空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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大凍亜連合編・承

ep167 メイドの祭典に参加しよう!

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 洗居さんに招待された翌日。アタシ達は家族で再びドーム球場までやって来た。
 ただ、今回は昨日と違って正面から一般人として堂々と入場だ。ここで行われるイベントに参加することが目的である。

 ――ベストメイディストショー。
 メイドコスプレの一大イベントらしいが、まさかこんな催しがあるなんてね。世間は広いもんだ。

「おーおー! このメイド服、洗居さんとお揃いじゃん!」
「ボクも着てみた。似合ってる?」
「ええ。お二人とも、大変お似合いですよ」

 そうして会場に入ると、洗居さんに衣装部屋へと案内される。
 そこで早速メイド服へと着替えさせてもらうアタシとショーちゃん。洗居さんにも見てもらったが、中々好印象な評価をいただく。

 アタシが着たのはロングスカートタイプのメイド服。洗居さんと同じデザインのものだ。
 くるりと鏡の前で一回転してみるが、自分でも結構いい線行ってると思う。
 ロングスカートなのも助かる。アタシって、あんまり人に脚とか見られたくないのよね。やっぱ、火傷跡がコンプレックスでさ。

 ショーちゃんもアタシや洗居さんと同じメイド服の子供サイズで、これまたなんとも可愛らしい。
 これが『こんな可愛い子が女の子なはずがない』現象というものか。実際にその光景を見るとよく分かる。
 ショーちゃん自身も気に入っており、どこかウキウキとしている。



「ショーちゃんもだけど、タケゾーもよく似合ってるよ」
「くっ……殺せ……」



 後、タケゾーにもメイド服を着てもらった。
 ただこちらはショーちゃんと違い、部屋の隅で物凄く気分が沈んでいる。
 なんだかメイドというよりは女騎士なセリフまで吐き、完全に意気消沈中だ。

「なんで俺まで、メイド服を着なくちゃいけないんだ……」
「いや、だってさ、タケゾーだけ不参加ってのもかわいそうじゃん? メイド服も本当に似合ってるしさ」
「本当にそう思ったのか? また俺で遊んでるだけじゃないのか?」
「…………」
「返事をしてくれ! 無言が辛い!」

 タケゾーには色々と言われてしまうが、思わず返す言葉に困ってしまう。
 でもまあ、マジでタケゾーもクオリティ高いんだよね。
 元々が全体的にスラッとした体型ということもあって、この中で唯一ミニスカメイド服でも凄くマッチしてる。脚線美、メッチャ凄いじゃん。
 髪型も普段の後ろで結ってる長髪をほどいてセミロング風になって、これまたショーちゃんとは違う男性らしくない可愛らしさがある。
 ヤバい。自分の旦那に萌える。

 ――またタケゾーで遊んでるかどうかについて?
 さて、それはどちらでしょうか?

「ご安心ください。タケゾーさんも非常にレベルの高いメイドに仕上がっています。ここまでミニスカメイドが似合う人は、女性でもそうそういません。長年メイド研究をしている私でも、ここまでのレベルは無理でしょう」
「洗居さんも褒めてくれてるんだろうけど、男としての自尊心を失いそう……」
「そうは言いつつも、律儀にメイド服を着てくれるタケゾーの真心にアタシは泣きそう」
「そうか……。俺は今ちょっと後悔で泣きそうだけど、もうここまで来たら破れかぶれだよ……」

 なんだかんだとありながらも、アタシ達は一家揃ってこのベストメイディストショーへと参加する運びとなった。
 洗居さんも含めて、四人揃ってメイド服で会場となるグラウンドへと向かう。





「うおぉ……! 本当にメイドさんがいっぱいだ……!」
「今回も出場者のレベルは高そうですね。空鳥さん一家もいることですし、激戦は必至でしょう」

 そうして会場にやって来ると、見渡す限りのメイドさん軍団とカメラを持ったギャラリー集団。
 その種類も多種多様。意外なことに、男性のメイドさんも多く見える。
 この中から、一番のメイドさんを選ぶということか。

 ――どうやって選ぶのか気になるけど、あんまり深く考えても仕方ないや。

「見てみなよ、タケゾー。男性のメイドさんだって、たくさんいるじゃんか」
「あの筋肉モリモリマッチョマン達のことか? あそこまで来たら、一周回ってネタとしておいしい路線だろ……」
「大丈夫。武蔵さんも可愛い」
「ショーちゃん? それって、慰めてくれてるんだよね?」

 アタシ達一家は会場の熱気に押されながらも、歩いて中を見回っていく。
 普段から触れたことのない世界ではあるが、参加者が様々な形で楽しそうにしているこの空気は好きだ。
 思えば、アタシも最近はずっと大凍亜連合との戦いに身を投じていて、こういう楽しむ空気から遠ざかりっぱなしだったからね。

「栗阿さん~。皆さんも揃って~、準備万端ですね~」
「あっ、フェリアさん! フェリアさんもメイド服だ!」
「私も今回は~、ベストメイディストショーに合わせてみました~」

 さらにはアタシ達のもとに、フェリアさんもやって来る。
 いつもの修道服ではなく、こちらもロングスカートメイド服だ。これもまたよく似合っている。
 タケゾーはフェリアさんこそがフェイクフォックスの正体だと睨んでたけど、この姿を見るとなんとも失礼な話なものだ。
 こんなほんわかした女性メイドさんが、男性ダークヒーローなはずがない。

「フェリアさんも今日は本格的ですね。これは私も、超一流の清掃用務員という看板を背に頑張るしかありませんね」
「超一流の清掃用務員であることが~、どう関係あるのかは分かりませんけど~、私も今日は負けませんよ~」

 洗居さんもフェリアさんの姿を見て、賞賛と同時に強い信念のようなものを現している。
 そして二人揃っていい笑顔をしながら、固く握手を交わす。その姿、まさに強敵ともの姿。
 アタシも思わず気圧されてしまう。

「お、おい! あれ見ろよ! 洗居様とシスターフェリアじゃないか!? くっ! 後光が眩しすぎる……!」
「傍にいる巨乳メイドと小学生メイドについても、非常にレベルが高いですね。僕の計算によれば、今回のベストメイディストショーは激戦必至でしょう」

 さらには二人の姿を見て、周囲のギャラリーも何やら盛り上がりを見せている。
 やっぱり洗居さんとフェリアさんって、こっちの業界だと有名人みたいだね。
 一緒にいるアタシとショーちゃんにも注目が集まるし、未知の体験になんだかゾクゾクする。

「……タケゾーもなんだかんだで付き合ってくれてありがとね。結果とか関係なく、アタシも楽しめて――って、あれ? タケゾーはどこ行ったの?」

 こんな未知の体験を味わうと、この中では唯一流れに身を任せているタケゾーに感謝の一つも述べたくなる。
 アタシも本当は分かってる。タケゾーに関しては、完全に巻き込まれた側だってことぐらいさ。

 そう思って振り向いてみたのだが、肝心のタケゾーの方が見当たらない。
 まさか、恥ずかしさのあまり逃げ出したのかと思ったけど――



「うわーん! ママー!」
「ほら、お嬢ちゃん。大丈夫だから泣き止みなって。すみません! この子のお母さんはいらっしゃいませんか!?」



 ――少し離れたところで迷子の女の子をあやしていた。
 流石はタケゾーだ。こんな時でも保育士としての心構えは忘れていない。
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