空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
上 下
73 / 465
怪鳥との決闘編

ep73 社長さんの方から来てくれた!

しおりを挟む
「『お久しぶり』って、お前……。そこはせめて『お久しぶりです』って言えよ」
「別に私は構わないわよ。空鳥さんとはご両親との付き合いもあったし、気にせずに自然体にして頂戴」

 思わず自然体で挨拶しちゃってタケゾーにも指摘されるけど、それも快く了承してくれるとは、星皇社長は実に心が広い。
 本来ならばアタシのような個人のペーペー技術者なんかが、世界的大規模の社長と会うこと自体が簡単じゃない。
 そんな人とこういう風に付き合わせてもらえるなんて、父さんや母さんに感謝しとかなきゃね。

「そちらの男性は以前もお会いした、空鳥さんの幼馴染さんだったかしら? 赤原警部の息子さんだとか」
「ど、どうも。今は前とは違って、その……隼さんと交際させていただいてます……」
「あら? そうだったのね。あなたもそこまでかしこまらなくていいわよ。空鳥さんと交際してることだって、恥ずかしがらずに胸を張って言いなさい。彼女に失礼よ?」
「そ、それもそうですね」

 タケゾーも星皇社長に声をかけられ、どこかしどろもどろになりながら返答している。
 なんだか励まされてるみたいだけど、どうにも顔を赤くしているのが気になる。

 まさかとは思うが――

「……タケゾー。星皇社長に魅了されちゃったとかじゃないよね? アタシも流石に、付き合って即行で浮気されるのは辛い……」
「そんなわけないだろ!? 俺はお前みたいに、人様に交際のことをベラベラ喋れるメンタルは持ち合わせてないんだ!」

 ――よかった。とりあえず、浮気ではないようだ。
 星皇社長はアタシみたいな小娘と違い、大人の色気に満ち溢れている。
 失礼な話かもしれないけど、最近はタケゾーと付き合うようになったからか、アタシ以外の女性の魅力的な面が気になってしまう。
 自分でも面倒な女だとは思うけどね。隣の芝が青く見えて仕方ないのよ。

「そんなカップル二人が、今日はデートで我が社の見学かしら?」
「いや~。実はちょっと『星皇社長に会えたらいいな~』ぐらいの感じで、用事もあったのよ」
「私に用事? 少しぐらいなら聞いてあげても構わないわよ」

 それはさておき、こうしてお目当てだった星皇社長にも会えたことだ。
 見学はあくまでついでで、一応は本来の目的が別にある。
 星皇社長も聞いてくれるみたいだし、ここは早速用件を――



「……ごめん、タケゾー。アタシ、なんで星皇社長に会おうとしてたんだっけ?」
「なんで一番の本題を忘れてるんだよ!? お前の叔父さんの件だろ!?」



 ――言おうとしたのだが、うっかり頭からすっぽ抜けてた。
 タケゾーにも確認して、ようやくアタシも思い出した。鷹広のおっちゃんが星皇カンパニーの社員とアタシの縁談を勝手に進めてて、それにムカついたアタシがクレームを入れに来たんだった。

 ――要点だけまとめると、凄く理不尽なクレームだよね。
 まあ、アタシも軽くついでの調子で行動しただけだし、これは記憶から吹き飛んでいても仕方ない。

「お身内のお話かしら? 私で相談に乗れるとは思えないけど、せっかくの機会だからちょっと私の部屋に寄ってらっしゃい」
「え!? それってもしかして、星皇カンパニーの社長室に!?」
「その通りよ。私だって、将来のある若者との時間は大切にしたいわ」

 そんなアタシの理不尽かつ割とどうでもいい用件なのだが、なんと星皇社長はそのための時間を用意してくれるそうだ。
 しかも、社長室への案内付き。まさか理不尽クレームから、そんなところに立ち入れる話に繋がるとは思わなかった。

 ――かえって申し訳なくなってくる。

「ゼノアーク。このお二方を社長室まで案内しなさい。私も後から行くわ」
「かしこまりました。空鳥様に赤原様、どうぞこちらへ」

 星皇社長もアタシの用件をこの場で深く尋ねず、社長室への案内を優先してくれる。
 近くにいたゼノアークという男装麗人の秘書さんに命じると、星皇社長は別件での仕事か何かに向かって行った。
 アタシとタケゾーは秘書さんに連れられ、一足先に社長室へと案内される。

 ――てかこの秘書さん、さっきからずっと星皇社長の傍にいたよね?
 それなのに、星皇社長が呼びかけるまでアタシもすっかりその存在が頭から消えてたや。だってこの人、全然動かないせいか気配を感じないもん。
 表情の変化も全くと言っていいほどないし、身のこなしも隙がなさ過ぎて人間らしさを感じない。
 まさか、星皇カンパニー特製の最新アンドロイドとかじゃないよね?

「え、えーっと、ゼノアークさんだよね? 星皇社長の秘書さんってことでいいのよね?」
「その認識で合ってます」
「……ロボットとかじゃないよね? 人間だよね?」
「ロボットではありません。人間です」

 ゼノアークさんに案内してもらう最中、思わず気になってアタシも尋ねてしまった。
 本人は人間だと言ってるけど、そのやり取りが逆に人間味を感じない。

 ――必要以上のことを言わないこの雰囲気。優秀そうには見えるけど、なんだか冷たい。
 最初は洗居さんと似たタイプの人かと思ったが、全然違うタイプの人だ。
 洗居さんも対応がマニュアル的なところがあるけど、それでもどこか温もりを感じる。
 でも、このゼノアークさんはただ淡々としているだけで、言葉に温度をまるで感じない。

 ――なんだろう。ちょっと怖い。

「おい、空鳥。さっきの質問はちょっと失礼じゃないか?」
「そ、そうだったね。ごめんね、ゼノアークさん」
「心配無用です」
「……やっぱりAIか何かじゃないかな?」
「だから! 思ってても言うなっての!」

 タケゾーにも注意されてしまうが、この冷たいナイフのような切り返しはアタシとしても辛い。
 もっとこう、案内だけにしても明るい感じでお喋りしたいよね。

「だったらさ、タケゾーも何か話題を繋いでよ」
「そ、そうは言ってもな……。うーん……」

 どうせなら、タケゾーにお手本でも見せてもらおう。
 アタシが話しを振るとタケゾーも少し考えて、ゼノアークさんに話題を持ちかけるのだが――



「……すみません。最近、どこかでお会いしませんでしたか?」
「赤原様の勤め先の保育園でお見掛けしました」
「……そうですか」



 ――それはそうだろう。ゼノアークさんは星皇社長の秘書なのだから、星皇社長がよく立ち寄る保育園で顔を見ることだってあって当然だ。
 それに対するタケゾーの返事も『そうですか』って、もっとそこからの派生とかないのかな? これはこれで話題作りが下手じゃん。

「タケゾーももっと何か別の話題を出しなって。例えば『スタイルいいですね』とか『いいお尻してますね』とか」
「それを俺が言ったら、セクハラになるだろうが……! てか、隼はそんなこと考えてたのかよ……」

 アタシなりにタケゾーにアドバイスしてみるも、確かにこの話題は危ない。
 これでタケゾーが実際にやってセクハラで訴えられたら、彼女のアタシは立場も何もない。

 とはいえ、この凍えきった空気は肌寒い。
 どうにかして、ゼノアークさんが口を開く話題はないものか――



「すみません。自分、この国の言語に慣れていないので、余計な私語はご遠慮願います」



 ――と考えていたら、前方のゼノアークさんの方からこちらに振り向き、事情を語ってくれた。
 そういえば、この人って外国人じゃん。単純に言語が慣れてないだけじゃん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...