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日常と非日常編
ep185 タケゾー「家族の身に危険が迫ってしまった」
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「あ、あの青い宝石の原石が……爆弾だって!?」
「この場で誰かに危害は加えませんが、この場以外で危害を加えないとは約束しておりませんので」
まるで屁理屈のようにラルカは説明を付け加えると、右手に持っていたスイッチを親指で押し込む。
結婚祝いとしてもらったあの青い宝石の原石が、ラルカの仕掛けた爆弾だって?
それならば、今こうしている間にも、工場に置かれたその爆弾が起爆したってことか?
あそこには先に帰っていた隼やショーちゃんだっているのに?
――急に突き付けられた事実を前にして、俺も頭の中が硬直してしまう。
「自分に構っている暇などあるのでしょうか? ご家族のことが心配ではないのですか? あの爆弾は次元式などではありません。スイッチが押された今、もうとっくに爆発していますよ?」
「くっ……クッソォォォオ!!」
それでもラルカの挑発するような言葉を聞き、次の瞬間には俺もなりふり構わず走り出す。
もう余計なことを考えている暇などない。ラルカにも構わず、俺はとにかく走って我が家である工場を目指す。
――隼とショーちゃん。俺の大事な家族が命の危機にある。
「ハァ、ハァ! あの爆弾の規模はどれぐらいだ!? もう爆発してるみたいだが、せめて隼とショーちゃんだけでも無事でいてくれ……!」
どれだけ息が切れようとも、俺は足を止めはしない。
とにかく今は二人の無事を確認したい。その焦燥感に駆られ、ひたすらに走り続ける。
「ハァ、ハァ! こ、工場の外観は無事か!? でも、中の被害はどうなって……!?」
工場が見えてくると、外からは変わった様子など見えない。だが、それで安心ともいかない。
俺は急いで扉を開け、中の様子を確認するが――
「あれ? タケゾー? どしたのさ? まだ終業時間には早いし、そんなに慌てちゃって?」
「じゅ、隼! ハァ、ハァ……! ショーちゃんも無事か!?」
「……へ? 無事って……何が?」
――そこには特にいつもと変わらない様子の隼が立っていた。
何か異常に出くわした様子もなく、むしろ慌てて帰って来た俺のことを不思議そうに見ている。
――これは一体、何がどうなってるのだ?
「武蔵さん、どうしたの? すごく焦ってる。心配事?」
「もしかして、タケゾーもパンドラの箱が気になっちゃった? それなら大丈夫さ。工場の要塞システムでも確認したけど、誰かが狙ってた様子もないよ」
「い、いや……俺が気になったのは……。そ、そうだ! リビングに置いてあった青い宝石の原石だ!」
「へ? 星皇社長から結婚祝いにもらった置物のこと? あれがどうかしたの?」
思わず面食らってしまったが、これで安心できるわけではない。
俺はリビングに向かい、急いでラルカが爆弾だと言った置物の確認をする。
――だが、それも別に爆発した様子はなく、普段と同じように鎮座していた。
「この置物がどうしたって言うのさ? まあ、星皇社長とあんなことがあった後だと、ちょっと嫌な予感もしちゃうけど……」
「これは爆弾なんだ! 今すぐにでも、どこかに破棄しないと――」
「爆弾? そんな馬鹿な話が――でも、ちょっとアタシにも確認させて」
爆発してないとはいえ、俺の不安はまだ拭えない。
そう思って置物を捨てる場所を考えていると、隼がそれを手に取って観察し始める。
俺の突飛な発言に最初は呆れた顔を見せていたが、置物を調べるその表情は真剣だ。
何やら検知器のようなものも取り出し、入念に調べてくれるが――
「ニトログリセリンにプラスチック爆薬……その他、爆発物反応は爆発物検知器にもなし……。安心して、これは爆弾なんかじゃないよ」
「……え? ば、爆弾じゃない……?」
――その結果を聞いて、俺も思わず肩から力が抜ける。
自分でもかなりマヌケ面を晒していると思うが、隼はさらに置物について説明を加えてくれる。
「電子機器的な送受信機能もなし。これは本当にただの鉱石だね」
「……ってことは、誰かがスイッチを押したらこの置物がドカンなんてことは……?」
「ないない。そもそもこの工場の要塞システムには、認証外の電波信号を遮断するシステムだって組み込んである。仮にこれが本当に遠隔式の爆弾だったとしても、爆発させることなんてできないさ」
「な、なんだ……。そうだったのか……」
そんな隼の説明を聞き終えて、俺も安全を確信することができた。
思わず腰が抜けてしまい、リビングの床に座り込む。
――結局のところ、俺はラルカに一杯食わされたということか。
あのスイッチもただのダミーで、この置物が爆弾だというのもただのハッタリ。
ラルカの目的はああやってハッタリを利かせることで、俺から難なく逃れることにあったというわけだ。
俺の行動を物の見事に読まれ、完全に手玉に取られてしまった。
「急に帰って来たと思ったらこの置物が爆弾だとか言い始めるし、本当に何があったのさ? まあ、星皇社長とは険悪になっちゃったけど、これは流石に素直な結婚祝いでしょ?」
「ああ、そうだろうな……。ただ、俺の方で新たに分かったことがあってな」
「新たに分かったこと? 何が分かったのさ?」
大事に至らずに済んだとはいえ、俺には隼へ伝えるべきことがある。
これまで陰から隼を狙い、裏で様々な工作を仕掛けていたラルカの正体。
――この事実は隼をより困惑させるだろうが、言わないわけにもいかない。
「ラルカって女の正体が分かった。フルネームを『ラルカ・ゼノアーク』……。星皇カンパニー社長秘書のゼノアークさんこそが、牙島とも組んで動いていた張本人だ」
「え……? ゼ、ゼノアークさんが……?」
「この場で誰かに危害は加えませんが、この場以外で危害を加えないとは約束しておりませんので」
まるで屁理屈のようにラルカは説明を付け加えると、右手に持っていたスイッチを親指で押し込む。
結婚祝いとしてもらったあの青い宝石の原石が、ラルカの仕掛けた爆弾だって?
それならば、今こうしている間にも、工場に置かれたその爆弾が起爆したってことか?
あそこには先に帰っていた隼やショーちゃんだっているのに?
――急に突き付けられた事実を前にして、俺も頭の中が硬直してしまう。
「自分に構っている暇などあるのでしょうか? ご家族のことが心配ではないのですか? あの爆弾は次元式などではありません。スイッチが押された今、もうとっくに爆発していますよ?」
「くっ……クッソォォォオ!!」
それでもラルカの挑発するような言葉を聞き、次の瞬間には俺もなりふり構わず走り出す。
もう余計なことを考えている暇などない。ラルカにも構わず、俺はとにかく走って我が家である工場を目指す。
――隼とショーちゃん。俺の大事な家族が命の危機にある。
「ハァ、ハァ! あの爆弾の規模はどれぐらいだ!? もう爆発してるみたいだが、せめて隼とショーちゃんだけでも無事でいてくれ……!」
どれだけ息が切れようとも、俺は足を止めはしない。
とにかく今は二人の無事を確認したい。その焦燥感に駆られ、ひたすらに走り続ける。
「ハァ、ハァ! こ、工場の外観は無事か!? でも、中の被害はどうなって……!?」
工場が見えてくると、外からは変わった様子など見えない。だが、それで安心ともいかない。
俺は急いで扉を開け、中の様子を確認するが――
「あれ? タケゾー? どしたのさ? まだ終業時間には早いし、そんなに慌てちゃって?」
「じゅ、隼! ハァ、ハァ……! ショーちゃんも無事か!?」
「……へ? 無事って……何が?」
――そこには特にいつもと変わらない様子の隼が立っていた。
何か異常に出くわした様子もなく、むしろ慌てて帰って来た俺のことを不思議そうに見ている。
――これは一体、何がどうなってるのだ?
「武蔵さん、どうしたの? すごく焦ってる。心配事?」
「もしかして、タケゾーもパンドラの箱が気になっちゃった? それなら大丈夫さ。工場の要塞システムでも確認したけど、誰かが狙ってた様子もないよ」
「い、いや……俺が気になったのは……。そ、そうだ! リビングに置いてあった青い宝石の原石だ!」
「へ? 星皇社長から結婚祝いにもらった置物のこと? あれがどうかしたの?」
思わず面食らってしまったが、これで安心できるわけではない。
俺はリビングに向かい、急いでラルカが爆弾だと言った置物の確認をする。
――だが、それも別に爆発した様子はなく、普段と同じように鎮座していた。
「この置物がどうしたって言うのさ? まあ、星皇社長とあんなことがあった後だと、ちょっと嫌な予感もしちゃうけど……」
「これは爆弾なんだ! 今すぐにでも、どこかに破棄しないと――」
「爆弾? そんな馬鹿な話が――でも、ちょっとアタシにも確認させて」
爆発してないとはいえ、俺の不安はまだ拭えない。
そう思って置物を捨てる場所を考えていると、隼がそれを手に取って観察し始める。
俺の突飛な発言に最初は呆れた顔を見せていたが、置物を調べるその表情は真剣だ。
何やら検知器のようなものも取り出し、入念に調べてくれるが――
「ニトログリセリンにプラスチック爆薬……その他、爆発物反応は爆発物検知器にもなし……。安心して、これは爆弾なんかじゃないよ」
「……え? ば、爆弾じゃない……?」
――その結果を聞いて、俺も思わず肩から力が抜ける。
自分でもかなりマヌケ面を晒していると思うが、隼はさらに置物について説明を加えてくれる。
「電子機器的な送受信機能もなし。これは本当にただの鉱石だね」
「……ってことは、誰かがスイッチを押したらこの置物がドカンなんてことは……?」
「ないない。そもそもこの工場の要塞システムには、認証外の電波信号を遮断するシステムだって組み込んである。仮にこれが本当に遠隔式の爆弾だったとしても、爆発させることなんてできないさ」
「な、なんだ……。そうだったのか……」
そんな隼の説明を聞き終えて、俺も安全を確信することができた。
思わず腰が抜けてしまい、リビングの床に座り込む。
――結局のところ、俺はラルカに一杯食わされたということか。
あのスイッチもただのダミーで、この置物が爆弾だというのもただのハッタリ。
ラルカの目的はああやってハッタリを利かせることで、俺から難なく逃れることにあったというわけだ。
俺の行動を物の見事に読まれ、完全に手玉に取られてしまった。
「急に帰って来たと思ったらこの置物が爆弾だとか言い始めるし、本当に何があったのさ? まあ、星皇社長とは険悪になっちゃったけど、これは流石に素直な結婚祝いでしょ?」
「ああ、そうだろうな……。ただ、俺の方で新たに分かったことがあってな」
「新たに分かったこと? 何が分かったのさ?」
大事に至らずに済んだとはいえ、俺には隼へ伝えるべきことがある。
これまで陰から隼を狙い、裏で様々な工作を仕掛けていたラルカの正体。
――この事実は隼をより困惑させるだろうが、言わないわけにもいかない。
「ラルカって女の正体が分かった。フルネームを『ラルカ・ゼノアーク』……。星皇カンパニー社長秘書のゼノアークさんこそが、牙島とも組んで動いていた張本人だ」
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