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大凍亜連合編・起
ep122 男か女かハッキリさせよう!
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「え? 性別が分からないのか?」
「オトコ、オンナ? 性別って、何かの分け方?」
何ということだ。アタシが保護したこの子、驚くことに自分の性別さえも分かってない。
これは教育ができてないとか、ただの記憶喪失とかってレベルではない。タケゾーも料理の手を止めて、こちらの話に割り込んでくる。
「うーん……ちょっと困ったもんだね。名前とかは別として、性別ぐらいはハッキリさせておいた方がいいよね。タケゾーはこの子の性別って分かる?」
「お、俺に聞くなよ。本人が性別が何かも分かってないのに、俺にどうやって判断しろと?」
「いや、保育士だからそういうのにも詳しいと思って」
「見た目だけでの判断なんて、俺でも無理だっての……」
まだまだ先の話もしたいのに、この子の性別が分からないままってのはモヤモヤする。
タケゾーも幼い頃によく女の子に間違われて――あっ、今もたまにあるか。とにかく、そういう経験や保育士としてのスキルで分かると思ったのに、これはとんだ期待外れだ。
これを早急に解明しないことには、アタシも次の話に移れない。
「……よし。脱がそう」
「サラッと言うな。サラッと」
こうなったら最終手段。股間にアレがあるかないかで判断するしかない。
タケゾーはどこか渋い顔をしてるけど、正直仕方ないじゃん。だって、他に方法がないもん。
「えーっと……居合君。ちょーっと、こっちでタケゾーお兄さんと一緒に確認したいことがあるんだけど、いいかな?」
「居合君? ボクのこと?」
「そう。君の仮名だね」
「……お姉さんは悪い人じゃない。だから、一緒のお兄さんも悪い人じゃない。大丈夫」
というわけで、ご本人にも了承をとり、早速性別チェックと行きましょう。
名前についてはインサイドブレードじゃ呼びづらいから、とりあえずは『居合君』ってことで。まあ、もしかしたら『居合ちゃん』かもしれないけど。
少し時間が経って慣れてきたのか、タケゾーへの警戒心も薄れてきている。
これならば、後はタケゾーがこの子のお股を確認してくれればそれで済む。
「待て待て待て。どうして俺が調べる流れになってるんだ?」
「え? だって、タケゾーの方がこういう子供の扱いには慣れてるよね?」
「もっと小さい子供が相手だけどな。……いや、反論するだけ無駄な気がしてきた。分かった。俺がやるよ」
ちょっとタケゾーに押し付けた形になっちゃったけど、こういうのはタケゾーの方が強い――気がする。
もしも居合君が女の子だったらタケゾーも気まずいだろうけど、それはアタシとて同じこと。
――許せ、タケゾー。アタシには子供の面倒が分からんのだ。
少し罪悪感は感じつつも、タケゾーと居合君は二人で個室へと入っていった。
「それにしても、性別さえ分かってなかったのに、剣技については覚えてたってどういうことだろね? この刀にしたって、普通に手に入るものじゃないし」
居合君の方はタケゾーに任せて、アタシはあらかじめ預かっておいた刀を手に取りながら椅子の上で考え込む。
あの子の正体についての手掛かりはいくらかある。
アタシがこれまで戦ってきたヴィランと同じようなコードネーム。
ショーちゃんと同じ居合術。
居合により高周波ブレードへと変化する刀。
これらのことから、また大凍亜連合が一枚噛んでいるのは間違いないと見ていい。本当につくづく面倒な組織だ。
ただ、全ての要因を繋ぎ合わせた際の正体が全く掴めない。
やっぱり、居合君はショーちゃんの親族なのかな? 大凍亜連合に改造されて、記憶も何もかも忘れちゃったとか?
いずれにせよ、大凍亜連合の存在を見過ごすことなどできない。
パンドラの箱が盗まれた一件にしても、ケースコーピオンを作り出すためだったと考えれば、やはり裏に潜んでいるのは大凍亜連合か。
――なんだか、アタシもどんどんとややこしい話に足を突っ込んでいってるものだ。
「まあ、これもまたアタシが選んだ道だ。弱音も吐いてられないね」
それでもアタシには課せられた責務がある。
最初はちょっとした思い付きから始めたヒーロー活動だったが、今はこの肩に両親が遺した想いも背負ってる。
アタシには立ち向かえる力があって、立ち向かうべき相手がいる。その事実がある限り、空色の魔女としての戦いは終わらない。
――今は何より、ショーちゃんと重なって見える居合君を放っておくことができない。
本当に記憶喪失ならば、どうにかしてその記憶も取り戻してあげないとね。
「……隼。確認できたぞ」
「お? 終わった? ……って、なんだか深刻な顔をしてない?」
少し物思いにふけていると、タケゾーが一人で個室から出てきた。
ただその様子を見ると、アタシにも何となく結末が読める。
「とりあえず、股間にアレは生えてなかった」
「あー……女の子だったのか。それはタケゾーにも居合君にも悪いことをしちゃったね」
二分の一の確率だったとはいえ、異性同士で性器確認をさせちゃったとはね。
タケゾーも申し訳なさのせいで、ここまで深刻になっちゃったってことか。
でもまあ、これであの子の性別自体は分かった。
とりあえず、仮名の方は『居合ちゃん』に改名する方向で――
「……いや、あの子は女の子でもない」
「……へ? どゆこと?」
――などと考えていたが、タケゾーの話にはまだ続きがあった。
ただ、その意味は全くもって理解不能。男の子のアレがついてないのに、女の子でもないってどういうことよ?
性別なんて、二つに一つじゃないの?
「あの子なんだけど……男性器どころか女性器もついてなかったんだ……」
「オトコ、オンナ? 性別って、何かの分け方?」
何ということだ。アタシが保護したこの子、驚くことに自分の性別さえも分かってない。
これは教育ができてないとか、ただの記憶喪失とかってレベルではない。タケゾーも料理の手を止めて、こちらの話に割り込んでくる。
「うーん……ちょっと困ったもんだね。名前とかは別として、性別ぐらいはハッキリさせておいた方がいいよね。タケゾーはこの子の性別って分かる?」
「お、俺に聞くなよ。本人が性別が何かも分かってないのに、俺にどうやって判断しろと?」
「いや、保育士だからそういうのにも詳しいと思って」
「見た目だけでの判断なんて、俺でも無理だっての……」
まだまだ先の話もしたいのに、この子の性別が分からないままってのはモヤモヤする。
タケゾーも幼い頃によく女の子に間違われて――あっ、今もたまにあるか。とにかく、そういう経験や保育士としてのスキルで分かると思ったのに、これはとんだ期待外れだ。
これを早急に解明しないことには、アタシも次の話に移れない。
「……よし。脱がそう」
「サラッと言うな。サラッと」
こうなったら最終手段。股間にアレがあるかないかで判断するしかない。
タケゾーはどこか渋い顔をしてるけど、正直仕方ないじゃん。だって、他に方法がないもん。
「えーっと……居合君。ちょーっと、こっちでタケゾーお兄さんと一緒に確認したいことがあるんだけど、いいかな?」
「居合君? ボクのこと?」
「そう。君の仮名だね」
「……お姉さんは悪い人じゃない。だから、一緒のお兄さんも悪い人じゃない。大丈夫」
というわけで、ご本人にも了承をとり、早速性別チェックと行きましょう。
名前についてはインサイドブレードじゃ呼びづらいから、とりあえずは『居合君』ってことで。まあ、もしかしたら『居合ちゃん』かもしれないけど。
少し時間が経って慣れてきたのか、タケゾーへの警戒心も薄れてきている。
これならば、後はタケゾーがこの子のお股を確認してくれればそれで済む。
「待て待て待て。どうして俺が調べる流れになってるんだ?」
「え? だって、タケゾーの方がこういう子供の扱いには慣れてるよね?」
「もっと小さい子供が相手だけどな。……いや、反論するだけ無駄な気がしてきた。分かった。俺がやるよ」
ちょっとタケゾーに押し付けた形になっちゃったけど、こういうのはタケゾーの方が強い――気がする。
もしも居合君が女の子だったらタケゾーも気まずいだろうけど、それはアタシとて同じこと。
――許せ、タケゾー。アタシには子供の面倒が分からんのだ。
少し罪悪感は感じつつも、タケゾーと居合君は二人で個室へと入っていった。
「それにしても、性別さえ分かってなかったのに、剣技については覚えてたってどういうことだろね? この刀にしたって、普通に手に入るものじゃないし」
居合君の方はタケゾーに任せて、アタシはあらかじめ預かっておいた刀を手に取りながら椅子の上で考え込む。
あの子の正体についての手掛かりはいくらかある。
アタシがこれまで戦ってきたヴィランと同じようなコードネーム。
ショーちゃんと同じ居合術。
居合により高周波ブレードへと変化する刀。
これらのことから、また大凍亜連合が一枚噛んでいるのは間違いないと見ていい。本当につくづく面倒な組織だ。
ただ、全ての要因を繋ぎ合わせた際の正体が全く掴めない。
やっぱり、居合君はショーちゃんの親族なのかな? 大凍亜連合に改造されて、記憶も何もかも忘れちゃったとか?
いずれにせよ、大凍亜連合の存在を見過ごすことなどできない。
パンドラの箱が盗まれた一件にしても、ケースコーピオンを作り出すためだったと考えれば、やはり裏に潜んでいるのは大凍亜連合か。
――なんだか、アタシもどんどんとややこしい話に足を突っ込んでいってるものだ。
「まあ、これもまたアタシが選んだ道だ。弱音も吐いてられないね」
それでもアタシには課せられた責務がある。
最初はちょっとした思い付きから始めたヒーロー活動だったが、今はこの肩に両親が遺した想いも背負ってる。
アタシには立ち向かえる力があって、立ち向かうべき相手がいる。その事実がある限り、空色の魔女としての戦いは終わらない。
――今は何より、ショーちゃんと重なって見える居合君を放っておくことができない。
本当に記憶喪失ならば、どうにかしてその記憶も取り戻してあげないとね。
「……隼。確認できたぞ」
「お? 終わった? ……って、なんだか深刻な顔をしてない?」
少し物思いにふけていると、タケゾーが一人で個室から出てきた。
ただその様子を見ると、アタシにも何となく結末が読める。
「とりあえず、股間にアレは生えてなかった」
「あー……女の子だったのか。それはタケゾーにも居合君にも悪いことをしちゃったね」
二分の一の確率だったとはいえ、異性同士で性器確認をさせちゃったとはね。
タケゾーも申し訳なさのせいで、ここまで深刻になっちゃったってことか。
でもまあ、これであの子の性別自体は分かった。
とりあえず、仮名の方は『居合ちゃん』に改名する方向で――
「……いや、あの子は女の子でもない」
「……へ? どゆこと?」
――などと考えていたが、タケゾーの話にはまだ続きがあった。
ただ、その意味は全くもって理解不能。男の子のアレがついてないのに、女の子でもないってどういうことよ?
性別なんて、二つに一つじゃないの?
「あの子なんだけど……男性器どころか女性器もついてなかったんだ……」
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