上 下
317 / 476
第22章 改革の歌

第317話 決戦・【龍殺しの狂龍】③

しおりを挟む
 新たなフィールドへと移動した、ゼロラとジフウ。
 まずはジフウが下に敷き詰められた砂利を左手ですくい上げた。

「くたばれ! ゼロラァアア!!」

 バシュゥン! バシュゥン!

「うぐぅ!? こ、これは……!?」

 ゼロラの肩に数発の弾丸のようなものが突き刺さる。

 それはジフウが放った、<砂利指弾>――
 ジフウは左手に握った砂利を親指ではじき出し、銃弾のようにして飛ばしてきたのだ。
 その速さも威力も、本物の銃弾と同等かそれ以上――

「まだまだ行くぞぉお!! ダラダラダラァアア!!」

 ジフウは右手でも砂利を握りしめ、両手で<砂利指弾>をマシンガンのように連射する。
 <鉄の防御>で身を固めるゼロラに対して、容赦ない砂利の雨が襲い掛かる。

 国王直轄黒蛇部隊隊長として、王都に詳しかった事――
 <コマンドサンボ>のスタイルを習得する最中で学んだ、戦場を活かした戦闘術――

 一度はゼロラに傾いたかと思われた戦況は、戦場の変化でジフウの手中となった。



「くそぉ……くそがぁああ!!」

 防戦一方だったゼロラは、意を決して守りを解く。
 体をかがめて足元の砂利をすくい、ジフウに対して投げつける。

「チィ! 小賢しい真似を!」

 ジフウは両手の<砂利指弾>で、ゼロラが放った散弾の如き砂利を徹底的に撃ち落とす。





 それに気をとられたのが、ジフウにとっての誤算だった。



「ウオオオォ!!」
「し、しまった!? 砂利は囮か!?」

 ジフウが砂利を掃討している間に、ゼロラは姿勢を低くしてジフウへと襲い掛かる。

「ヌゥン!」
「グヌゥ!?」

 そのままゼロラはジフウを押し倒し、マウントでのパンチラッシュを放つ。
 無慈悲な拳の雨が、ジフウを追い込む。

 ドガッ! バキャン!

「ゴフッ!? な、舐めやがってぇええ!!」

 だがジフウとてそれでは終わらない。
 ゼロラのパンチを受け止めると、体を回転させてゼロラの腕に両足をかける。

「か……関節技……!?」
「ウハハハ! マウントで俺に勝負を挑んだのは間違いだったなぁあ!!」

 得意の関節技に持ち込み、ジフウはゼロラの腕を極めにかかる。
 ミシミシという音を感じながら、ゼロラの体に激痛が走り始める。



 ――それでもゼロラとて負けられない。

「オオオォ……!」
「グッ!? グヌヌヌゥ……!」

 ゼロラの腕を挟み込むジフウの両足を、もう片方の腕使って強引にロックを外しにかかる。
 ゼロラの必死の抵抗に、ジフウの関節技は完全に決まり切らず――



「オラァア!!」
「クソがぁあ!!」

 ――二人は再び切り離された。

「ならば……これでどうだぁあ!?」

 地面を転がりながら、ジフウは再び砂利を掴んで<砂利指弾>を連射する。

「まだだぁああ!!」

 それを見たゼロラは地面を蹴ってジフウの頭上へと飛び上がる。
 そのまま全身を回転させながら放つ浴びせ蹴り――



 ――ドギャン!

「んぐぐぐぅ……!」

 <砂利指弾>のために砂利を握っていたことが災いし、ジフウはゼロラの浴びせ蹴りに対してキャッチで投げ返すことができなかった。
 腕を頭上で交差させてなんとかガードはできたが、膝をついたままだったその足元は、ゼロラの浴びせ蹴りの衝撃で砂利が吹き飛ぶ。

「ゼ……ゼロラァアア!!」
「ジフゥウウ!!」

 ジフウは交差させた腕を払ってゼロラを吹き飛ばし、両手に持った砂利を捨てる。
 そして再び、互いの全力での殴り合いが始まる――

 パンチとキック、そしてガードとキャッチも交えた猛烈な技の攻防。
 【零の修羅】と【龍殺しの狂龍】の二人の戦いはまだ終わらない――
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...