175 / 465
大凍亜連合編・承
ep175 反転する大凍亜獣:ターニングベヒモス
しおりを挟む
「まずは挨拶代わりだ! こいつを受け取りなぁあ!!」
大凍亜連合総帥、氷山地 猛。コードネームをターニングベヒモス。
そいつとの開戦一発目に放つのは、アタシが両手で作り出した電撃魔術玉。
そこまでエネルギーを溜めてはいない。どちらかというと牽制目的の攻撃。
アタシも氷山地の能力を知っているからこそ、この一発目の結末は予想できる。
「小癪な真似やなぁ! 儂にこないなもん、通用せんことを理解でけへんのかぁあ!?」
バシュンッ
その予想通り、氷山地は向かってきた電撃魔術玉に手をかざし、瞬く間にかき消してしまった。
氷山地の能力はエネルギーが持つ熱ベクトルの反転。それすなわち、向かってくるエネルギーの無力化。
電撃魔術玉みたいな電気エネルギーの塊なんて、氷山地にとっては吹きかけられた息と変わらない。
――そんなことはこっちも承知。少しでも気を逸らせればそれでいい。
「ほれ! まだまだアタシの攻撃は終わんないよ! トラクタービーム!」
そうして作ったわずかな隙を突き、アタシはトラクタービームをステージの上部へと放つ。
狙うは照明を設置するための鉄骨。それをトラクタービームで引っ張り、氷山地の頭上目がけて落としにかかる。
「質量が伴っとれば、儂を圧し潰せるとでも思うたか? それは温い考えっちゅうもんじゃぁああ!!」
バシュゥウン!
「チィ!? 落下の運動エネルギーまでかき消すのかい!?」
だが、これも氷山地に防がれてしまう。
落下してきた鉄骨を両手で支えるように構え、その衝撃さえも食い止めてしまう。
本当にまともな攻撃が通らない。熱を反転し、あらゆるエネルギーを無力化する能力がここまで厄介だったとは。
「こないなもんか? こんぐらいやったら、儂にもできる話やぞぉお!!」
「うぐぅ!? このパワーは!?」
さらに氷山地は食い止めた鉄骨を、アタシの方へと振り回してくる。
純粋にパワーが凄いのか、体内に内蔵したナノマシンの影響なのか。襲い来る鉄骨に対し、アタシも食い止めるので製一杯だ。
――それどころか、触れた鉄骨がどんどん冷たくなり、アタシの体温をも奪い始める。
「間接的にでも、儂に触れたのがマズかったのぅ。どないに超パワーを持った空色の魔女でも、そのパワーを発揮できなきゃタダの小娘や」
「の、能力を伝搬させることもできるとはね……! だ、だったら……もう一発!!」
どうにも、氷山地の能力はアタシの予想の上を行っている。
お互いに鉄骨を抱えた状態での押し相撲。この状況は圧倒的にアタシの不利だ。
氷山地は鉄骨越しにアタシの体温を反転させてくるようだが、直接触っていない分だけその効果はまだ弱い。
その間に形勢を逆転させるためにも、アタシはトラクタービームでさらにもう一本の鉄骨を氷山地の頭上へと落す。
ガララァア! ――バシュゥウン!!
「無駄や! 数を増やしたところで、儂の能力の前では全部が無意味! むしろこれで……おどれを挟み撃ちできるわぁあ!!」
「あっぐうぅ!?」
だが、もう一本の鉄骨も氷山地に決まることはなかった。
それどころか氷山地は二本となった鉄骨を両脇で抱え、先端にいるアタシを挟み込んで圧し潰そうとしてくる。
こっちは氷山地の能力で体温はどんどん奪われていくし、完全にジリ貧状態。
アタシも徐々にその力に負けて、体中の骨が軋み始める。
「正義のヒーローつっても、所詮は世間知らずのガキに過ぎへん! こんまま鉄骨に挟み込まれて、後悔しながら死んでまえやぁあ!!」
「んぐ……つ、冷たい……! 潰れる……!」
氷山地も勝ちを確信したように、鉄骨に能力をかけながら、アタシをそのまま挟み込んでくる。
こちらの体感からすると、ペンチで挟まれたような気分だ。鉄骨ももう極低温まで冷え切り、アタシの体もどんどん熱を失っていく。
アタシはこのまま、冷たい金属に挟まれて死ぬしかないのかね――
――ただ、これで最後のチャンスは訪れた。
「……ねえ、あんた。超電導磁石って……知ってるかい?」
「あぁ? この期に及んで、何をほざきおるんや?」
「リニアモーターカーとかは聞いたことあるでしょ? あれに使われてる原理さ。極低温まで冷やした金属に電気を流すことで、超強力な磁力を持った磁石を作り出す。それによって発生した磁界により、物質を一気に加速させて発射させる……って、こっちはリニアレールガンの話かね?」
「さっきから何をわけ分からんことをほざいとるんや? 体が冷えすぎて、頭に血ぃも回らんようになったか?」
二本の鉄骨を両脇で抱える氷山地に対し、アタシはこれからやることを軽く口にしてみる。
まあ、理解してもらおうとは思っていない。こっちだって、氷山地が少し考えている間に反撃の準備をしたいだけだ。
――体内の生体コイルをフル稼働。同時に体内へと溜まった電力はまだ解き放たず、コンデンサのように蓄える。
勝負は一瞬。体内の電力を一気に放出して、まずやることは――
バチバチバチィィィイ!!
「鉄骨に放電やと!? せやけど、それが無意味なこと――」
「これはただの第一段階さ! 今この鉄骨はアタシの電力により、リニアレールガンと同じ発射台へと変化した! そして――」
――アタシを挟み、反対方向に氷山地がいるこの鉄骨のレールに大量の電気を流し、超電導磁石へと変える。
無論、これだけで終わるはずがない。このレールガン発射台と化した鉄骨も、氷山地の能力ですぐに効果が解けてしまう。
だから、アタシもすぐさまこの即席レールガンの弾丸を用意する――
「このアタシ自身が……このレールガンの弾丸だぁああ!!」
「なっ……!?」
――その弾丸とは、他でもないこのアタシ自身。
レールガンと化した鉄骨の間で支えていた両手を放し、そのまま身にかかる勢いに任せて前へと進む。
氷山地は熱ベクトルを反転させるが、その能力は両手でしか使えない。
その両手を塞ぎ、能力で冷え切った鉄骨をレールガンへと変え、先端に氷山地を捉える。
――これこそがアタシの用意した、氷山地を倒すための切り札だ。
「氷山地ぃぃぃいい!!」
「く、来るな! クソッ! その勢いだって、儂の能力で――」
氷山地も鉄骨から手を放し、アタシを迎え撃とうとする。だが、その判断はもう遅い。
レールガンの弾丸そのものとなったアタシのスピードなんて、発射された時点で反応できるものじゃない――
「どりゃぁあああ!!」
ボゴォォォオオンッ!!
「バグアァ……!?」
――その勢いから放たれたアタシの拳は、氷山地の懐に完全に決まった。
鉄骨から両手を放したことがかえって災いしたのか、氷山地はその勢いを殺しきれず、大きく後方へ吹き飛んでいく。
「……ワームホールを作ってるその装置も、あんた自身の身で責任を持って止めちまいな」
「ク……クソがぁあああ!!??」
そして氷山地が吹き飛んだ方角にあるのは、ワームホールを生成していたメビウスの輪。
あれさえ壊せば、このワームホールも納まる。歪んだ時空も元に戻る。
――その引導は、引き金を引いた氷山地自身にやってもらおう。
ドギュアァァアア!!
「わ、儂の野望が……。過去の……改変が……」
大凍亜連合総帥、氷山地 猛。コードネームをターニングベヒモス。
そいつとの開戦一発目に放つのは、アタシが両手で作り出した電撃魔術玉。
そこまでエネルギーを溜めてはいない。どちらかというと牽制目的の攻撃。
アタシも氷山地の能力を知っているからこそ、この一発目の結末は予想できる。
「小癪な真似やなぁ! 儂にこないなもん、通用せんことを理解でけへんのかぁあ!?」
バシュンッ
その予想通り、氷山地は向かってきた電撃魔術玉に手をかざし、瞬く間にかき消してしまった。
氷山地の能力はエネルギーが持つ熱ベクトルの反転。それすなわち、向かってくるエネルギーの無力化。
電撃魔術玉みたいな電気エネルギーの塊なんて、氷山地にとっては吹きかけられた息と変わらない。
――そんなことはこっちも承知。少しでも気を逸らせればそれでいい。
「ほれ! まだまだアタシの攻撃は終わんないよ! トラクタービーム!」
そうして作ったわずかな隙を突き、アタシはトラクタービームをステージの上部へと放つ。
狙うは照明を設置するための鉄骨。それをトラクタービームで引っ張り、氷山地の頭上目がけて落としにかかる。
「質量が伴っとれば、儂を圧し潰せるとでも思うたか? それは温い考えっちゅうもんじゃぁああ!!」
バシュゥウン!
「チィ!? 落下の運動エネルギーまでかき消すのかい!?」
だが、これも氷山地に防がれてしまう。
落下してきた鉄骨を両手で支えるように構え、その衝撃さえも食い止めてしまう。
本当にまともな攻撃が通らない。熱を反転し、あらゆるエネルギーを無力化する能力がここまで厄介だったとは。
「こないなもんか? こんぐらいやったら、儂にもできる話やぞぉお!!」
「うぐぅ!? このパワーは!?」
さらに氷山地は食い止めた鉄骨を、アタシの方へと振り回してくる。
純粋にパワーが凄いのか、体内に内蔵したナノマシンの影響なのか。襲い来る鉄骨に対し、アタシも食い止めるので製一杯だ。
――それどころか、触れた鉄骨がどんどん冷たくなり、アタシの体温をも奪い始める。
「間接的にでも、儂に触れたのがマズかったのぅ。どないに超パワーを持った空色の魔女でも、そのパワーを発揮できなきゃタダの小娘や」
「の、能力を伝搬させることもできるとはね……! だ、だったら……もう一発!!」
どうにも、氷山地の能力はアタシの予想の上を行っている。
お互いに鉄骨を抱えた状態での押し相撲。この状況は圧倒的にアタシの不利だ。
氷山地は鉄骨越しにアタシの体温を反転させてくるようだが、直接触っていない分だけその効果はまだ弱い。
その間に形勢を逆転させるためにも、アタシはトラクタービームでさらにもう一本の鉄骨を氷山地の頭上へと落す。
ガララァア! ――バシュゥウン!!
「無駄や! 数を増やしたところで、儂の能力の前では全部が無意味! むしろこれで……おどれを挟み撃ちできるわぁあ!!」
「あっぐうぅ!?」
だが、もう一本の鉄骨も氷山地に決まることはなかった。
それどころか氷山地は二本となった鉄骨を両脇で抱え、先端にいるアタシを挟み込んで圧し潰そうとしてくる。
こっちは氷山地の能力で体温はどんどん奪われていくし、完全にジリ貧状態。
アタシも徐々にその力に負けて、体中の骨が軋み始める。
「正義のヒーローつっても、所詮は世間知らずのガキに過ぎへん! こんまま鉄骨に挟み込まれて、後悔しながら死んでまえやぁあ!!」
「んぐ……つ、冷たい……! 潰れる……!」
氷山地も勝ちを確信したように、鉄骨に能力をかけながら、アタシをそのまま挟み込んでくる。
こちらの体感からすると、ペンチで挟まれたような気分だ。鉄骨ももう極低温まで冷え切り、アタシの体もどんどん熱を失っていく。
アタシはこのまま、冷たい金属に挟まれて死ぬしかないのかね――
――ただ、これで最後のチャンスは訪れた。
「……ねえ、あんた。超電導磁石って……知ってるかい?」
「あぁ? この期に及んで、何をほざきおるんや?」
「リニアモーターカーとかは聞いたことあるでしょ? あれに使われてる原理さ。極低温まで冷やした金属に電気を流すことで、超強力な磁力を持った磁石を作り出す。それによって発生した磁界により、物質を一気に加速させて発射させる……って、こっちはリニアレールガンの話かね?」
「さっきから何をわけ分からんことをほざいとるんや? 体が冷えすぎて、頭に血ぃも回らんようになったか?」
二本の鉄骨を両脇で抱える氷山地に対し、アタシはこれからやることを軽く口にしてみる。
まあ、理解してもらおうとは思っていない。こっちだって、氷山地が少し考えている間に反撃の準備をしたいだけだ。
――体内の生体コイルをフル稼働。同時に体内へと溜まった電力はまだ解き放たず、コンデンサのように蓄える。
勝負は一瞬。体内の電力を一気に放出して、まずやることは――
バチバチバチィィィイ!!
「鉄骨に放電やと!? せやけど、それが無意味なこと――」
「これはただの第一段階さ! 今この鉄骨はアタシの電力により、リニアレールガンと同じ発射台へと変化した! そして――」
――アタシを挟み、反対方向に氷山地がいるこの鉄骨のレールに大量の電気を流し、超電導磁石へと変える。
無論、これだけで終わるはずがない。このレールガン発射台と化した鉄骨も、氷山地の能力ですぐに効果が解けてしまう。
だから、アタシもすぐさまこの即席レールガンの弾丸を用意する――
「このアタシ自身が……このレールガンの弾丸だぁああ!!」
「なっ……!?」
――その弾丸とは、他でもないこのアタシ自身。
レールガンと化した鉄骨の間で支えていた両手を放し、そのまま身にかかる勢いに任せて前へと進む。
氷山地は熱ベクトルを反転させるが、その能力は両手でしか使えない。
その両手を塞ぎ、能力で冷え切った鉄骨をレールガンへと変え、先端に氷山地を捉える。
――これこそがアタシの用意した、氷山地を倒すための切り札だ。
「氷山地ぃぃぃいい!!」
「く、来るな! クソッ! その勢いだって、儂の能力で――」
氷山地も鉄骨から手を放し、アタシを迎え撃とうとする。だが、その判断はもう遅い。
レールガンの弾丸そのものとなったアタシのスピードなんて、発射された時点で反応できるものじゃない――
「どりゃぁあああ!!」
ボゴォォォオオンッ!!
「バグアァ……!?」
――その勢いから放たれたアタシの拳は、氷山地の懐に完全に決まった。
鉄骨から両手を放したことがかえって災いしたのか、氷山地はその勢いを殺しきれず、大きく後方へ吹き飛んでいく。
「……ワームホールを作ってるその装置も、あんた自身の身で責任を持って止めちまいな」
「ク……クソがぁあああ!!??」
そして氷山地が吹き飛んだ方角にあるのは、ワームホールを生成していたメビウスの輪。
あれさえ壊せば、このワームホールも納まる。歪んだ時空も元に戻る。
――その引導は、引き金を引いた氷山地自身にやってもらおう。
ドギュアァァアア!!
「わ、儂の野望が……。過去の……改変が……」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
魔法使いアルル
かのん
児童書・童話
今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。
これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。
だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。
孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。
ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。
魂を彩る世界で
Riwo氏
SF
非日常を欲している男子高校生・颯士と、ひょんなことからイメージしたものを作り出す能力を得た女子高生・灯里の二人が織り成す日常系異能力ファンタジー。
想像力で産み出される力で悪い組織を壊滅させたり、正義の味方をしてみたり、ギャグあり、バトルあり、シリアスありの王道もの!
是非ご覧ください!!!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる