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第28章 勇者が誘う、最後の舞台
第428話 思いを伝えるために
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「この"壁周り"も、随分と変わったな」
「そうですね。私が最初にゼロラさんに連れられてきた時は、ビクビク震えてたのに……。なんだか、あの時が懐かしいですね」
俺とマカロンは二人で"壁周り"を散策していた。
二人で最初にここを訪れたのは、チャン老師の元を尋ねた時か。
本当にあの時とは全然違うな。
決して贅沢とは言えないが、人々の生活が改善されているのがよく分かる。
建物の修繕も進んでおり、ゴミを漁る子供ももういない。
住人達にも職が行き渡り、少しずつ活気が見え始めている。
「こういう場面を見ると、ゼロラさんが頑張った甲斐がありましたね」
「まあ、悪い気はしないな」
俺とマカロンの間で交わされる、他愛ない会話。
周囲の人々も、俺達の話は聞いていないようだ。
こういう時こそ、告白するチャンスだ。
何気ない話の中で思いを伝える――
――難しい! 気まずい!
よく考えたら、俺は自分から"告白したこと"が一度もない。
そもそも、"告白された"のも、ユメからだけだ!
告白って、こんなに難しいものだったのか……。
「くそっ……。今がチャンスだってのに――」
「え? 何がチャンスなんです?」
「それはだね、マカロン。君も大体察しがついている通りさ」
俺がふと独り言を口にすると、マカロンに聞こえてしまっていたようだ。
おまけにリョウまで割り込んできて――
「――って、おい!? リョウ! なんでお前もここにいるんだよ!?」
「リョ、リョウさん!? いつの間に!?」
「二人の仲を見届けに来たのさ。ボクにもそれぐらいの権利はあると思わないかな?」
もはや恒例にも思える、リョウの突然の参上。
こいつ……俺がマカロンに告白しようとしてることを理解して、デバガメしに来たな……。
「リョウさん……。いきなり首を突っ込んできて、そういうことを言うものですか?」
「いいじゃないか。ボク達の仲だよ? それに、コソコソ隠れてやるのは、ボクの主義じゃない」
相変わらず、自分勝手な奴だ。
ロギウスとの婚約が決まったというのに、こいつの自由奔放さは変わらない。
こいつがこの国の王妃になるのか……。
つくづく思うが、この国は大丈夫なのか?
まあ……ロギウスが責任もって、こいつの面倒を見てもらうことを祈るばかりだ。
――すでに制御できていないが。
「あ、あの……ゼロラさん。私も何となく思ってたのですが、もしかして本当に私に……?」
マカロンは顔を赤らめながら、俺へと目配せする。
見られているこちらが恥ずかしい。
ユメが俺に告白した時も、こんな感じだったな――
「ゼロラ殿。ここで言わなきゃ、元魔王の名が廃るよ。ロギウス殿下の婚約者命令だ。さあ! 言っちゃおう!」
「ここでそんな権限を使うな……」
リョウも盛大に俺を煽って来るが、言っていることには一理ある。
マカロンが俺の気持ちを理解した上で、俺の答えを待ってくれているんだ。
ユメに告白された時とは違い、今度は俺の方から告白を――
「――あれ? なんだか人混みができてるね?」
――俺が心を決めようとしていた時、リョウが少し離れたところに目を向けた。
何やら掲示板のようなものが立てられ、人々はそれを見ているようだが――
「おいおい……。この話、本当かよ……?」
「これが本当なら……相当ヤバイ話だぞ……」
「でも、勇者レイキース様の話だし……」
掲示板を見ている住人達の様子は、どこかおかしい。
張られている記事の内容に動揺し、何かを恐れているようだが――
気になった俺も、遠目でその記事を見てみた――
『【零の修羅】ゼロラの正体は、【伝説の魔王】ジョウイン』
『ルクガイア王国の改革は、魔王の陰謀だった』
『"魔王の娘"と共に、ルクガイア王国を支配する計画の実態』
『今こそ【栄光の勇者】レイキースと共に、元の正しき道へ戻る時!』
「な、なんだこれは……?」
そこに書かれていたのは、俺の正体を暴露する記事。
住人達はこれを見て、激しく狼狽えていたのだ。
「な、なんですかこれは!? なんでゼロラさんのことを――」
「この記事……。書いたのはまさか……レイキースか!?」
マカロンとリョウも記事を見て困惑している。
そんな中でも必死に記事に目を通し、事の真相を探ろうとしてくれている。
俺の正体を知る仲間に、こんなことをする奴がいるとは思えない。
俺を下げ、レイキースを持ち上げるような記事の内容――
やはりこの記事を書いたのは、レイキースなのか!?
だが、奴は俺の正体を知らないはず。
一体、どうやってこの事実を――
「おーい! みんなー! 向こうでオークが"魔王の娘"を匿ってるぞー!」
「早く追い出すんだー! このままじゃ、魔王に滅ぼされるぞー!」
さらにそこへ火に油を注ぐように、駆け付けた別の人間が知らせにやってきた。
見たところ、ここの住人ではない。
だが、そんなことは関係なしに"壁周り"の住人達はその言葉に反応し、指さした方角へと走り出した。
――その方角は、ミライがいる場所だ。
「ミ、ミライ!」
「ゼロラさん!?」
「ゼロラ殿!?」
ミライの身に危険が迫っている。
いてもたってもいられなくなった俺は、マカロンとリョウのことも忘れて、一目散に駆けだした――
「そうですね。私が最初にゼロラさんに連れられてきた時は、ビクビク震えてたのに……。なんだか、あの時が懐かしいですね」
俺とマカロンは二人で"壁周り"を散策していた。
二人で最初にここを訪れたのは、チャン老師の元を尋ねた時か。
本当にあの時とは全然違うな。
決して贅沢とは言えないが、人々の生活が改善されているのがよく分かる。
建物の修繕も進んでおり、ゴミを漁る子供ももういない。
住人達にも職が行き渡り、少しずつ活気が見え始めている。
「こういう場面を見ると、ゼロラさんが頑張った甲斐がありましたね」
「まあ、悪い気はしないな」
俺とマカロンの間で交わされる、他愛ない会話。
周囲の人々も、俺達の話は聞いていないようだ。
こういう時こそ、告白するチャンスだ。
何気ない話の中で思いを伝える――
――難しい! 気まずい!
よく考えたら、俺は自分から"告白したこと"が一度もない。
そもそも、"告白された"のも、ユメからだけだ!
告白って、こんなに難しいものだったのか……。
「くそっ……。今がチャンスだってのに――」
「え? 何がチャンスなんです?」
「それはだね、マカロン。君も大体察しがついている通りさ」
俺がふと独り言を口にすると、マカロンに聞こえてしまっていたようだ。
おまけにリョウまで割り込んできて――
「――って、おい!? リョウ! なんでお前もここにいるんだよ!?」
「リョ、リョウさん!? いつの間に!?」
「二人の仲を見届けに来たのさ。ボクにもそれぐらいの権利はあると思わないかな?」
もはや恒例にも思える、リョウの突然の参上。
こいつ……俺がマカロンに告白しようとしてることを理解して、デバガメしに来たな……。
「リョウさん……。いきなり首を突っ込んできて、そういうことを言うものですか?」
「いいじゃないか。ボク達の仲だよ? それに、コソコソ隠れてやるのは、ボクの主義じゃない」
相変わらず、自分勝手な奴だ。
ロギウスとの婚約が決まったというのに、こいつの自由奔放さは変わらない。
こいつがこの国の王妃になるのか……。
つくづく思うが、この国は大丈夫なのか?
まあ……ロギウスが責任もって、こいつの面倒を見てもらうことを祈るばかりだ。
――すでに制御できていないが。
「あ、あの……ゼロラさん。私も何となく思ってたのですが、もしかして本当に私に……?」
マカロンは顔を赤らめながら、俺へと目配せする。
見られているこちらが恥ずかしい。
ユメが俺に告白した時も、こんな感じだったな――
「ゼロラ殿。ここで言わなきゃ、元魔王の名が廃るよ。ロギウス殿下の婚約者命令だ。さあ! 言っちゃおう!」
「ここでそんな権限を使うな……」
リョウも盛大に俺を煽って来るが、言っていることには一理ある。
マカロンが俺の気持ちを理解した上で、俺の答えを待ってくれているんだ。
ユメに告白された時とは違い、今度は俺の方から告白を――
「――あれ? なんだか人混みができてるね?」
――俺が心を決めようとしていた時、リョウが少し離れたところに目を向けた。
何やら掲示板のようなものが立てられ、人々はそれを見ているようだが――
「おいおい……。この話、本当かよ……?」
「これが本当なら……相当ヤバイ話だぞ……」
「でも、勇者レイキース様の話だし……」
掲示板を見ている住人達の様子は、どこかおかしい。
張られている記事の内容に動揺し、何かを恐れているようだが――
気になった俺も、遠目でその記事を見てみた――
『【零の修羅】ゼロラの正体は、【伝説の魔王】ジョウイン』
『ルクガイア王国の改革は、魔王の陰謀だった』
『"魔王の娘"と共に、ルクガイア王国を支配する計画の実態』
『今こそ【栄光の勇者】レイキースと共に、元の正しき道へ戻る時!』
「な、なんだこれは……?」
そこに書かれていたのは、俺の正体を暴露する記事。
住人達はこれを見て、激しく狼狽えていたのだ。
「な、なんですかこれは!? なんでゼロラさんのことを――」
「この記事……。書いたのはまさか……レイキースか!?」
マカロンとリョウも記事を見て困惑している。
そんな中でも必死に記事に目を通し、事の真相を探ろうとしてくれている。
俺の正体を知る仲間に、こんなことをする奴がいるとは思えない。
俺を下げ、レイキースを持ち上げるような記事の内容――
やはりこの記事を書いたのは、レイキースなのか!?
だが、奴は俺の正体を知らないはず。
一体、どうやってこの事実を――
「おーい! みんなー! 向こうでオークが"魔王の娘"を匿ってるぞー!」
「早く追い出すんだー! このままじゃ、魔王に滅ぼされるぞー!」
さらにそこへ火に油を注ぐように、駆け付けた別の人間が知らせにやってきた。
見たところ、ここの住人ではない。
だが、そんなことは関係なしに"壁周り"の住人達はその言葉に反応し、指さした方角へと走り出した。
――その方角は、ミライがいる場所だ。
「ミ、ミライ!」
「ゼロラさん!?」
「ゼロラ殿!?」
ミライの身に危険が迫っている。
いてもたってもいられなくなった俺は、マカロンとリョウのことも忘れて、一目散に駆けだした――
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