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星皇カンパニー編・結

ep220 星皇カンパニー代表取締役社長:星皇 時音

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 両親との感動の再会の余韻に浸る間もなく、アタシは歪んだ空間を滑空しながら再度中央にある装置を目指す。
 装置の近くでは相変わらず星皇社長が我が子を蘇えらせるために、空間中枢から魂の記憶を受信し、人工の肉体へそのデータを注ぎ込んでいる。

 ――だが、同時に危険性の増大も確認できる。
 装置周辺の空間に入った亀裂が広がり、まるで決壊寸前のダムのようになっている。
 もしもあの亀裂からこの空間が崩壊してしまえば、星皇社長の目的どころではない。

 ――ワームホールを起点にして、外の世界までもが時空の乱れという濁流に飲み込まれてしまう。



「星皇社長ぉぉおお!!」
「くっ!? まだ挑んでくるのね……空鳥さん! だけど、何度来ても同じことなのよぉぉおお!!」



 それを止めるためにも、アタシは再び星皇社長へと飛び掛かる。
 もうまともな声も届かず、眼前の願望のみに糸を繋げる蜘蛛のヴィラン。
 その背にどれだけアームという力を備えようとも、どれだけ辛い過去を背負おうとも、アタシが止まるわけにはいかない。

 ――アタシ自身のヒーローとしての信念、外で待つみんなの日常、両親が託してくれた想い。
 それら全てをアタシも背負い、両手のトラクタービームを星皇社長のアームへと接続する。

「どりゃぁあああ!!」


 バギィィインッ!!


「グフッ!? この期に及んで……もう私の邪魔をしないでぇええ!!」


 バギャァアンッ!!


「ングゥ!? ア、アタシだって……退けない理由があんだよぉおお!!」

 そこからトラクタービームを収縮させる勢いで蹴りかかり、後はもう一進一退の殴り合い状態。
 星皇社長も装置から離れて六本のアームでアタシを殴り飛ばしたり、叩きつけたりで完全に血の気が勝っている。
 こちらも負けじとトラクタービームを使ってアームを捌き、接近戦での肉弾勝負を挑む。

「ここであんたの息子が生き返ったって、その後に生きるべき世界がなくなっちゃうかもしれないんだよ!? いい加減……目を醒ましてよぉおお!!」
「そんな後のことよりも、私にとっては坊やの復活が最優先なの! もう本当に……あなたをここで始末して――」
「やってみなよ! 何度もアタシを見逃して! 心のどこかで助けを求めて! それでもアタシを殺せるのならさぁああ!!」
「くっ……ううぅ……!?」

 互いに攻撃を加えたり捌いたりしつつ、アタシは胸の内に溜まりに溜まった言葉を星皇社長へと吐き出す。
 この人の行いは許されるものではない。その行いのせいで甚大な被害が起こっている。
 それでも、アタシはやっぱりこの人を救いたい。アタシが技術者として尊敬したその姿を、もう一度その目で見てみたい。

 ――何より、星皇社長ではアタシを殺すことなどできそうにない。
 この人はやはり、心の奥底で助けを求めようとしている。どこか言いよどむ姿を見ても、アタシにはそう思えて仕方ない。



 ――ヒーローの目的は助けを求める声に応えることだ。
 アタシの勝手な定義に過ぎないが、それでもアタシはこの信念を貫き通す。

 ――それができなきゃ、アタシがアタシを許せない。



「殺せないってんなら……アタシが止めさせてもらうよ! フゥウン!!」
「な、何を!? 小癪な真似をしないで!!」

 星皇社長がわずかに戸惑いを見せた隙を突き、アタシはまず六本のアームの内の二本を踏みつけて固定する。
 すかさず残ったアームの内の二本を襲い掛からせてくるが、これについても対処できる。

「ジェット推進機構、発動!」
「そ、それはジェットアーマーに搭載していたものと同じ!? ほ、本当にパンドラの技術をここまで使いこなして……!? だけど、まだ終わってないわよぉおお!!」

 次に来た二本のアームについては、両手のグローブに仕込んだジェット推進機構で迎撃。大きくのけぞるように弾き飛ばし、その追撃も拒む。
 星皇社長も残った二本のアームでアタシを挟みこもうとしてくるが、もうここまで来れば問題ない。

「トラクタービーム! さあ! これで星皇社長に打つ手はなくなった! まずはその血の気で熱く固まった頭を……冷やしてやんよぉぉおお!!」
「そ、そんな!? まさか……!?」

 最後のアームを両手にトラクタービームで捌きつつ、アタシは踏んでいたアームを蹴って星皇社長本体へと飛び掛かる。
 もう格好なんてどうでもいい。今はただ、この人を止められればそれでいい。



 ――その気持ちだけを抱きながら、アタシは頭から星皇社長の頭へと突っ込む。



 ゴチィィィイインッッ!!


「あがっ……!? ぐうぅ……!?」
「頭突きなんて無粋な真似かもしんないけど、これぐらいしないとあんたは止まってくれなかった……! さあ、もうその野望もおしまいさ……!」

 アタシは星皇社長にロケット頭突きをお見舞いし、その動きを完全に止めた。
 今の星皇社長を止めるには、物理的に思考を停止させることしか思いつかなかった。
 自分でも相当無茶苦茶な止め方なのは百も承知だ。それでも、これで星皇社長が再び立ち上がる力は残っていない。

 ――残るは装置を止めて、このワームホールを元に戻すことだけだ。
 星皇社長の夢を砕くことになろうとも、後でどれだけ罵倒を浴びようとも、アタシがそれを成すしかない。



「フ……フフフ……。私を倒したのは見事だったけれど、少し遅かったみたいね……!」
「……え? 星皇社長? それってどういう意味――」



 そう思って装置の方へ振り向こうとしたら、星皇社長は頭を押さえて倒れたまま、アタシに言葉を投げかけてくる。
 うまく言えないけど、嫌な予感が全身を駆け巡る。『遅かった』ということは、まさか――



「時空間を超えた記憶の受信は、もうすでに自動継続しているわ……! そして、ようやく私の夢が実現する時よ……!」
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