記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第24章 常なる陰が夢見た未来

第361話 【正義が生んだ怪物】③

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 俺が小人に見えてしまう程、巨大化した<ミラークイーン>。
 ミライももう、小細工抜きで挑むつもりらしい。
 自らが持つ魔力の全てを<ミラークイーン>へと注ぎ込み、完全なパワー勝負で決着をつけるつもりだ。

「行くゾォオオ!! 死ねェエエ!! 勇者ト同じ――人間ガァアア!!」

 耳を割く悲鳴のような怒号を上げ、ミライが最後の勝負を仕掛けてくる。
 俺を簡単に握りつぶせそうな<ミラークイーン>の両腕で、ひたすら俺へと殴り掛かる。

「俺を倒して何になる? お前の父や母も、本当にお前がこんなことをするのを望むのか?」
「アア、望むニ決まってイル! 人間へノ! 勇者へノ! 復讐コソが、ワタシの存在理由ダ! 父も母モ――ワタシを愛してクレタ! ダカラ――絶対ニ望んでイル!!」

 ミライは自らが愛されていたことは理解している。
 そんな愛してくれた両親の姿を覚えているからこそ、このような凶行に走っている。
 俺の声も届かぬほど怒り狂い、ひたすらにその悪夢で世界を覆いつくそうとしている。

「止まれ、ミライ。お前の両親は、決してこんなことを望んだりは――」
「黙れェエ! 黙レ黙レ黙レ黙レェエエ!! 貴様に何ガ分かル!? 勇者レイキースと同ジ――人間風情ガァアア!!」

 ミライは<ミラークイーン>の両腕で、なおも俺を払いのけようとする。
 邪魔な虫を追い払うかの如く。その目で俺への怒りをぶつけながら――

 俺も<ミラークイーン>の攻撃を回避し続ける。
 空中での動きにもだいぶ慣れた。単調な動きのみになったため、躱す分には問題ない。

 それでも、敵は強大だ。あまりにもサイズが違い過ぎる。
 <ミラークイーン>が振るう拳の風圧は、完全に躱したはずの俺の体さえも揺らす。
 この拳を弾くことは、流石にできない。
 攻撃を加えるなら、胸元にいるミライ本体に――





 ――ガシィイ!

「し、しまった!?」
「キャハハハ! 捕まエタァア! 捕まえタゾォオオ!!」

 これまで握られていた<ミラークイーン>の拳が開かれ、俺の体へと掴みかかる。
 拳の風圧に揺らされていたため、俺の体は開かれた右手に反応できず、その中へと収まる――

「サア! 終わりダ! コノママ貴様を握りつブシ――アノ世へ送ってヤルゾォオオ!!」
「んぐぅ……!? ぐうううぅ……!」

 <ミラークイーン>の右手に力が籠められ、俺の体が締め付けられる。
 ミシミシと音をたて、その巨大な右手で俺を締め殺そうとする――

「と、止まれ……止まってくれ……!」

 額に汗をにじませ、俺も必死の力で抵抗する。
 だが、とてもではないが歯が立たない。
 この力に対抗できるものがあるとすれば、<灰色のオーラ>ぐらいだが、あれは俺の意志で発現できるものではない。



 ――それでもやってみるしかない。
 サイバラやジフウと全力でぶつかり合った時のような"純粋な闘志"を、この子相手に湧かせることは難しい。
 だが、あの<灰色のオーラ>が俺の感情によって発現するのならば、今この子に対して俺が抱いている感情を強く念じてみる。



 『救いたい。謝りたい』

 その感情を――



「オオオォ――ウオオオオォオ!!」

 湧き上がるその感情と共に、俺は全身に力を込める。
 腹の底から吠えるように雄たけびを上げ、【正義が生んだ怪物】となってしまった、ミライへの感情を露にする。

 そして、発現した――



 ――バキィインッ!



「バ、馬鹿ナ!? ワタシの全力ヲ――全開にシタ、<ミラークイーン>のパワーを!?」

 俺は両腕を広げ、<ミラークイーン>の右手の拘束から逃れる。
 そして、俺の体からはオーラが滾っている。



 だが、そのオーラは以前俺が使っていた<灰色のオーラ>ではない。



 <黒色のオーラ>――
 俺の身に纏われたのは、黒一色のオーラだった。

「そうか……。これなら、ミライを止められる……!」

 <黒色のオーラ>はこの俺の体に馴染む。
 <灰色のオーラ>とは違う感覚だが、今のミライを止めるのに、相応しい力が出せそうだ。



 この俺が――"本来持っていた力"なら――



「今度こそ終わりだ……ミライ!」

 俺は再び宙を蹴り、<ミラークイーン>の胸元に収まっているミライへと突き進む。
 当のミライ本人は驚きのあまり、固まっている。



 だが、その"驚き"の理由は、"<ミラークイーン>を破られた"ことではない――



「ナ……ナゼだ……? ナゼ貴様が……そのオーラ……?」

 ミライが驚いているのは、"俺が<黒色のオーラ>を纏っている"ことに対してだ。
 その理由は後で教えてやろう。
 今はとにかく――ミライを止める!


 バチィイイイ!!


 俺がミライへと拳を振り下ろすが、強力なバリアによって防がれる。
 だが、<黒色のオーラ>を纏った俺の拳ならば貫ける感触だ。
 ミライは依然として、目を丸くしたまま固まっている。
 <ミラークイーン>を使って、守りに入ろうともしていない。



 そして、ミライの口から漏れた驚愕の叫びと共に、バリアが砕かれる――





「ナゼ……貴様が父ト同じ――<黒色のオーラ>を纏ッテいるノダァアア!!??」

 パリィイイン――
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