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魔女と旦那の日常編

ep107 アタシ達、結婚しました!

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 なんだかんだで同棲の話が結婚の話になってしまったアタシとタケゾー。
 色々と過程がおかしなことにはなったけど、お互いのことが好きなのは事実なので、そのままゴールイン。
 役所にも婚姻届を提出して無事に受理。めでたく夫婦となったのであった。

「それにしても、隼も隼だぞ? 婚姻届の氏名欄にあった苗字だって『空鳥』のままじゃないか?」
「いやー、アタシもうっかりそのまま書いちゃったよ。やっぱ『赤原 隼』に変えておいた方がよかったかな? アタシとしては『空鳥』のままの方が今はやりやすいんだけど」
「別に俺もそこまでこだわらないさ。最近は夫婦別姓も増えて来てるし」

 なお、名前についてアタシが婚姻届にそのまま『空鳥 隼』と書いてしまったため、夫婦別姓のまま入籍することとなってしまった。
 まあ、アタシもタケゾーもそこまで気にはしていない。一緒に支え合って生活したいのが第一だからね。



「……それでだ。問題はここでの報告なんだよな……」
「うっかり勢いのままに結婚しちゃったからねぇ……」



 そんなタケゾーとアタシなのだが、幸せ新婚生活よりも前にすることがある。
 そもそもの話、今回の結婚はアタシの勘違いが引き金となったかなり急な出来事だ。
 そのため、色々と順番をすっ飛ばしてしまったが、どうしても先にやらないといけないことがある。



 ――アタシのお義母さんとなる人、タケゾー母への挨拶だ。
 アタシ達は現在、タケゾーの実家の前で悩みながらも思案中である。



「今更過ぎる話だけどさ、どうやっておふくろに俺と隼が結婚したことを報告すればいいんだ?」
「そ、そんなのアタシが知るわけないでしょ? 結婚相手の母親に報告なんて、アタシも初めての体験だよ?」
「そりゃあ、そうだよな……。つうか、こんなことに慣れてる人間もいないだろ……」

 必要なこととはいえ、勢いのままに家まで来ただけで、そこから先のことは二人揃って何も考えていない。
 もっとも、勢いのままに結婚したようなものなので、今更綿密な計画など立てられるはずもない。
 ただ家の前でタケゾーと一緒に首を傾げ、どうやって説明するかを頑張って考える。

「……よし! 閃いたぞ、タケゾー!」
「お? 何かいい作戦を思いついたのか?」
「まずはタケゾーのお母さんにアタシから『成り行きにはなりますが、息子さんと結婚しました。これからお義母さんと呼ばせてください』って言う。そこから先は……後は野となれ山となれって奴さ」
「それは作戦と言わない。もうちょっとぐらい、頭をひねって考えてくれ」
「そんなこと言っても、ここまで来たら考えるだけ無駄って奴さ! もう思い切って行っちゃうよ!」
「お、おい!?」

 あれこれ考えてはみたものの、結論時間の無駄にしか感じない。
 タケゾーはまだ尻込みしているが、ここまで来たら女も男も度胸というものだ。もう考え込んでも仕方ない。
 行き当たりばったりは承知の上で、アタシは気合を込めてインターホンを押す。

「はいはーい。今出ますね~」

 そして家の中から聞こえてくる、タケゾー母のほがらかのんびりボイス。
 大丈夫だ。まずは伝えるべきことを伝えればいい。
 事前に頭の中で思い浮かべた通り、そのセリフを口にすれば――



「あら~? 武蔵に隼ちゃんじゃないの~。お引越しが終わったのかし――」
「お義母さん! 結婚しました!」
「……はえ~?」



 ――と考えていたのだが、物の見事に簡略化しすぎたセリフが飛んでしまった。
 もうね、仕方ないのよ。ただでさえ順番がすっ飛んでるのに、今更あれこれ考えた通りにうまく言えるはずがないのよ。
 そんなアタシの唐突過ぎる話を聞いて、タケゾー母は物の見事に固まってしまった。そりゃそうなる。

「隼!? せめてもう少しぐらい、分かりやすく説明しろよ!?」
「え、えーっと~……。とりあえず、武蔵と隼ちゃんが結婚したのは本当なのかしら~?」
「そ、その……それは事実だ。色々と驚くだろうが、結果として入籍……しました」

 流石にこのままではマズいと思ったのか、タケゾーも話に入り込んで(って、そもそもタケゾーも関係者だけど)説明をしてくれる。
 いきなりのことでかなり面食らったタケゾー母だったが、それでも徐々に事情を理解してくれる。

 ――しかしまあ『同棲と結婚を間違えて、そのまま息子が彼女と入籍した』なんて話、流石に信じてもらえるものかね?

「……成程~。分かったわよ~。武蔵も隼ちゃんもおめでとうね~」
「あ、あっさり信じちゃった……」
「おふくろはいい加減――もとい、何事に対してもおおらかな人間だ。……息子の俺でも不安になるレベルでな」

 そんなアタシの不安もなんのその。タケゾー母はあっさり納得してくれた。
 アタシのこともすんなり受け入れてくれて、笑顔で結婚を受け入れてくれる。

 ――アタシもちょっと不安になってきた。この人、アタシの義理の母になるわけだよね?
 自分でも思うんだけど、勘違いと勢いで結婚しちゃうような女なのよ? もうちょっと息子のことも含めて考えたら?

「隼ちゃんなら、武蔵の結婚相手にはもったいないぐらいよね~。こちらこそ、息子のことをお願いね~」
「なんてこったい。お義母さんのアタシへの評価高すぎ」
「ま、まあ、よかったんじゃないか? そもそも、おふくろは隼のことは気に入ってたし」

 何はともあれ、これで最大の難関は乗り越えたわけだ。
 家の奥へと案内されるが、お義母さんの態度は実に好意的なところを見るに、何も問題はないと見える。
 この調子で玉杉さんや洗居さん辺りにも報告したいけど、それはまだ大丈夫だろう。

 ――できれば、ショーちゃんにも報告した方が良かったかな?
 なんだかアタシ的に、ショーちゃんがアタシとタケゾーをくっつけてくれた気がするんだよね。
 もしもタケゾーが告白してくれなかったら、アタシはショーちゃんとくっついてたかもしれない。
 タケゾーと同じようにアタシのような女を愛してくれたショーちゃん。その告白は断っちゃったけど、今でもアタシの大切な友達には変わりない。

 ――手術を終えて戻ってきたら、きっちり報告とお礼をしないとね。



「ところでところで~。武蔵と隼ちゃんはヤッたのかしら~?」
「へ? やったって……何を?」



 アタシがちょっと物思いにふけていると、タケゾー母ことお義母さんが何やら尋ねてきた。
 でも、何の話だろ? 何かやるべきことなんてあったっけ?
 結婚式? ハネムーン? ダメだ。思い当たる節が多すぎて分からない。
 順番も何もかもがメチャクチャになりすぎて、どれもこれもが該当してしまう。

「えーっと……おふくろ? その『ヤッたヤッてない』って話は、まさかと思うけど……?」
「もちろんそのまさかよ~。新婚の夫婦なんだから、ヤッてて当然よね~」

 タケゾーはその勘の鋭さなのか、はたまた親子の絆なのか。お義母さんが何を言いたいかに勘付いているようだ。
 アタシにはサッパリわけワカメだし、気になるから早く教えて欲しいものだが――



「隼ちゃんは武蔵とはもう、エッチなことはしたのかしら~?」
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