記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第22章 改革の歌

第318話 決戦・【龍殺しの狂龍】④

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「仕方ねえ……てめぇ用に用意しておいた、とっておきを見せてやるよぉお!!」

 拮抗となった戦況でジフウが打った次なる一手――
 両腕を平行に構え、手の平を外側に向ける。

 それは"円卓会議"の際に、ジフウがラルフルと戦った時に見せた構え――

「バクトの屋敷で俺がやったことの真似事か?」
「まあな。技術を要する技なら俺にも真似できる……!」

 ――そして、ゼロラとジフウがバクト公爵邸で戦った時にゼロラが見せた、<黒蛇の右>を破るための構えの模写。

「破ってみろよ……この"盾と矛"をよぉお!!」

 両手を平行に構えたまま、ジフウはゼロラに突進する。
 ジフウが構えた腕が、カウンター用の"盾"であることはゼロラにも理解できた。

 だからゼロラはジフウの足を狙う――



 ――ガァンッ!

「な!? キックだと!?」
「ウハハハ! この蹴りこそが、俺の"矛"だぁあ!!」

 ゼロラがジフウの足にキックを放とうとしたのと同時に、ジフウもキックで応戦する。
 そのキックでゼロラの攻撃を捌きながら、腕はゼロラと密着させて投げ技に入る――


 ブォオン―― ドガァン!

「うぐっ!? く、くそ……腕と脚で役目を完全に分けてきたか……!」

 ジフウに投げられたゼロラの体は宙を舞い、地面へと叩きつけられる。
 平行に構えられた腕からの投げ技。足技による打撃攻撃。

「野郎ぉお!!」
「甘えんだよぉお!!」

 今度はゼロラからジフウへ仕掛けるも、盾となった両腕に阻まれ投げ飛ばされる。

 ゼロラから仕掛ければ投げ飛ばされる。
 だが待ちに移っても、ジフウは足技で攻め立てる。

 テクニックに秀でたジフウだからこそできる芸当――
 ラルフル相手に使った時は未完成だったが、今ここに完成版の"最強の矛と盾"を持ったジフウ。

 それは龍の鱗と、龍の爪のように――

「てめぇはやっぱり……本当の意味での"龍"だよ」
「お褒めにあずかり光栄だなぁあ! ウーハハハ!」

 ゼロラの言葉にジフウは狂ったように高笑いをする。
 そんなジフウを見てゼロラは攻め方を再度熟考した。

 腕を守りに徹させたジフウに、単純な力技での勝負は分が悪い。
 足を狙おうにも先程の流れを見る限り、ジフウは相当足技を鍛えなおしている。





 ――それでもゼロラにはまだ攻め手はあった。

「ジィフゥウゥウウ!!」

 ゼロラはジフウへと再度ラッシュを繰り広げる。

「だからよぉお! 俺に単純な打撃は―― ッ!!?」

 すぐさまゼロラのラッシュを捌こうとするジフウだったが、その攻撃の切り替えし速度はこれまでの比ではない。
 ゼロラはパワー重視の戦い方から、スピード重視の戦い方へと移行した。
 しかもそのスピードは、ジフウのテクニックをもってしても捌ききれないほどに――

「く、くそ! てめぇこそ随分と変幻自在に戦いやがる!」
「俺にてめぇほどのテクニックはないが、戦い方を切り替えるのは慣れてるからな!」

 魔法を使えないゼロラにとって、<灰色のオーラ>による身体能力強化はジフウ以上に効果が大きかった。
 ゼロラがこれまでに経験で得た様々なスタイルの効果を、<灰色のオーラ>によって最大限まで引き出すことができた。

「ち、畜生! 捌ききれねえ……!」

 ジフウの周囲を旋回しながら、ゼロラの怒涛のラッシュが炸裂する。
 腕を使った投げ技も、足を使った蹴り技も、猛スピードで動く今のゼロラの攻撃には反応しきれない。

 次第にジフウは追い詰められ始めた――





「ウハハハ……ウハハハ! ウッハッハッハッハッ!!」

 ――その境地が、ジフウを更なるステージへと移行させる。




 ボゴォオン!!





「ウグァ!!??」

 ゼロラの体は突如ジフウの放ったパンチで大きく吹き飛ばされる。
 後ろにあった家屋をも突き破り、ゼロラの体は王都の正門前広場へと投げ出された。



 そんなゼロラの姿を追うように、ジフウは大きく穴の開いた家屋を通って、ゆっくりと歩み寄る――



 その右手に黒い風魔法を、左手に青い風魔法を。
 常時展開させた状態で――

「楽しいな~! こんなに楽しいのは生まれて初めてかもな~! さあ、ゼロラ……! もっともっと……楽しもうぜぇええ!!!」
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