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大凍亜連合編・承
ep169 イベントの裏を探ってみよう!
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「え……? ゼノアークさんがそんなことを……? な、なんで?」
「理由は私にも~、分かりませんね~……。ただ~、何か嫌な予感はしちゃいますよね~……」
フェリアさんがゼノアークさんから聞かされたのは『早急にこの場を離れて欲しい』という都度の警告。
これが何を意味するのかは、フェリアさん自身も聞かされていない。だけども、フェリアさんの護衛をしているゼノアークさんの発言となれば、嫌な信憑性がある。
「……なあ、隼。俺も少し聞いてたんだが、やっぱり裏で大凍亜連合が動いてるとか? ゼノアークさんなら星皇社長の秘書だし、そういう情報網は持っていてもおかしくはないからな」
「タケゾーもそう思う? これはもしかすると、アタシもイベントで浮かれてる場合じゃないのかもねぇ……」
せっかくの楽しい雰囲気だったけど、こうも不穏なものを感じ取ってしまうとそちらが優先か。
確証はないけど、大凍亜連合は今回のイベント設営にも携わっていた。そう考えると、やはり裏で何か動きがあったものと勘繰ってしまう。
本当はそうならないことを望んでいたんだけど、その可能性が見えた以上はアタシも動かざるを得ない。
「洗居さん、フェリアさん、タケゾー。決勝戦前に申し訳ないけど、会場で何かおかしな動きがあったら、みんなをここから逃がしてもらえる?」
「残念ではありますが、私もここは空鳥さんの言葉を優先いたしましょう。身の安全には代えられません」
「私も栗阿さん達と一緒に~、様子を伺ってみますね~……」
「隼はどうする? やっぱりここは、空色の魔女の出番だろう?」
今はまだゼノアークさんの警告というだけで、会場にも異変があるわけではない。
周知して下手な混乱を起こしたくもないし、未然に防げるならばそれに越したことはない。
ベストメイディストショーの決勝戦だって、みんなには楽しんで欲しいからね。
「アタシはショーちゃんと一緒に、ちょいとこのドーム球場内を探ってみるよ」
「ボク、隼さんと一緒。頑張る」
会場の警戒は決勝戦トリオに任せて、アタシはショーちゃんと二人で調査をしてみよう。
裏で何かが行われている気配はあれど、それが何かを理解しないことには次の判断もできない。
――大丈夫だ。ショーちゃんの力は信用できる。
こうして理解してくれる仲間だっているんだし、一人で背負い込まずに肩の力を抜いて動けばいい話だ。
「そいじゃ、そっちのことは頼んだよ!」
「ああ。隼とショーちゃんも気を付けろよ!」
「モチのロンってもんよ!」
タケゾーの声援も素直に受け取ることができ、アタシはショーちゃんを連れてひとまずはグラウンドから離れる。
ベストとしては、何かが起こる前に未然に防ぎ、このまま無事にイベントが継続すること。
アタシなりのヒーロー像として、抑えられる被害は抑えたい。
■
「とは言ったものの、どこからどう調べたもんか……?」
「怪しい人いれば、分かりやすい。でも、怪しい人、見当たらない」
アタシとショーちゃんはそれぞれ変身を終えると、ドーム球場内の様々な場所を調べて回る。
スタッフ以外立入禁止エリアにも入ってみるが、今のところは特別おかしなことは起こっていない。
こちらもスタッフに見つかるわけにはいかないし、事情を聴くということもできない。
しらみつぶしに調べるしかないとはいえ、これは中々骨が折れる。
「ショーちゃんが言うように、怪しい人がいてくれれば一発なんだけどねぇ」
「怪しい人って、どんな人なんだろ?」
「そうさねぇ……。牙島みたいな怪しさマックスの怪物がいればいいんだけど、そうも都合よく――ん?」
少しゲンナリしながら物陰に隠れて通路の先へ進んでいくと、曲がり角の向こうから人の気配がしてくる。
まさか、またしてもお約束という奴かね? 本当に牙島がこの先にいるとか?
なんともおあつらえ向きだが、本当にそうだとしたら好都合だ。
牙島の後を追うことができれば、ゼノアークさんの警告の正体も――
「こ、困りますよ! まだベストメイディストショーの決勝戦は終わってないのですよ!?」
「んなもん、儂らも知ったこっちゃないわ。イベントの設営に使うた機材もあるし、このドームをどない使うかなんて、儂らにも権限があるやろ?」
「そ、そんな無茶苦茶な……!?」
「あ、あいつは……大凍亜連合の総帥……!?」
――そんな期待を胸に抱いてコッソリ覗いてみると、そこに牙島はいなかった。
牙島こそいなかったが、もっと大物を見つけてしまった。
――大凍亜連合総帥、氷山地 猛。
まさか、トップ自らがお出ましとはね。
これはいよいよもって、何かヤバい匂いがプンプンと漂ってくる。
「ゴチャゴチャぬかさんと、さっさと道を開けんかい!」
「ぐふぅ!? そ、そんな……困ります……!」
そんな氷山地は部下を引き連れ、イベントの責任者と思われる人物を跳ねのけながら、強引にスタッフルームらしき部屋へと入っていく。
もうこれはただ事じゃないのだけは確定だ。アタシもコソコソしていられない。
「ねえ、大丈夫!? 一体、さっきの奴らは何をしようとしてるのさ!?」
「あなたは……空色の魔女!? ちょ、丁度良かった! さっきの人達は今回のベストメイディストショーのイベント設営会社なのですが、どうやらあまりよろしくない連中だったらしくて……」
「そこの話はアタシも理解してるさ。それより、連中の目的は分かんないかな?」
氷山地達が部屋に入っていなくなったのを見測ると、アタシとショーちゃんは跳ねのけられた責任者さんに近寄って介抱する。
大凍亜連合はここで何かをするつもりだ。ただイベント設営として関わっていただけではない。
それを知るためにも、まずは責任者さんから話を聞かないといけない。
「こちらも分かりかねますが、この部屋はドームの地下設備にも繋がっています。もしかすると、設営の際に何かイベントとは無関係なものを設置して……?」
「それが本当だとしたら、アタシも黙って見過ごせないね。後はこっちに任せて、あんたは――」
「そ、空色の魔女さん! う、後ろ……!」
詳細な状況は分からなかったが、何かヤバい事態が起こる気配はビンビンだ。責任者さんにはひとまずここから離れてもらい、アタシとショーちゃんでこの奥を調べるのが一番だ。
そう思って声をかけたのだが、責任者さんはアタシの後ろを指差しながら、声を震わせ何かに怯え始める。
アタシの背後に誰かいるようだけど――
「ほぉう? よもや空色の魔女までここにおったとはなぁ。ここでワイが相手しとかんと、総帥の計画もおじゃんになってまうかいな?」
「あんたは……牙島!? またあんたかい!?」
「理由は私にも~、分かりませんね~……。ただ~、何か嫌な予感はしちゃいますよね~……」
フェリアさんがゼノアークさんから聞かされたのは『早急にこの場を離れて欲しい』という都度の警告。
これが何を意味するのかは、フェリアさん自身も聞かされていない。だけども、フェリアさんの護衛をしているゼノアークさんの発言となれば、嫌な信憑性がある。
「……なあ、隼。俺も少し聞いてたんだが、やっぱり裏で大凍亜連合が動いてるとか? ゼノアークさんなら星皇社長の秘書だし、そういう情報網は持っていてもおかしくはないからな」
「タケゾーもそう思う? これはもしかすると、アタシもイベントで浮かれてる場合じゃないのかもねぇ……」
せっかくの楽しい雰囲気だったけど、こうも不穏なものを感じ取ってしまうとそちらが優先か。
確証はないけど、大凍亜連合は今回のイベント設営にも携わっていた。そう考えると、やはり裏で何か動きがあったものと勘繰ってしまう。
本当はそうならないことを望んでいたんだけど、その可能性が見えた以上はアタシも動かざるを得ない。
「洗居さん、フェリアさん、タケゾー。決勝戦前に申し訳ないけど、会場で何かおかしな動きがあったら、みんなをここから逃がしてもらえる?」
「残念ではありますが、私もここは空鳥さんの言葉を優先いたしましょう。身の安全には代えられません」
「私も栗阿さん達と一緒に~、様子を伺ってみますね~……」
「隼はどうする? やっぱりここは、空色の魔女の出番だろう?」
今はまだゼノアークさんの警告というだけで、会場にも異変があるわけではない。
周知して下手な混乱を起こしたくもないし、未然に防げるならばそれに越したことはない。
ベストメイディストショーの決勝戦だって、みんなには楽しんで欲しいからね。
「アタシはショーちゃんと一緒に、ちょいとこのドーム球場内を探ってみるよ」
「ボク、隼さんと一緒。頑張る」
会場の警戒は決勝戦トリオに任せて、アタシはショーちゃんと二人で調査をしてみよう。
裏で何かが行われている気配はあれど、それが何かを理解しないことには次の判断もできない。
――大丈夫だ。ショーちゃんの力は信用できる。
こうして理解してくれる仲間だっているんだし、一人で背負い込まずに肩の力を抜いて動けばいい話だ。
「そいじゃ、そっちのことは頼んだよ!」
「ああ。隼とショーちゃんも気を付けろよ!」
「モチのロンってもんよ!」
タケゾーの声援も素直に受け取ることができ、アタシはショーちゃんを連れてひとまずはグラウンドから離れる。
ベストとしては、何かが起こる前に未然に防ぎ、このまま無事にイベントが継続すること。
アタシなりのヒーロー像として、抑えられる被害は抑えたい。
■
「とは言ったものの、どこからどう調べたもんか……?」
「怪しい人いれば、分かりやすい。でも、怪しい人、見当たらない」
アタシとショーちゃんはそれぞれ変身を終えると、ドーム球場内の様々な場所を調べて回る。
スタッフ以外立入禁止エリアにも入ってみるが、今のところは特別おかしなことは起こっていない。
こちらもスタッフに見つかるわけにはいかないし、事情を聴くということもできない。
しらみつぶしに調べるしかないとはいえ、これは中々骨が折れる。
「ショーちゃんが言うように、怪しい人がいてくれれば一発なんだけどねぇ」
「怪しい人って、どんな人なんだろ?」
「そうさねぇ……。牙島みたいな怪しさマックスの怪物がいればいいんだけど、そうも都合よく――ん?」
少しゲンナリしながら物陰に隠れて通路の先へ進んでいくと、曲がり角の向こうから人の気配がしてくる。
まさか、またしてもお約束という奴かね? 本当に牙島がこの先にいるとか?
なんともおあつらえ向きだが、本当にそうだとしたら好都合だ。
牙島の後を追うことができれば、ゼノアークさんの警告の正体も――
「こ、困りますよ! まだベストメイディストショーの決勝戦は終わってないのですよ!?」
「んなもん、儂らも知ったこっちゃないわ。イベントの設営に使うた機材もあるし、このドームをどない使うかなんて、儂らにも権限があるやろ?」
「そ、そんな無茶苦茶な……!?」
「あ、あいつは……大凍亜連合の総帥……!?」
――そんな期待を胸に抱いてコッソリ覗いてみると、そこに牙島はいなかった。
牙島こそいなかったが、もっと大物を見つけてしまった。
――大凍亜連合総帥、氷山地 猛。
まさか、トップ自らがお出ましとはね。
これはいよいよもって、何かヤバい匂いがプンプンと漂ってくる。
「ゴチャゴチャぬかさんと、さっさと道を開けんかい!」
「ぐふぅ!? そ、そんな……困ります……!」
そんな氷山地は部下を引き連れ、イベントの責任者と思われる人物を跳ねのけながら、強引にスタッフルームらしき部屋へと入っていく。
もうこれはただ事じゃないのだけは確定だ。アタシもコソコソしていられない。
「ねえ、大丈夫!? 一体、さっきの奴らは何をしようとしてるのさ!?」
「あなたは……空色の魔女!? ちょ、丁度良かった! さっきの人達は今回のベストメイディストショーのイベント設営会社なのですが、どうやらあまりよろしくない連中だったらしくて……」
「そこの話はアタシも理解してるさ。それより、連中の目的は分かんないかな?」
氷山地達が部屋に入っていなくなったのを見測ると、アタシとショーちゃんは跳ねのけられた責任者さんに近寄って介抱する。
大凍亜連合はここで何かをするつもりだ。ただイベント設営として関わっていただけではない。
それを知るためにも、まずは責任者さんから話を聞かないといけない。
「こちらも分かりかねますが、この部屋はドームの地下設備にも繋がっています。もしかすると、設営の際に何かイベントとは無関係なものを設置して……?」
「それが本当だとしたら、アタシも黙って見過ごせないね。後はこっちに任せて、あんたは――」
「そ、空色の魔女さん! う、後ろ……!」
詳細な状況は分からなかったが、何かヤバい事態が起こる気配はビンビンだ。責任者さんにはひとまずここから離れてもらい、アタシとショーちゃんでこの奥を調べるのが一番だ。
そう思って声をかけたのだが、責任者さんはアタシの後ろを指差しながら、声を震わせ何かに怯え始める。
アタシの背後に誰かいるようだけど――
「ほぉう? よもや空色の魔女までここにおったとはなぁ。ここでワイが相手しとかんと、総帥の計画もおじゃんになってまうかいな?」
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