上 下
303 / 476
第22章 改革の歌

第303話 改革の協奏曲

しおりを挟む
 ジャコウの指示により、王国騎士団の二番隊と三番隊が王都を出て進軍を始めた。
 三番隊が先頭を行き、少し遅れて二番隊が続く隊列。
 まずはスタアラ魔法聖堂の部隊を排除し、そのままギャングレオ盗賊団へと前線を押し進めようと考えていた。



 キィィィン――

「な、なんだこの音は!?」
「風切り音!? 上空からか!?」

 そんな後続の二番隊の上空で、何やら風を切る音がした。
 二番隊の隊士達が上空を見上げると、長い四肢を持った人影が目の前へと落ちてきた――



 ズガァアン!!



「クーカカカ~! 久しぶりだな~、王国騎士団二番隊のアホどもがよ~!」
「ド、ドクター・フロスト!?」
「フロスト! 貴様まで我ら王国騎士団の邪魔をするのか!?」

 二番隊にとっては元上司であるフロストが、背中から四本の機械のアームを生やして二番隊の面々の前へと降り立った。

「"元隊長"を付けろよな~! ほーほー……見知った顔も何人かいるが、俺がいたころとは別物になったみてーだな~」

 フロストは目の前にいる二番隊の面々を見ながら余裕を見せる。

 さらに上空から、巨大な鉄の箱がフロストの傍へと落とされる。

「よーし。フレイムの奴から武器の差し入れも来たな~。それじゃー……早速やるとするか~!」

 フロストは四本のアームで箱の中身を取り出し始める。
 そこから出てきたのは、フロストお気に入りの銃火器の数々――

「まずはこれだ~! "ロケットランチャー"! "超大口径ショットガン"! "レールガン"! 俺の雇い主の意向で、死なない程度に威力は加減してやるよ! だが……痛い目は見てもらうぜ~! クーカカカカ~!!」

 フロストが用意した銃火器の数々が二番隊の面々へと向けられ、一斉に火を噴く。

 ボガァアン! ズゴォオン! ギュィイン!

 フロストは一本のアームで体を支え、背中に発電機を接続しながら銃火器を連射する。
 フロストの時代のはるか先を行く科学力の結晶――
 その猛威が二番隊を次々に襲った。

「怖気づくな! 前方に防御魔法を展開し、押し進むのだ!」
「ほーう? 今の二番隊は魔法が主流なのか~? だが、無駄だ! フレイム! 空爆開始!!」

 防御魔法でフロストの攻撃を凌ごうとする二番隊だったが、それを見たフロストは空を見上げて弟の名を呼んだ――



「フオオオオ!」

 ボガァアン! ボガァアン!

「く、くそ!? 【王国最強】のフレイムまで出てきたか!?」

 上空で兄フロストを下ろし、支援物資を降下させた弟のフレイムが上空から爆弾を投下し始める。

 元王国騎士団二番隊である、フロストとフレイムの兄弟。
 その二人によって二番隊は完全に足止めされてしまった――





「二番隊が襲撃を受けたのか!? 相手はドクター・フロストとフレイムの兄弟だと!?」
「仕方あるまい! 我ら三番隊だけでも進軍するぞ!」

 後ろからついて来るはずの二番隊が襲撃に会い、一時動揺する三番隊だったが、その間にも前線を進めようと進軍を再開していた。



「どうやらフロストとフレイムは予定通りに動いてくれたみたいだな」
「そうだね。二番隊はあの古株二人に任せておこう」
「自分も頑張ります!」
「わ、私だって!」

 そんな三番隊の眼前に、一つの集団が現れた。

 その先頭の集団に立っていたのは、ゼロラ、ロギウス、ラルフル、マカロン。
 そして――





「王国騎士団の皆さん……私達の"改革の意思"を見てもらうのです!」

 ――改革派事実上の総大将、ガルペラ。
 自身の臣下を従えて、死んだと思われていたはずの少女が姿を現した。

「バ、バカな!? ガルペラ侯爵は死んだはず――」
「勝手に殺さないでほしいのです。あなた達の総大将である軍師ジャコウが、私達を嵌めたのは承知の上なのです。あなた達王国騎士団はそれを承知の上で従い、この戦いに挑むのですか?」

 目の前で語る少女の言葉は、三番隊に重くのしかかる。
 不義を働いた主の命の元、騎士としての誇りさえも失った、今の王国騎士団――

 貴族によって腐敗した権力の傀儡と化した王国騎士団だったが、今更それを覆せる状況にはなかった。

「わ、我らは主が命に従うまでだ!」
「その主というのは国王陛下なのです? それとも軍師ジャコウなのです? ……騎士たるもの、民のためを思えないのですか?」
「だ、黙れ! こうなったら仕方ない! ここでお前達を亡き者とし、裏返った事実を修復させてもらうぞ!」

 三番隊の面々はガルペラ達改革派に刃を向けた。

「……仕方ないのです。改革派の皆さん! 私達も戦うのです!」

 ガルペラの合図により、改革派の面々も戦いの構えをとる。
 もうお互いに後戻りはできない。
 それぞれが目指すもの。それぞれが信じるもの。それぞれが守りたいもの――

 それらを賭したルクガイア王国内での世紀の一戦は、その熱を増していった――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

処理中です...