記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第22章 改革の歌

第315話 決戦・【龍殺しの狂龍】①

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「グゥ……!」
「チィ……!」

 初手の衝突による衝撃は互角――
 ゼロラとジフウ、それぞれの体は後ろへと下がる。

「オラァア!!」

 そこから先に動いたのはゼロラ。
 ジフウ目がけて<灰色のオーラ>が纏われた拳を振りぬこうとする――

「甘いな! 俺の得意技を忘れたか!?」

 そのゼロラの腕をキャッチして、逆に投げ飛ばそうとするジフウ。

「忘れてねえさ……お前の龍の尾のような、絡めとる手は!!」

 ゼロラもジフウの攻撃を予期していたため、腕をキャッチされたと同時に膝蹴りで追撃を加える。
 それにより、ジフウの投げ技や関節技への移行を防いだ。



 これまでゼロラが<総合格闘>と呼んでいたジフウのスタイル――本来の名を、<コマンドサンボ>。
 ジフウもまた他の黒蛇部隊の隊員と同様、かつて世界中を渡り歩いた中で、この<コマンドサンボ>を自身の最も得意とするスタイルとして定着させていた。
 武器に頼れなくなった時、己が身一つで戦況を打破するための"対人戦"に特化した"軍隊式格闘術"。
 投げ技や関節技を主流とし、相手の打倒よりも制圧を最大の目的としたスタイル――

 ジフウに弟のシシバのような"スピード"はない。同列に称されるサイバラのような"パワー"もない。
 だがジフウには、そんな身体能力をカバーできるほどの"テクニック"があった。

 冷静さを保ちながら、静かに長きに渡る決着への喜びに打ち震える今のジフウ――
 それはゼロラが最初に戦った時とは全く違う、"最強の龍"としての姿があった。



「ウハハハ! それぐらいやってくれねえとなぁあ!! 黒蛇の長であり、龍の名を持つこの俺を! 徹底的に楽しませろ! ゼロラァア!!」

 今度はジフウからも攻めかかる。
 パンチやキックの打撃を主体とするが、その間にフェイントを加えながら掴みかかろうとする。
 それどころか、ゼロラとの攻防の最中にもキャッチによる投げや関節技へのカウンターの機会も狙う。

「本当にとんでもない野郎だ! 一体どれだけ技を鍛えてやがるんだ!?」

 ゼロラも驚愕するほどの完全に本気を出したジフウのテクニック。
 一度の攻防で数多の技を仕掛ける、柔剛入り乱れた連撃――



 それでもゼロラとて負けてはいなかった。
 先の戦いでジフウの動きは把握していた。
 ゼロラがジフウに勝る点――それは"経験"。
 ゼロラは記憶がない故かそれを埋め合わせるかのように、自身でも気づかぬうちにこれまでの戦いの中での経験を、その身に蓄積させていた。

 "ゼロ"だからこそ望む、"プラス"の世界――
 それがゼロラ最大の力だった。

「ドラァア!!」
「うぐぅ!? またシシバの<ジークンドー>のような動きを……! だが!!」

 まずゼロラが仕掛けたのは以前バクト公爵邸で戦った時と同じ、シシバを真似た動き。
 ジフウもそれに対応する心構えはできていた。
 ゼロラの腕を自らの両腕で挟み込み、マウント勝負に持ち込もうとする――



 ――それでも今回は違った。

「オオオオオォ!!」
「ば、馬鹿な!? 力づくで――」

 ゼロラはジフウに掴まれた腕を強引に振り上げ、ジフウの体を地面へと叩きつける――


 ドゴォオン!!


 砂ぼこりを上げてジフウの体が地面を跳ねる。
 <灰色のオーラ>によって威力を増したその一撃は、周囲の地面さえも揺らす。
 ゼロラはその経験から、サイバラの強引な力技まで習得していた。

 テクニックを要する技ならジフウにも真似できる。
 だが、純粋なパワーによる技は流石のジフウでも真似できなかった。

「とんでもないのはどっちだかな……ゼロラ……!」
「お互い様ってところだろ……ジフウ……!」

 体勢を立て直してゼロラと距離を置くジフウ。
 今の一手だけでも、ジフウにはゼロラの"経験から来る成長"は十分に感じ取れた。

 "テクニック"ではジフウが上――
 それでもゼロラの成長を考えれば、これまでと同じような勝負は危険であるとジフウは考えた。



 ――故に今回は出し惜しみはしなかった。

「<蛇の予告>!!」

 ジフウが眼前に掲げた右腕に纏われる黒い風魔法――<蛇の予告>。
 その溜め動作から放たれる<黒蛇の右>はゼロラにも予測できていた。

「させるかぁあ!!」

 それを見たゼロラは、ジフウの溜めが完了する前に潰そうと一気に距離を詰める。





「俺がこの隙を……許すと思うかぁああ!!」

 迫りくるゼロラに対し、ジフウは<蛇の予告>の溜めが完了する前にその右腕でゼロラを払いあげ、懐をガラ空きにする。

「溜めが終わる前に!? 焦ったか!? いや――」
「ああ、そうだ! "本命"はすでに準備完了だ!!」

 ガラ空きとなったゼロラの懐に、ジフウは後ろ手に隠していた左腕を突き立てる。



 <龍の宣告>が完了し、青い風魔法を纏った<青龍の左>を――



 ギャァアオォオン!!



「ゴホォオ!!??」

 <青龍の左>をまともに食らったゼロラは、口から鮮血を溢れさせながら後方へ吹き飛ぶ。

「ハァ……ハァ……! 本当に馬鹿げたテクニックだぜ……!」

 <黒蛇の右>を囮にした<青龍の左>――
 ブラフとフェイントを織り交ぜたテクニカルな戦い方こそが、ジフウの本領――

 純粋な身体能力で上回るゼロラ。それをテクニックでカバーするジフウ。
 人としての力の極致に至った二人の戦いは、さらに加速を始めた――
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