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魔女の誕生編
ep18 通り魔をやっつけろ!
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「オラオラァ! この女をぶっ殺してもいいのかぁ!?」
「ヒ、ヒイイ……!? た、助けて……!?」
住宅街に出没した通り魔なのだが、近くにいた若いOLを捕まえて人質にしてしまった。
右手に持ったナイフを人質の首に向け、周囲に脅しをかけている。
通り魔の見た目は筋肉ムキムキで、それを強調するかのようなタンクトップ。身長も2mぐらいありそうだ。
あんなデカブツが相手だからか、周囲の人々も怖気づくしかない。
「瞳孔も開いてるし、何かの拍子での突発的な犯行かねぇ? でもまあ、アタシがいれば万事解決ってね!」
こちらも上空から通り魔の様子を伺うが、悠長にしている暇もなさそうだ。
あの様子だと、本当に人質のOLを殺しかねない。
かと言って、ああやってナイフを突きつけられた状況だと、下手な不意打ちを仕掛けるのは逆効果だ。突発的に人質に何をするか分からない。
「仕方ないね! ここはアタシも、正面からの真っ向勝負と行きますか!」
アタシは空中でデバイスロッドを腕時計型ガジェットの中に収納しなおし、そのまま体一つで地面へと急降下を始める。
狙うべき落下地点は、あの通り魔の眼前。
急降下したアタシは着地と同時に――
スタァンッ!!
――片足は伸ばし、もう片足は膝をついて着地。片手もかっこよく地面に着かせる。
所謂、スーパーヒーロー着地というやつだ。一度やってみたかったんだよね。
でも、これって膝に来るね。今後は控えておこう。
「邪悪な怪人、ムキムキタンクトップめ! この空色の魔女が成敗してやんよ!」
「な、なな、何者だぁ!? それと『ムキムキタンクトップ』って、俺のことかぁ!?」
とりあえず着地はオッケー。
さらに今度は立ち上がった後、ヒーローっぽく眼前の通り魔相手に指差ししながら名乗りを上げる。
――え? ムキムキタンクトップ? もちろん、通り魔のことだよ?
うん。自分でも酷いネーミングセンスだとは思う。
でも、即席で思いついたのがこれなのよ。
それに、やってみたくなるじゃん? 悪者相手に宣戦布告とか。
「だ、誰だか知らんが、おとなしくしやがれ! この女がどうなってもいいのかぁ!?」
「お、お願い……! た、助けて……!」
「あーあー! 危ないことはやめなって! ほら! アタシは武器も何も持ってないしさ!」
そうして怪人ムキムキタンクトップの前に出てきて、こちらにも注意を向けさせることはできた。
だが、アタシの突然の登場に動揺しながらも、ムキムキタンクトップは人質のOLをこちらに向けて脅してくる。
首元に当てたナイフは震えて狙いが定まっていないが、OLの方も恐怖が限界といった様子。
かといって、こちらも今は素手の状態。両の手の平を相手に向けて、無抵抗の意志を示すしかない。
――と、思うじゃん?
ビビュビュン!
「えぇ!? ナ、ナイフがぁ!?」
ここでアタシが腕時計型ガジェットに仕込んだ、最後の新兵器の出番だ。
ぶっつけ本番になってしまったが、どうせならこういう場面で使ってみたくなる。
――両親の遺したデータにあった、電気エネルギーによる金属物運搬技術。
それを利用して、ガジェットの手の平側から射出される、電気エネルギーで作られたロープ。
所謂、トラクタービーム。これにより、対象が金属ならば、遠くからでもアタシの意のままに動かすことができる。
それによって、ムキムキタンクトップの持っていたナイフを離れた位置から奪い取り、遠くへと投げ捨てる。
「それ! お姉さんは今のうちに逃げちゃって!」
「え!? あ! は、はい!」
「クッソォオ! わけの分からない、コスプレ魔女がぁあ!!」
そして、アタシはその隙を見逃さない。
素早く近づいて人質だったOLをムキムキタンクトップの手から解放し、すぐさま逃げ出させる。
それに怒ったムキムキタンクトップなのだが、今度はアタシの方に矛先を向けてくる。
こっちも懐まで潜り込んじゃったからね。
ムキムキタンクトップが振り上げた拳が、ものの見事にアタシの脳天へと飛んでくる――
ズガンッッ!!
「ほうほう。パンチ力は300kgってところかね。流石のムキムキだ。これはプロボクサークラスだね」
「き、効いてないだとぉお!?」
――まあ、アタシには効かないけど。
生体コイルの稼働により、体細胞の強度もアップしてるからね。ちょーっと強いぐらいのパンチなんて、アタシにはどうってことない。
コンタクトレンズに映された計測データを読み取る余裕だってある。
「もしかして、格闘家希望? アタシもさ、格闘術を学んでみようと思うんだよねぇ。ちょっとアタシの腕前、見てみてくんない?」
「……はぁ?」
こうやって接近戦をしてみて思ったんだけど、アタシも格闘術を覚えた方がいいよね。
いつも遠くから奇襲で無力化できるとは限らないし、肉体能力そのものだって大幅に向上してる。
どうせならスーパーヒーローよろしく、かっこいい格闘バトルもやってみたいものだ。
というわけで、まずアタシが試すのは、全身を大きく後ろに回転させてからの――
ドガァァンッ!!
「ゲブゥウウ!?」
――サマーソルトキック。
美しい放物線を描いた|(と思われる)アタシのキックは、ムキムキタンクトップの顎に直撃して、その肉体を大きく打ち上げる。
かっこいいよね、サマーソルトキック。魔女の技っぽくはないけどさ。
でも、少しやり過ぎちゃったかな? これは威力に注意しないと、相手を殺してしまいかねない。
幸い、ムキムキタンクトップはそのガタイゆえか、落下した後もまだまだ大丈夫と見える。
「ち、ちくしょぉ……!? なんなんだよ、このコスプレ魔女は……!?」
「ただのコスプレってわけじゃ、ないんだけどねぇ。まあ、これも見て『本物の魔女』ってことにしてくださいな~」
もうまともに動けなさそうだが、一応は拘束しておくのが安全か。
丁度近くに工事用の金網があるし、少し拝借させてもらおう。
ムキムキタンクトップとちょっとだけ話しながら、再度左腕のガジェットからトラクタービームを射出し、金網を何枚か持ち上げて――
ガッシャーンッ!
――即席鉄格子の完成っと。
これにより、ムキムキタンクトップはまるで檻の中のゴリラだ。
――あっ、この比喩はゴリラに失礼か。
ごめん、森の賢者様。
「通り魔が出たと通報があったが、また君まで出て来てたのか……」
「んげ!? レッドフィールド警部!?」
「赤原だ。ア・カ・ハ・ラ。奇妙な呼び方をするな。自称魔女さん」
そうやって、無事に怪人ムキムキタンクトップは撃退できたのだが、またしてもアタシにとって厄介な人のお出ましだ。
ポリス・レッドフィールドこと、タケゾーの親父さんだ。最早この人と会う流れも、お約束になりつつある。
「前にも言ったけど、下手に警察外部の人間が逮捕行為をすると、罰せられるケースだってあるんだぞ?」
「アハハ~……そうだったね~。ところで、アタシが正式に契約を交わして、こういう行為を認めてもらうことってできますかね?」
タケゾー父は相変わらずアタシの正体には気付いてないようだが、疲れたような顔でこちらを見てくる。
やっぱ、警察としてはアタシの存在って、邪険になるんだね。
それならばと、アタシの方からうまく認めてもらう方法はないかと尋ねてみる。
「うーむ……。一応、なくはないか?」
「マジで!? だったら、その契約をさせてもらえないかな!?」
あまり期待はしていなかったが、意外にもそういう契約は可能なようだ。
そうと決まれば話が早い。
警察やタケゾー父に邪険にされ続けるのも嫌だし、早速契約手続きを――
「とりあえず、君の名前と住所は必要――」
「アディオーース!!」
「あっ!? やっぱり逃げた!」
――うむ、やめておこう。
名前と住所が必要となったら、身元がバレちゃうじゃん。
それも、タケゾー父にバレてしまえば、タケゾーにもバレちゃうじゃん。
アタシは自分がやりたいから、こうやって隙間時間にヒーロー活動をしてるんだ。
身バレしてしまうと、色々と面倒な話で時間をとられてしまう。
――そんなことは御免被る。
空色の魔女はクールに去るのさ。
「ヒ、ヒイイ……!? た、助けて……!?」
住宅街に出没した通り魔なのだが、近くにいた若いOLを捕まえて人質にしてしまった。
右手に持ったナイフを人質の首に向け、周囲に脅しをかけている。
通り魔の見た目は筋肉ムキムキで、それを強調するかのようなタンクトップ。身長も2mぐらいありそうだ。
あんなデカブツが相手だからか、周囲の人々も怖気づくしかない。
「瞳孔も開いてるし、何かの拍子での突発的な犯行かねぇ? でもまあ、アタシがいれば万事解決ってね!」
こちらも上空から通り魔の様子を伺うが、悠長にしている暇もなさそうだ。
あの様子だと、本当に人質のOLを殺しかねない。
かと言って、ああやってナイフを突きつけられた状況だと、下手な不意打ちを仕掛けるのは逆効果だ。突発的に人質に何をするか分からない。
「仕方ないね! ここはアタシも、正面からの真っ向勝負と行きますか!」
アタシは空中でデバイスロッドを腕時計型ガジェットの中に収納しなおし、そのまま体一つで地面へと急降下を始める。
狙うべき落下地点は、あの通り魔の眼前。
急降下したアタシは着地と同時に――
スタァンッ!!
――片足は伸ばし、もう片足は膝をついて着地。片手もかっこよく地面に着かせる。
所謂、スーパーヒーロー着地というやつだ。一度やってみたかったんだよね。
でも、これって膝に来るね。今後は控えておこう。
「邪悪な怪人、ムキムキタンクトップめ! この空色の魔女が成敗してやんよ!」
「な、なな、何者だぁ!? それと『ムキムキタンクトップ』って、俺のことかぁ!?」
とりあえず着地はオッケー。
さらに今度は立ち上がった後、ヒーローっぽく眼前の通り魔相手に指差ししながら名乗りを上げる。
――え? ムキムキタンクトップ? もちろん、通り魔のことだよ?
うん。自分でも酷いネーミングセンスだとは思う。
でも、即席で思いついたのがこれなのよ。
それに、やってみたくなるじゃん? 悪者相手に宣戦布告とか。
「だ、誰だか知らんが、おとなしくしやがれ! この女がどうなってもいいのかぁ!?」
「お、お願い……! た、助けて……!」
「あーあー! 危ないことはやめなって! ほら! アタシは武器も何も持ってないしさ!」
そうして怪人ムキムキタンクトップの前に出てきて、こちらにも注意を向けさせることはできた。
だが、アタシの突然の登場に動揺しながらも、ムキムキタンクトップは人質のOLをこちらに向けて脅してくる。
首元に当てたナイフは震えて狙いが定まっていないが、OLの方も恐怖が限界といった様子。
かといって、こちらも今は素手の状態。両の手の平を相手に向けて、無抵抗の意志を示すしかない。
――と、思うじゃん?
ビビュビュン!
「えぇ!? ナ、ナイフがぁ!?」
ここでアタシが腕時計型ガジェットに仕込んだ、最後の新兵器の出番だ。
ぶっつけ本番になってしまったが、どうせならこういう場面で使ってみたくなる。
――両親の遺したデータにあった、電気エネルギーによる金属物運搬技術。
それを利用して、ガジェットの手の平側から射出される、電気エネルギーで作られたロープ。
所謂、トラクタービーム。これにより、対象が金属ならば、遠くからでもアタシの意のままに動かすことができる。
それによって、ムキムキタンクトップの持っていたナイフを離れた位置から奪い取り、遠くへと投げ捨てる。
「それ! お姉さんは今のうちに逃げちゃって!」
「え!? あ! は、はい!」
「クッソォオ! わけの分からない、コスプレ魔女がぁあ!!」
そして、アタシはその隙を見逃さない。
素早く近づいて人質だったOLをムキムキタンクトップの手から解放し、すぐさま逃げ出させる。
それに怒ったムキムキタンクトップなのだが、今度はアタシの方に矛先を向けてくる。
こっちも懐まで潜り込んじゃったからね。
ムキムキタンクトップが振り上げた拳が、ものの見事にアタシの脳天へと飛んでくる――
ズガンッッ!!
「ほうほう。パンチ力は300kgってところかね。流石のムキムキだ。これはプロボクサークラスだね」
「き、効いてないだとぉお!?」
――まあ、アタシには効かないけど。
生体コイルの稼働により、体細胞の強度もアップしてるからね。ちょーっと強いぐらいのパンチなんて、アタシにはどうってことない。
コンタクトレンズに映された計測データを読み取る余裕だってある。
「もしかして、格闘家希望? アタシもさ、格闘術を学んでみようと思うんだよねぇ。ちょっとアタシの腕前、見てみてくんない?」
「……はぁ?」
こうやって接近戦をしてみて思ったんだけど、アタシも格闘術を覚えた方がいいよね。
いつも遠くから奇襲で無力化できるとは限らないし、肉体能力そのものだって大幅に向上してる。
どうせならスーパーヒーローよろしく、かっこいい格闘バトルもやってみたいものだ。
というわけで、まずアタシが試すのは、全身を大きく後ろに回転させてからの――
ドガァァンッ!!
「ゲブゥウウ!?」
――サマーソルトキック。
美しい放物線を描いた|(と思われる)アタシのキックは、ムキムキタンクトップの顎に直撃して、その肉体を大きく打ち上げる。
かっこいいよね、サマーソルトキック。魔女の技っぽくはないけどさ。
でも、少しやり過ぎちゃったかな? これは威力に注意しないと、相手を殺してしまいかねない。
幸い、ムキムキタンクトップはそのガタイゆえか、落下した後もまだまだ大丈夫と見える。
「ち、ちくしょぉ……!? なんなんだよ、このコスプレ魔女は……!?」
「ただのコスプレってわけじゃ、ないんだけどねぇ。まあ、これも見て『本物の魔女』ってことにしてくださいな~」
もうまともに動けなさそうだが、一応は拘束しておくのが安全か。
丁度近くに工事用の金網があるし、少し拝借させてもらおう。
ムキムキタンクトップとちょっとだけ話しながら、再度左腕のガジェットからトラクタービームを射出し、金網を何枚か持ち上げて――
ガッシャーンッ!
――即席鉄格子の完成っと。
これにより、ムキムキタンクトップはまるで檻の中のゴリラだ。
――あっ、この比喩はゴリラに失礼か。
ごめん、森の賢者様。
「通り魔が出たと通報があったが、また君まで出て来てたのか……」
「んげ!? レッドフィールド警部!?」
「赤原だ。ア・カ・ハ・ラ。奇妙な呼び方をするな。自称魔女さん」
そうやって、無事に怪人ムキムキタンクトップは撃退できたのだが、またしてもアタシにとって厄介な人のお出ましだ。
ポリス・レッドフィールドこと、タケゾーの親父さんだ。最早この人と会う流れも、お約束になりつつある。
「前にも言ったけど、下手に警察外部の人間が逮捕行為をすると、罰せられるケースだってあるんだぞ?」
「アハハ~……そうだったね~。ところで、アタシが正式に契約を交わして、こういう行為を認めてもらうことってできますかね?」
タケゾー父は相変わらずアタシの正体には気付いてないようだが、疲れたような顔でこちらを見てくる。
やっぱ、警察としてはアタシの存在って、邪険になるんだね。
それならばと、アタシの方からうまく認めてもらう方法はないかと尋ねてみる。
「うーむ……。一応、なくはないか?」
「マジで!? だったら、その契約をさせてもらえないかな!?」
あまり期待はしていなかったが、意外にもそういう契約は可能なようだ。
そうと決まれば話が早い。
警察やタケゾー父に邪険にされ続けるのも嫌だし、早速契約手続きを――
「とりあえず、君の名前と住所は必要――」
「アディオーース!!」
「あっ!? やっぱり逃げた!」
――うむ、やめておこう。
名前と住所が必要となったら、身元がバレちゃうじゃん。
それも、タケゾー父にバレてしまえば、タケゾーにもバレちゃうじゃん。
アタシは自分がやりたいから、こうやって隙間時間にヒーロー活動をしてるんだ。
身バレしてしまうと、色々と面倒な話で時間をとられてしまう。
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