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最終章 それが俺達の絆
第471話 最終決戦・終局
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「ハアァアアアア!!!」
「オラァアアアア!!!」
ルクガイア城の屋上で、ラルフルとゼロラの最終決戦は続いていた。
その戦いは空間そのものに影響を与え、人が立ち入れない領域へと達していた。
ラルフルの纏う<白色のオーラ>とゼロラの纏う<黒色のオーラ>の衝突――
二つの力が周囲に及ぼした影響は、最早人を超えるどころか、神の領域に達していると言える程であった。
この戦いで生じた瓦礫は宙に浮かび、空間そのものにヒビが入る。
あまりに大きすぎる二つの力の衝突――
しかもその力は、魔力が一切混ざっていない、純粋な人同士の力――
魔力を失った元魔法使い、ラルフル。
魔力を失った元魔王、ゼロラ。
二人の"純粋な人間の力"が、かつて行われた伝説の戦い――"勇者と魔王の戦い"を顕現させていた。
「ゼェロォラァアアア!!!」
「ラァルゥフゥルゥウウウ!!!」
互いの名前を叫び合うこの決戦に、もう余計な策略も計算も必要ない。
互いが互いに出し切れる全ての力を相手にぶつけ、求められることは一つのみ――
――目の前の"最強の敵"に勝利すること。
ラルフルとゼロラの頭には、もうそのことしか考えられていなかった。
「ハアァッ!!」
「オラァッ!!」
ドガァアア―― バギィイイ――
ヒビの入った空間で行われる、最高峰の戦い――
パワーもテクニックもスピードも、そして――"気持ち"も。
それら全てを乗せた互いの攻撃が、一瞬の息つく暇もなく、何度も行われる。
ラルフルはその気持ちを昂らせながらも、落ち着いてゼロラの攻撃に反応する。
かつて【慈愛の勇者】が宿した<白色のオーラ>で手に入れた、冷静な判断力――
その力をいかんなく発揮し、ゼロラへ挑む。
ゼロラはラルフルの実力に心を躍らせ、思うがままにラルフルとの戦いに身を投じる。
【伝説の魔王】だった頃に宿した<黒色のオーラ>で取り戻した、かつての力――
その力を最大限に振るい、ラルフルへと挑む。
「ハァ、ハァ……! そろそろでしょうか……!」
「ハァ、ハァ……! ああ。どうやらそうみたいだな……!」
そんな世紀の一戦を繰り広げていたラルフルとゼロラだったが、お互いに限界が近いことを感じ取っていた。
双方ともに理解した上で一呼吸置いた後、最後の攻防を始めようとする――
「オオオオォ!! ラルフルゥウウ!!!」
先に動いたのはゼロラ。
右拳を振り上げ、ラルフル目がけて全力で突進する。
「ハアアアァ!! ゼロラァアア!!!」
それを見たラルフルも、同じように右拳を振り上げる。
そしてそのまま、ゼロラ目がけて全力で突進する。
――二人の拳は、お互いの体が衝突する瞬間に振りぬかれた。
ドガァアアッ!!!
「うぐぅううう!!??」
先に突き刺さったのは、ゼロラの拳。
ゼロラの拳がラルフルの眉間に完全に入る。
苦悶の声を上げながら、ラルフルの体が大きく下がる。
ゼロラとラルフルの体格差、初動をとったゼロラ。
それがこの一撃の決め手となった――
「――ふんぐぅうう!!!」
ズザザザァ!!
――だが、ラルフルはまだ終わらない。
両足で踏ん張り、足を地面に滑らせながら、ゼロラの拳に必死に耐える。
ラルフルはゼロラの拳が放たれる寸前、『間に合わない』ことを冷静に判断し、耐えきる方向にシフトしていた。
体ごと大きく後逸するが、それでもラルフルはまだ倒れない――
「くぅ……くそぉ……! 本当に……どこまで強くなるんだ……!?」
完全に拳を振りぬいたゼロラの口から、苦悶の声が漏れる。
――そして、ゼロラの膝から力が抜ける。
このレイキースが起こした騒動で、最初に戦ったシシバから受けたダメージ――
そのダメージはゼロラから抜けきっておらず――
――先にゼロラの体が、限界を迎えた。
「ゼロラァアアアア!!!」
ゼロラの拳を耐え抜いたラルフルは、今度は自らの右拳をゼロラに叩きつける。
バギャァアアア!!
激しい衝突音と共に、その右拳がゼロラのこめかみへと突き刺さる。
今度こそ、完全に決める。
今度こそ、目の前の人を倒す。
今度こそ、憧れの存在を超える――
その思いを一心に拳に乗せ、ラルフルはゼロラの体を――
――ズザァアアッ!!
――吹き飛ばした。
ゼロラの体は倒れ、地面を激しく滑りながら吹き飛んでいく――
――シュウウゥ
――そしてゼロラの体から、<黒色のオーラ>は消えていった。
「ハァ……ハァ……。ううぅ……」
ゼロラから<黒色のオーラ>が消えた後、ラルフルも後ろ向きに倒れ込んだ。
――シュウウゥ
――そしてラルフルの体からも、<白色のオーラ>は消えていった。
ラルフルの体も、すでに限界に達してはいた。
二人のオーラが消えたことで、この決戦は終わった。
これまで異常な力のぶつかり合いで引き起こされていた瓦礫の浮遊も、空間のヒビも、元に戻って行った――
「ひ……引き分け……ですか……?」
過剰な肉体への負荷で動かなくなったラルフルは、仰向けのままゼロラへと語り掛けた。
倒れたのはほぼ同時。お互いにもう戦う気力が残っていないことは、消えていったそれぞれのオーラからも分かる。
――だが、ラルフルの言葉を聞いたゼロラは、この戦いに勝利したのがどちらかを素直に認めた。
最後の一撃を決めたのは、ラルフル。
先に倒れたのは、ゼロラ。
先にオーラが消えたのも、ゼロラ。
この状況見て、どちらが勝ったのかなど、考えるまでもない――
「……いいや、お前の勝ちだ、ラルフル。お前は……俺を超えたんだ……」
「オラァアアアア!!!」
ルクガイア城の屋上で、ラルフルとゼロラの最終決戦は続いていた。
その戦いは空間そのものに影響を与え、人が立ち入れない領域へと達していた。
ラルフルの纏う<白色のオーラ>とゼロラの纏う<黒色のオーラ>の衝突――
二つの力が周囲に及ぼした影響は、最早人を超えるどころか、神の領域に達していると言える程であった。
この戦いで生じた瓦礫は宙に浮かび、空間そのものにヒビが入る。
あまりに大きすぎる二つの力の衝突――
しかもその力は、魔力が一切混ざっていない、純粋な人同士の力――
魔力を失った元魔法使い、ラルフル。
魔力を失った元魔王、ゼロラ。
二人の"純粋な人間の力"が、かつて行われた伝説の戦い――"勇者と魔王の戦い"を顕現させていた。
「ゼェロォラァアアア!!!」
「ラァルゥフゥルゥウウウ!!!」
互いの名前を叫び合うこの決戦に、もう余計な策略も計算も必要ない。
互いが互いに出し切れる全ての力を相手にぶつけ、求められることは一つのみ――
――目の前の"最強の敵"に勝利すること。
ラルフルとゼロラの頭には、もうそのことしか考えられていなかった。
「ハアァッ!!」
「オラァッ!!」
ドガァアア―― バギィイイ――
ヒビの入った空間で行われる、最高峰の戦い――
パワーもテクニックもスピードも、そして――"気持ち"も。
それら全てを乗せた互いの攻撃が、一瞬の息つく暇もなく、何度も行われる。
ラルフルはその気持ちを昂らせながらも、落ち着いてゼロラの攻撃に反応する。
かつて【慈愛の勇者】が宿した<白色のオーラ>で手に入れた、冷静な判断力――
その力をいかんなく発揮し、ゼロラへ挑む。
ゼロラはラルフルの実力に心を躍らせ、思うがままにラルフルとの戦いに身を投じる。
【伝説の魔王】だった頃に宿した<黒色のオーラ>で取り戻した、かつての力――
その力を最大限に振るい、ラルフルへと挑む。
「ハァ、ハァ……! そろそろでしょうか……!」
「ハァ、ハァ……! ああ。どうやらそうみたいだな……!」
そんな世紀の一戦を繰り広げていたラルフルとゼロラだったが、お互いに限界が近いことを感じ取っていた。
双方ともに理解した上で一呼吸置いた後、最後の攻防を始めようとする――
「オオオオォ!! ラルフルゥウウ!!!」
先に動いたのはゼロラ。
右拳を振り上げ、ラルフル目がけて全力で突進する。
「ハアアアァ!! ゼロラァアア!!!」
それを見たラルフルも、同じように右拳を振り上げる。
そしてそのまま、ゼロラ目がけて全力で突進する。
――二人の拳は、お互いの体が衝突する瞬間に振りぬかれた。
ドガァアアッ!!!
「うぐぅううう!!??」
先に突き刺さったのは、ゼロラの拳。
ゼロラの拳がラルフルの眉間に完全に入る。
苦悶の声を上げながら、ラルフルの体が大きく下がる。
ゼロラとラルフルの体格差、初動をとったゼロラ。
それがこの一撃の決め手となった――
「――ふんぐぅうう!!!」
ズザザザァ!!
――だが、ラルフルはまだ終わらない。
両足で踏ん張り、足を地面に滑らせながら、ゼロラの拳に必死に耐える。
ラルフルはゼロラの拳が放たれる寸前、『間に合わない』ことを冷静に判断し、耐えきる方向にシフトしていた。
体ごと大きく後逸するが、それでもラルフルはまだ倒れない――
「くぅ……くそぉ……! 本当に……どこまで強くなるんだ……!?」
完全に拳を振りぬいたゼロラの口から、苦悶の声が漏れる。
――そして、ゼロラの膝から力が抜ける。
このレイキースが起こした騒動で、最初に戦ったシシバから受けたダメージ――
そのダメージはゼロラから抜けきっておらず――
――先にゼロラの体が、限界を迎えた。
「ゼロラァアアアア!!!」
ゼロラの拳を耐え抜いたラルフルは、今度は自らの右拳をゼロラに叩きつける。
バギャァアアア!!
激しい衝突音と共に、その右拳がゼロラのこめかみへと突き刺さる。
今度こそ、完全に決める。
今度こそ、目の前の人を倒す。
今度こそ、憧れの存在を超える――
その思いを一心に拳に乗せ、ラルフルはゼロラの体を――
――ズザァアアッ!!
――吹き飛ばした。
ゼロラの体は倒れ、地面を激しく滑りながら吹き飛んでいく――
――シュウウゥ
――そしてゼロラの体から、<黒色のオーラ>は消えていった。
「ハァ……ハァ……。ううぅ……」
ゼロラから<黒色のオーラ>が消えた後、ラルフルも後ろ向きに倒れ込んだ。
――シュウウゥ
――そしてラルフルの体からも、<白色のオーラ>は消えていった。
ラルフルの体も、すでに限界に達してはいた。
二人のオーラが消えたことで、この決戦は終わった。
これまで異常な力のぶつかり合いで引き起こされていた瓦礫の浮遊も、空間のヒビも、元に戻って行った――
「ひ……引き分け……ですか……?」
過剰な肉体への負荷で動かなくなったラルフルは、仰向けのままゼロラへと語り掛けた。
倒れたのはほぼ同時。お互いにもう戦う気力が残っていないことは、消えていったそれぞれのオーラからも分かる。
――だが、ラルフルの言葉を聞いたゼロラは、この戦いに勝利したのがどちらかを素直に認めた。
最後の一撃を決めたのは、ラルフル。
先に倒れたのは、ゼロラ。
先にオーラが消えたのも、ゼロラ。
この状況見て、どちらが勝ったのかなど、考えるまでもない――
「……いいや、お前の勝ちだ、ラルフル。お前は……俺を超えたんだ……」
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