄な時間を過ごしてしまったのか――
――そうして、現在に至るというわけだ。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
基本中の基本
黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。
もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる