記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第22章 改革の歌

第316話 決戦・【龍殺しの狂龍】②

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「どうしたぁあ!? ゼロラァア!! これで終わるな……終わってくれるなぁあ!! ウーハハハハ!!」

 立ち上がろうとするゼロラの姿を見て、ジフウは高々に笑いながら次を待つ。
 その赤い瞳に宿る狂気の光。戦いへの喜びに震える<青色のオーラ>。

 そこにいるのは、今この決戦を最大限に楽しむ、"狂った龍"の姿だった。

「終わらねえさ……俺にも譲れねえものがある!!」

 立ち上がってジフウを睨むゼロラ。
 ジフウとの決着への喜び。そして自らの背に乗せられた国の未来への思いを表すかの如き、<灰色のオーラ>。

 そこにいるのは、今この決戦に負けられない、"思いを背負った修羅"の姿だった。



「行くぞぉお! ゼロラァアア!!」
「来ぉい! ジフウゥウウ!!」

 ジフウとゼロラ。双方が再び駆け寄り合って衝突する。



 ドガンッ! バギャンッ!

 ゼロラが殴れば、ジフウも殴る。

 ガシンッ! ブオンッ!

 ジフウが掴めば、ゼロラも投げる。

 両者一進一退の攻防が続く――
 ぶつかり合う攻撃の余波は、戦場である王都中央広場の大気さえも振動させる――



「<蛇の予告>! <龍の宣告>!」
「合わせ技か!?」

 ラッシュの最中、ジフウは<蛇の予告>と<龍の宣告>を同時発動させる。
 先程の<青龍の左>でもすぐに立ち上がったゼロラの姿を見て、ジフウはさらなる奥の手を準備し始めた。

「ダラァア!!」
「回し蹴り!?」

 そしてその隙を捉えられぬよう、空いた足でゼロラとの距離を置く。

「行くぞぉお! <蛇龍の双拳>!!」

 準備が完了すると同時に、ジフウは両手を後ろに回してゼロラとの距離を一気に詰める。
 魔幻塔でも使ったジフウ最大威力の大技、<蛇龍の双拳>を――



「舐めるなぁああ!!」

 その技に対して、ゼロラも同じくジフウとの距離を詰める。
 両手を後ろに回し、<蛇龍の双拳>と同じ構えをとりながら――



 ドギャァアオォン!!



 互いの両拳が激しく衝突する。
 その衝撃で二人の下の地面がへこむ。

 本来ならば風魔法を纏ったジフウの方が優勢である。

 だが、結果としてそうはならなかった――

「な!? 俺の<蛇龍の双拳>と互角!?」

 ――威力は互角だった。
 それに驚くジフウと、それを予想していたゼロラの体は互いに大きく弾かれる。

 ゼロラが纏った<灰色のオーラ>は人の力が魔法という領域に至ったことで発現した、魔法とは異なる力――
 その力はゼロラの拳に"魔力ゼロ"でありながら、"魔法と同等"の力を与えていた。
 対するジフウは風魔法により打撃の威力を上げていたが、魔法とは別の力による反応故か、その拳に<青色のオーラ>の力は上乗せされていなかった。

「行くぞこの野郎ォオ!!」

 そしてこの事態を心で理解していたゼロラは、ジフウが驚愕している隙をついて掴みかかる。

「ヌゥウン!!」
「ダグァ!? て、てめぇええ!!」

 ジフウの両肩を掴み、ゼロラが頭突きを連続で叩き込む。
 それに負けじと、ジフウもゼロラの両肩に掴みかかって頭突きでやり返す。

 何度も何度もぶつかり合うお互いの額――
 互いの額が切れ、血が流れだす。
 組みかかりながら互いの体を揺らし、戦場を移動しながら頭突き合戦は繰り広げられる。

 この単純な力任せの勝負の軍配はゼロラに上がっていた。
 少しずつジフウは押され、広場の端へと追いやられる。





 ――もっとも、"広場の端"へと移動するよう仕組んだのはジフウの方だった。

「ダァアウラァアア!!」
「うっ!? 投げか!?」

 ジフウはゼロラに足払いをかけ、自らの体と共に広場の下の段へと投げ飛ばす。

 そこは家屋で囲まれ、砂利が敷き詰められたスペース――
 落下の際に、二人は一度お互いから手を離して構えなおす。

「仕切り直しだ……! この俺をてめぇの力で倒せるもんなら……倒してみやがれぇええ!!」
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