記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
上 下
316 / 476
第22章 改革の歌

第316話 決戦・【龍殺しの狂龍】②

しおりを挟む
「どうしたぁあ!? ゼロラァア!! これで終わるな……終わってくれるなぁあ!! ウーハハハハ!!」

 立ち上がろうとするゼロラの姿を見て、ジフウは高々に笑いながら次を待つ。
 その赤い瞳に宿る狂気の光。戦いへの喜びに震える<青色のオーラ>。

 そこにいるのは、今この決戦を最大限に楽しむ、"狂った龍"の姿だった。

「終わらねえさ……俺にも譲れねえものがある!!」

 立ち上がってジフウを睨むゼロラ。
 ジフウとの決着への喜び。そして自らの背に乗せられた国の未来への思いを表すかの如き、<灰色のオーラ>。

 そこにいるのは、今この決戦に負けられない、"思いを背負った修羅"の姿だった。



「行くぞぉお! ゼロラァアア!!」
「来ぉい! ジフウゥウウ!!」

 ジフウとゼロラ。双方が再び駆け寄り合って衝突する。



 ドガンッ! バギャンッ!

 ゼロラが殴れば、ジフウも殴る。

 ガシンッ! ブオンッ!

 ジフウが掴めば、ゼロラも投げる。

 両者一進一退の攻防が続く――
 ぶつかり合う攻撃の余波は、戦場である王都中央広場の大気さえも振動させる――



「<蛇の予告>! <龍の宣告>!」
「合わせ技か!?」

 ラッシュの最中、ジフウは<蛇の予告>と<龍の宣告>を同時発動させる。
 先程の<青龍の左>でもすぐに立ち上がったゼロラの姿を見て、ジフウはさらなる奥の手を準備し始めた。

「ダラァア!!」
「回し蹴り!?」

 そしてその隙を捉えられぬよう、空いた足でゼロラとの距離を置く。

「行くぞぉお! <蛇龍の双拳>!!」

 準備が完了すると同時に、ジフウは両手を後ろに回してゼロラとの距離を一気に詰める。
 魔幻塔でも使ったジフウ最大威力の大技、<蛇龍の双拳>を――



「舐めるなぁああ!!」

 その技に対して、ゼロラも同じくジフウとの距離を詰める。
 両手を後ろに回し、<蛇龍の双拳>と同じ構えをとりながら――



 ドギャァアオォン!!



 互いの両拳が激しく衝突する。
 その衝撃で二人の下の地面がへこむ。

 本来ならば風魔法を纏ったジフウの方が優勢である。

 だが、結果としてそうはならなかった――

「な!? 俺の<蛇龍の双拳>と互角!?」

 ――威力は互角だった。
 それに驚くジフウと、それを予想していたゼロラの体は互いに大きく弾かれる。

 ゼロラが纏った<灰色のオーラ>は人の力が魔法という領域に至ったことで発現した、魔法とは異なる力――
 その力はゼロラの拳に"魔力ゼロ"でありながら、"魔法と同等"の力を与えていた。
 対するジフウは風魔法により打撃の威力を上げていたが、魔法とは別の力による反応故か、その拳に<青色のオーラ>の力は上乗せされていなかった。

「行くぞこの野郎ォオ!!」

 そしてこの事態を心で理解していたゼロラは、ジフウが驚愕している隙をついて掴みかかる。

「ヌゥウン!!」
「ダグァ!? て、てめぇええ!!」

 ジフウの両肩を掴み、ゼロラが頭突きを連続で叩き込む。
 それに負けじと、ジフウもゼロラの両肩に掴みかかって頭突きでやり返す。

 何度も何度もぶつかり合うお互いの額――
 互いの額が切れ、血が流れだす。
 組みかかりながら互いの体を揺らし、戦場を移動しながら頭突き合戦は繰り広げられる。

 この単純な力任せの勝負の軍配はゼロラに上がっていた。
 少しずつジフウは押され、広場の端へと追いやられる。





 ――もっとも、"広場の端"へと移動するよう仕組んだのはジフウの方だった。

「ダァアウラァアア!!」
「うっ!? 投げか!?」

 ジフウはゼロラに足払いをかけ、自らの体と共に広場の下の段へと投げ飛ばす。

 そこは家屋で囲まれ、砂利が敷き詰められたスペース――
 落下の際に、二人は一度お互いから手を離して構えなおす。

「仕切り直しだ……! この俺をてめぇの力で倒せるもんなら……倒してみやがれぇええ!!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...