記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第22章 改革の歌

第308話 改革の輪舞曲

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 早朝より始まった戦いは、すでに陽が落ち始めてなお続いていた。
 改革派によって押し戻されていく戦線。
 その様子は王都を囲う壁の上から、王国の民の目にもよく映っていた。

「見るでおじゃる! 皆の衆! あれこそがこの国を変えたい者達の意志の集まりでおじゃる! あれを見過ごしてよいでおじゃるか? 否! まろ達は今こそ変わるべき時でおじゃる!」

 そんな民衆の前に立ち、オジャル伯爵はその心を動かそうと声を上げる。

「王都ばかりに目を向けていたが、これほどの民がこの国に不満を抱えていたのか……」
「わ、私達はただ王都の内側で甘えていただけだったのね……」

 王都に住まう民達の心が揺らぎ始める。
 今目の前で起こっている、改革派と王国騎士団の戦い。
 これまで自分達が目を背けてきた現状を、王都の華やかさで蓋をしてきた現実を――
 王都の民は今この時、しかと目に焼き付けることとなった。

「あれこそ、真にこの国を思う者達の声ざます! しかと耳にし、その姿を目に焼き付けるざます!」

 オジャル伯爵の母、ザ・マスも民へと訴えかける。
 王国貴族である以上、二人が公に戦いの場へと出ることは難しい。
 この親子二人にできる事はより多くの民にこの国の現状を見せ、"改革の意志"を伝えることであった。

 ルクガイア王国がまた一歩、新しい時代へと進み始める――





「な、なぜじゃ……!? なぜこんなことになるのじゃ……!?」

 ジャコウはこの事態を信じられずにいた。
 ゾンビ化したコマンドラゴンの召還。出せる限りの遊撃隊の出撃。
 その全てが改革派の前に敗れつつあるのだ。

 元々はギャングレオ盗賊団の残党を倒すためだった戦い――
 楽な戦であるはずが、王国騎士団の完全な劣勢――

「……そうじゃ。者どもよ、今から作戦を説明する――」

 その危機的状況はジャコウの思考を狂わせ始めた。

「そ、そんな!? そんなことをしたら民が――」
「黙るのじゃ! この戦いで負けてしまえば、わしらの面目は丸潰れじゃ! わしに逆らうでない! よいな!?」

 ジャコウの元にいる王国騎士団一番隊に下された命令。
 それを逆らうこともできず、一番隊は王都の中を散り散りになり、作戦行動へと移った。

「見ておれ~……改革派の邪魔ものどもが! このジャコウ様の策略に乗せられるがよいわ! ヒーヒヒヒ!」





「おーおー。改革派の勢いは凄まじいな。加勢も入って、完全に王国騎士団の劣勢だ」

 王都の前門で黒蛇部隊の部下と共に、ジフウは戦いを観戦していた。

 改革派が王都まで攻め込むことはない。
 改革派がどういう思惑を持っているのか。軍師役のロギウスが何を考えているのか。
 それらをよく知るジフウにとって、この戦いの戦局が決まった以上、最早ただの消化試合にしかならなかった。

「……しっかし、ちょっと残念な気はするな」
「残念? どげん意味ですばい?」

 どこか残念がるジフウを見て、副隊長のポールが声をかけた。

「どうせなら、ゼロラと決着をつけたかったんだがな~……。この戦況じゃ、俺は傍観しとくしかねえな」

 ジフウの心残り。それはゼロラと決着をつけられなかったこと。
 かつて二度ゼロラと相対したジフウだったが、どちらも決着がつかずに終わっている。
 この改革派と王国騎士団の全面対決の場でその機会が来ることを少し願っていたジフウだったが、国王の意志を優先する以上、この戦況では叶わぬ思いとなっていた。

 ジフウが望むはゼロラとの"完全なる喧嘩の決着"。
 大局による思想ではない、個人的な決着――

 ジフウは国王から授かった書状を見ながら思いをはせていた。





「ホワッツ? サー・ジフウ。何やら焦げたスメルがするね?」
「『焦げ臭い』ってことか? 一体どうして――」

 部下のアーサーが何かの匂いに気付き、黒蛇部隊は全員で辺りを見回し始めた。



「!? お、押忍!? 王都の中から火の手が上がってるで、押忍!?」
「……な、なぜダ? この状況で王都から火が上がるなんテ……?」

 トムとボブは匂いの正体に気付いた。

 それは王都の中からいくつも上がる黒い煙。
 王都の至る所で火の手が上がっていた――

「ど、どげんこったい!? 改革派の仕業なわけなかばい! 王都におるさは住人と一番隊だけのはずばい!?」
「だ、だったらこの火はまさか一番隊の――ジャコウの仕業か!?」

 燃え盛る炎と黒煙の中から、住人達の悲鳴が聞こえ始める。
 明らかな異常事態が王都の中で起こっていた。

「お前ら! 俺は一人でジャコウの奴を問い詰めてくる! ここで待機してろ!」
「ジフウ隊長! 一人じゃ危険ばい!」
「この火事がジャコウの仕業なら、何か嫌な予感がする……! とにかくここで待ってろ! いいな!?」

 ジャコウという人間が持つ異常な思考。
 妹のリョウの件も含めてそれを理解していたジフウは、一人で王都の中にいるジャコウの元へと駆けていった。



 そして王都から上がる火の手は、改革派の面々にも確認できた――
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