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魔女と旦那の日常編
ep114 深夜のドライブ出かけてみよう!
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お義母さんのおかげでタケゾーとも仲直りし、アタシ達はタケゾーの実家を後にした。
その際にタケゾーは『理性ぐらい、男なら踏ん張りなさいよね~』などとお義母さんにグチグチ言われていたが、最終的にはお義母さんの方が折れてくれた。
まあ、アタシもタケゾーに強姦魔にはなって欲しくない。夫婦とはいえ、乱暴な営みはよろしくない。
――タケゾーが変に溜まらないかは心配だけど。
「あっ。バイクで来てたんだ」
「まあ、隼がどこに行ったか最初は分からなくて、玉杉さんの店に行ったりもしたからな」
「だったらさ、少しドライブして帰らない? だいぶ夜も遅くなったけど、こういう時のドライブもオツなものじゃないかな?」
「確かにな。それじゃあ、軽く走らせてみるか」
色々とどんよりした話が続いてしまったが、ここは少し気持ちを切り替えたい。
そういう意味でも、帰りにタケゾーのバイクがあるのは好都合だ。
もう深夜と言える時間帯だけど、この時間帯ならばかえって交通量も少ない。
夜風に当たりながら深夜のドライブなんてのも、気分転換には持って来いだろう。
そんなわけでアタシはヘルメットを被ってサイドカーに乗り込み、タケゾーもエンジンをふかしてバイクを走らせ始める。
「ヒャッハー! やっぱ、風を切る感覚ってのは、心地の良いもんだねぇ!」
「隼はいつも杖で空を飛んでるのに、バイクで走っても気持ちがいいものなのか?」
「それはそれ、これはこれって奴さ。別に空色の魔女で空を飛べたって、バイクで走るのはまた違った趣ってもんよ」
アタシとタケゾーはバイクに乗りながら、人の少ない夜の公道を駆け抜けていく。
バイクで走るのって、デバイスロッドで空を飛ぶのとは違う爽快感があるのよね。何より、タケゾーと一緒に駆けられるってのが大きい。
こうやって夫婦一緒に風を感じているというだけで、さっきまでの仲違いまで吹き飛ばしてくれるように感じる。
「ここのビル街になると、この時間帯でも人は多いな」
「残業帰りの企業戦士の皆様かねぇ。ご苦労なこった」
しばらくバイクを走らせると、まだまだ帰り道のサラリーマンやOLの姿が見えるビル街へとやって来た。
この国の労働者って、他の国よりも拘束時間が長いんだっけ? ゼノアークさんみたいに海外から来てる人にとっては、余計に辛いんじゃないかな?
でもまあ、そこはアタシが正義のヒーローであってもどうにもならない。そういうのはお国の仕事だ。
ただそれでもアタシにできるのは、こうやって生活のために働く人々の日常を守ること。
アタシだって、こうやって旦那様となってくれたタケゾーとの日常を、いつまでも続けていきたい。
『これ以上を望む』のではなく『これ以下を防ぐ』こと。
――それこそがアタシの抱くヒーロー像で、空色の魔女としての在り方だ。
ガシャァァアアン!!
「うわわ!? な、何!? この物音は!?」
「くっそ!? 前方で事故でもあったのか!?」
サイドカーに揺られながらしっぽり思いを抱いていると、突如として前方から鳴り響く轟音。それにより、タケゾーもバイクを横に滑らせながら急停止させる。
せっかく曇ってた気持ちも晴れてきたのに、なんとも無粋な出来事に遭遇したものだ。
交通量自体はかなり少なくなってるのに、それでも事故を起こしたのならば、飲酒運転か何かだろうか?
もしそうだとしたら、アタシも空色の魔女として一言申したい。あっ、でも事故の状況次第なら、人命救助が優先か。
「お、おい! なんだあのバケモノは!?」
「み、みんな逃げろ! とにかくヤバいぞ!?」
そうこう考えていたアタシだったが、どうにも目に映る状況はおかしい。
前方の轟音がした方角からは煙が上がり、こちらへと逃げ惑う人達が多数見える。
――どう考えてもただ事じゃない。
これはアタシも出るしかないってもんよ。
「タケゾー! 少し離れてて! よかったら、逃げてる人達の面倒もお願い!」
「分かった! 隼も気を付けろよ!」
アタシはサイドカーから飛び降りながら、轟音が響いた煙の中へと駆けていく。
その際にタケゾーにも声をかけると、アタシの願いをすんなり聞き入れてくれた。
――少し前までいがみ合ってたけど、やっぱりタケゾーは頼れる男だ。
これほどの騒動ならば警察もすぐに動くだろうし、避難に関してはタケゾーに一任しておこう。
「変身! 空色の魔女! ここに参上!」
煙の中でアタシは空色の魔女に変身すると、同じく出力したデバイスロッドに腰かけ、煙の先へと一気に飛んでいく。
この煙、ただの砂埃や火災とは思えない。それこそ、事故によって巻き起こったのではなく、もっと大きなエネルギーが衝突でも起こしたような爆炎に近い。
胸騒ぎを覚えながらも、アタシが煙を抜けた先に目を向けると――
「……ンギィ。破壊……遂行……」
「え!? な、何あれ!? サソリの……ロボット!?」
――こんな騒動を引き起こしたと思われる犯人の姿が目に映った。
だが、その姿を見て納得するどころか、アタシは余計に困惑してしまう。
形こそ人のものだが、全身をまるで甲殻類のような装甲で覆った姿。
そのフォルムはどこかジェットアーマーに近いものを感じるが、それよりも異様なのはお尻の辺りから尻尾のように伸びた金属アーム。
四本の爪を携え、まるでサソリの尻尾のように自在にうねって動いている。
だが、その無骨な金属でできたフォルムは、まるで生物とは思えない。
――『サソリの人型ロボット』
アタシがそいつから抱いた第一印象としては、その表現がしっくりと来る。
「ちょっと、あんた! こんなところで何をしてんだい!?」
「接近気配感知……。攻撃対象移行……」
とはいえ、あのサソリロボットがこの騒動の元凶なのは確かだ。
アタシはまず低空飛行しながら接近し、この謎の新ヴィランへと挑みにかかる。
向こうもアタシに気付いたのか、何やら言葉を発しながら動作を始めてくる。
――ただ、その時の様子もまた人間のようには見えない。
どこか機械的な口調で、淡々とこれからやることを確認のために復唱しているだけに見える。
ますますもってロボットっぽい。ただ、そんな中でもロボットっぽくないのが――
「投擲物発見……。対象補足、投擲……」
ブォォオオンッ!!
「いいぃ!? く、車を投げてきたぁあ!?」
――そのサソリロボットの動きだ。
金属アームのような尻尾を巧みに操り、近くにあった車を掴んでこちらへと投げ飛ばしてきた。
その一投自体はアタシでも問題なく躱せるものだったが、問題はその際に見せた一連の動き。
まるで本当に人が操っているかのような滑らかな動き。思考したうえでその場に応じた判断を行い、それを実行する行動力。
ただのロボットでこんな動きができるとは考えづらい。
元々のパワーもさることながら、ロボットがただただAIに従って動いたようには見えない。
――そう感じてしまう程、アタシは相手の動きに『意志』のようなものを感じてしまう。
「こいつはまさか、ジェットアーマーみたいに誰かが搭乗してるってこと? それとも、遠隔操作タイプ?」
ロッドで浮かびながら相手の出方を伺うが、同時に気になってしまうこいつの正体。
意志があるのかないのか分からない。人なのかどうかもあやふや。こんな感覚を抱いたのは初めてだ。
相手を止めることよりも、その正体に気が行ってしまう。
「キーハハハ! こらぁ、ある意味好都合やな! 試運転相手として使えるなぁ!」
「んげぇ!? あ、あんたはまさか……!?」
そんな思考を邪魔するように、近くにあったビルの屋上から誰かがアタシへ声をかけてきた。
いや、誰かなんて考えるまでもない。この特徴的な笑い声と関西弁。アタシにとっても深い因縁のある相手だ。
その方向に目を向けてみれば、これまでと同じく全身を迷彩コートで隠したあいつが立っていた。
「まさか、こないなタイミングで会うとは思わんかったでぇ! 空色の魔女はんよぉ!」
「き、牙島……!」
その際にタケゾーは『理性ぐらい、男なら踏ん張りなさいよね~』などとお義母さんにグチグチ言われていたが、最終的にはお義母さんの方が折れてくれた。
まあ、アタシもタケゾーに強姦魔にはなって欲しくない。夫婦とはいえ、乱暴な営みはよろしくない。
――タケゾーが変に溜まらないかは心配だけど。
「あっ。バイクで来てたんだ」
「まあ、隼がどこに行ったか最初は分からなくて、玉杉さんの店に行ったりもしたからな」
「だったらさ、少しドライブして帰らない? だいぶ夜も遅くなったけど、こういう時のドライブもオツなものじゃないかな?」
「確かにな。それじゃあ、軽く走らせてみるか」
色々とどんよりした話が続いてしまったが、ここは少し気持ちを切り替えたい。
そういう意味でも、帰りにタケゾーのバイクがあるのは好都合だ。
もう深夜と言える時間帯だけど、この時間帯ならばかえって交通量も少ない。
夜風に当たりながら深夜のドライブなんてのも、気分転換には持って来いだろう。
そんなわけでアタシはヘルメットを被ってサイドカーに乗り込み、タケゾーもエンジンをふかしてバイクを走らせ始める。
「ヒャッハー! やっぱ、風を切る感覚ってのは、心地の良いもんだねぇ!」
「隼はいつも杖で空を飛んでるのに、バイクで走っても気持ちがいいものなのか?」
「それはそれ、これはこれって奴さ。別に空色の魔女で空を飛べたって、バイクで走るのはまた違った趣ってもんよ」
アタシとタケゾーはバイクに乗りながら、人の少ない夜の公道を駆け抜けていく。
バイクで走るのって、デバイスロッドで空を飛ぶのとは違う爽快感があるのよね。何より、タケゾーと一緒に駆けられるってのが大きい。
こうやって夫婦一緒に風を感じているというだけで、さっきまでの仲違いまで吹き飛ばしてくれるように感じる。
「ここのビル街になると、この時間帯でも人は多いな」
「残業帰りの企業戦士の皆様かねぇ。ご苦労なこった」
しばらくバイクを走らせると、まだまだ帰り道のサラリーマンやOLの姿が見えるビル街へとやって来た。
この国の労働者って、他の国よりも拘束時間が長いんだっけ? ゼノアークさんみたいに海外から来てる人にとっては、余計に辛いんじゃないかな?
でもまあ、そこはアタシが正義のヒーローであってもどうにもならない。そういうのはお国の仕事だ。
ただそれでもアタシにできるのは、こうやって生活のために働く人々の日常を守ること。
アタシだって、こうやって旦那様となってくれたタケゾーとの日常を、いつまでも続けていきたい。
『これ以上を望む』のではなく『これ以下を防ぐ』こと。
――それこそがアタシの抱くヒーロー像で、空色の魔女としての在り方だ。
ガシャァァアアン!!
「うわわ!? な、何!? この物音は!?」
「くっそ!? 前方で事故でもあったのか!?」
サイドカーに揺られながらしっぽり思いを抱いていると、突如として前方から鳴り響く轟音。それにより、タケゾーもバイクを横に滑らせながら急停止させる。
せっかく曇ってた気持ちも晴れてきたのに、なんとも無粋な出来事に遭遇したものだ。
交通量自体はかなり少なくなってるのに、それでも事故を起こしたのならば、飲酒運転か何かだろうか?
もしそうだとしたら、アタシも空色の魔女として一言申したい。あっ、でも事故の状況次第なら、人命救助が優先か。
「お、おい! なんだあのバケモノは!?」
「み、みんな逃げろ! とにかくヤバいぞ!?」
そうこう考えていたアタシだったが、どうにも目に映る状況はおかしい。
前方の轟音がした方角からは煙が上がり、こちらへと逃げ惑う人達が多数見える。
――どう考えてもただ事じゃない。
これはアタシも出るしかないってもんよ。
「タケゾー! 少し離れてて! よかったら、逃げてる人達の面倒もお願い!」
「分かった! 隼も気を付けろよ!」
アタシはサイドカーから飛び降りながら、轟音が響いた煙の中へと駆けていく。
その際にタケゾーにも声をかけると、アタシの願いをすんなり聞き入れてくれた。
――少し前までいがみ合ってたけど、やっぱりタケゾーは頼れる男だ。
これほどの騒動ならば警察もすぐに動くだろうし、避難に関してはタケゾーに一任しておこう。
「変身! 空色の魔女! ここに参上!」
煙の中でアタシは空色の魔女に変身すると、同じく出力したデバイスロッドに腰かけ、煙の先へと一気に飛んでいく。
この煙、ただの砂埃や火災とは思えない。それこそ、事故によって巻き起こったのではなく、もっと大きなエネルギーが衝突でも起こしたような爆炎に近い。
胸騒ぎを覚えながらも、アタシが煙を抜けた先に目を向けると――
「……ンギィ。破壊……遂行……」
「え!? な、何あれ!? サソリの……ロボット!?」
――こんな騒動を引き起こしたと思われる犯人の姿が目に映った。
だが、その姿を見て納得するどころか、アタシは余計に困惑してしまう。
形こそ人のものだが、全身をまるで甲殻類のような装甲で覆った姿。
そのフォルムはどこかジェットアーマーに近いものを感じるが、それよりも異様なのはお尻の辺りから尻尾のように伸びた金属アーム。
四本の爪を携え、まるでサソリの尻尾のように自在にうねって動いている。
だが、その無骨な金属でできたフォルムは、まるで生物とは思えない。
――『サソリの人型ロボット』
アタシがそいつから抱いた第一印象としては、その表現がしっくりと来る。
「ちょっと、あんた! こんなところで何をしてんだい!?」
「接近気配感知……。攻撃対象移行……」
とはいえ、あのサソリロボットがこの騒動の元凶なのは確かだ。
アタシはまず低空飛行しながら接近し、この謎の新ヴィランへと挑みにかかる。
向こうもアタシに気付いたのか、何やら言葉を発しながら動作を始めてくる。
――ただ、その時の様子もまた人間のようには見えない。
どこか機械的な口調で、淡々とこれからやることを確認のために復唱しているだけに見える。
ますますもってロボットっぽい。ただ、そんな中でもロボットっぽくないのが――
「投擲物発見……。対象補足、投擲……」
ブォォオオンッ!!
「いいぃ!? く、車を投げてきたぁあ!?」
――そのサソリロボットの動きだ。
金属アームのような尻尾を巧みに操り、近くにあった車を掴んでこちらへと投げ飛ばしてきた。
その一投自体はアタシでも問題なく躱せるものだったが、問題はその際に見せた一連の動き。
まるで本当に人が操っているかのような滑らかな動き。思考したうえでその場に応じた判断を行い、それを実行する行動力。
ただのロボットでこんな動きができるとは考えづらい。
元々のパワーもさることながら、ロボットがただただAIに従って動いたようには見えない。
――そう感じてしまう程、アタシは相手の動きに『意志』のようなものを感じてしまう。
「こいつはまさか、ジェットアーマーみたいに誰かが搭乗してるってこと? それとも、遠隔操作タイプ?」
ロッドで浮かびながら相手の出方を伺うが、同時に気になってしまうこいつの正体。
意志があるのかないのか分からない。人なのかどうかもあやふや。こんな感覚を抱いたのは初めてだ。
相手を止めることよりも、その正体に気が行ってしまう。
「キーハハハ! こらぁ、ある意味好都合やな! 試運転相手として使えるなぁ!」
「んげぇ!? あ、あんたはまさか……!?」
そんな思考を邪魔するように、近くにあったビルの屋上から誰かがアタシへ声をかけてきた。
いや、誰かなんて考えるまでもない。この特徴的な笑い声と関西弁。アタシにとっても深い因縁のある相手だ。
その方向に目を向けてみれば、これまでと同じく全身を迷彩コートで隠したあいつが立っていた。
「まさか、こないなタイミングで会うとは思わんかったでぇ! 空色の魔女はんよぉ!」
「き、牙島……!」
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