記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第28章 勇者が誘う、最後の舞台

第421話 夢から目覚めて

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「――ラルフル! マカロンさん!」
「ねー! 起きてよー! 起きてってー!」
「……あ、あれ? ここは自分の部屋ですか?」

 ――自分はミリアさんとミライちゃんの声で目を覚ましました。
 いつの間に眠っていたのでしょうか……?
 何か、大切なことが起こっていたような――

「う、う~ん……。あれ? 私、寝てたの? いつの間に――」
「良かった! 二人とも目が覚めたのね!」
「わたしがミリアおねえちゃんのお花にふれたら、光がドバーって出てきて、ラルフルにいちゃんとマカロンおねえちゃんが寝ちゃったのー! だ、大丈夫ー!?」

 自分の横で同じように眠っていたお姉ちゃんも目を覚ましました。
 そうでした。ミライちゃんがミリアさんの清白蓮華のしおりに触れた時、まばゆい光が自分とお姉ちゃんを包んだのでした。
 ミリアさんもミライちゃんも心配してくれていますが、自分の体に異常はないようです。

「お姉ちゃん、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫。ラルフルも大丈夫そうね」

 自分とお姉ちゃんはお互いに状況を確認しますが、何も問題はありません。

 ――ただ、自分とお姉ちゃんは"何か大切な思い"を託されたような気がします。
 お姉ちゃんもどこか不思議そうに首をかしげ、どこか腑に落ちていない様子がうかがえます。

 まるで、夢を見ていたような―― 夢の中で受け取ったような――
 そんな不思議な感覚が、自分の中に残っています。

 ただそれは、決して悪いものではありません。
 むしろ思い出せないことがもどかしい、どこか強い愛情のこもった思い――

 ――自分の中に、そんな思いが託されています。





「……ん? どうしたんだ、お前達? 何か変な夢でも見た後のような顔をしてるが……?」
「パパー!」

 そんな少し困惑している自分達四人の元に、ゼロラさんがやってきました。
 うーん……。ゼロラさんに深く関わる話だったと思うのですが、やっぱり思い出せません。

「すみません、ゼロラさん。少し変な夢を見ていたような気がするのですが、思い出せなくて……」
「本当に変な夢を見てたのか……。まあいい。それよりも、ミライとマカロンにちょっと用事があるんだが……」
「え? 私とミライちゃんに?」

 ゼロラさんは頬をかいて、どこか恥ずかしそうにしています。
 こんなゼロラさんの姿は珍しいですね。



 この様子―― お姉ちゃんとミライちゃんに用事――
 これはひょっとすると、ひょっとしますね――



「お姉ちゃん、ミライちゃん。自分とミリアさんのことは構いませんので、二人でゼロラさんと出かけてきてください」
「そうですよ。アタシとラルフルがいても、邪魔でしょうし」
「ふ、二人とも……!? わ、わざとやってない!?」

 ミリアさんも察しがついたようです。
 お姉ちゃんに『どうぞ、どうぞ』と機会を譲ります。

「いこー! マカロンおねえちゃーん! パパと三人でお出かけー! わはーい!」
「ちょ、ちょっと!? ミライちゃん!? 腕を引っ張らないで!?」

 お姉ちゃんはミライちゃんによって、有無を言わさず強引に連れ出されました。
 でも、本心から嫌がっているわけではないようです――

「すまないな、マカロン。俺もできれば、他の場所で話をしたい」
「は、はひぃ……」

 ――どちらかというと、恥ずかしがってます。
 お姉ちゃんもゼロラさんの要件に、察しがついているのでしょう。
 ミライちゃんに引っ張られながら、お姉ちゃんは先に部屋の外へと出ていきました。

「あー……その……ラルフルとミリアもすまない。お前達二人がいると、どうしても話しづらい内容で――」
「大丈夫ですよ、ゼロラさん。それよりも……頑張ってくださいね!」
「アタシも応援しています!」

 部屋に残ったゼロラさんに、自分とミリアさんはガッツポーズで応援します。

「……流石にバレてるか。改まった話は、しっかりと結論が出てからさせてもらう。ありがとよ」

 そう言ってゼロラさんも二人の後を追うように、部屋を出ていきました。



 ゼロラさんはお姉ちゃんに告白するつもりです。
 これは自分もずっと望んでいたことです。

 ゼロラさんにはユメ様という奥さんがいましたが、お姉ちゃんが結ばれても、問題ないと思います。
 娘のミライちゃんも、お姉ちゃんにはかなり懐いてますからね。





 ――不思議ですね。
 ユメ様の立場を考えると複雑な気がするはずなのに、そんな気が全くしません。

 一体、これはどういうことなのでしょうか?





「マカロンさんもミライちゃんも、いなくなっちゃったわね」
「そうですね。なんだか、急に静かになりました」

 自分の内にあるモヤモヤした気持ちが気になりますが、ひとまず置いておきましょう。
 なんとなくですが、今は気にしても仕方ない気がします。

「そういえば、ミリアさんと二人きりって久しぶりですね」
「改革が成立してからアタシは仕事に追われてたし、ラルフルもミライちゃんの世話で大変だったからね」

 あの日から色々なことが起こり過ぎて、二人っきりの時間というものが作れませんでした。
 久しぶりに、ミリアさんと二人っきりですか――

「少し散歩にでも出かけませんか?」
「そうね。久しぶりに二人でのんびり話でもしながら、歩こうかしら」

 ミリアさんもずっと忙しかった身です。
 たまにはこういうのんびりした時間も必要でしょう。



「――あっ、そうですね。ミリアさんには、"あの人"に会ってもらいましょう」
「"あの人"? 誰のこと?」

 自分とミリアさんは恋中です。
 丁度様子も気になっていましたし、あの人に会いに行きましょう。



「ニナーナさんという人です。自分のお母さん――のような人です」
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