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第21章 開戦前日
第298話 地に落ちて舞い上がる鳥
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「シシバのカシラ、お疲れ様ッス」
「おう」
ラルフルとの手合わせを終えたシシバは、河原で腰かけながらサイバラに労われていた。
「……サイバラ。お前は昨日、ラルフルとも戦っとったんやったな?」
「ええ。ほんの少しッスけど」
「……そん時と比べて、ラルフルの実力をどない見る?」
シシバはラルフルとの一戦を傍で見ていたサイバラに意見を求めた。
そんなシシバに対して、サイバラはサングラスを外しながら答える。
その奥にある、【虎殺しの暴虎】の本性とも言える目つきを露にさせて――
「……正直驚きッスね。ラルフルが使った最後の投げ技……。あれはオレがラルフルに使った技ッス」
「ラルフルが見様見真似でお前の技を使ったってことか? あんな力任せの技をか?」
サイバラもシシバも驚愕していた。
ラルフルが持つラーニング能力――
確かに技術面でのスキルをコピーすることに疑問はないが、ラルフルはサイバラの"力技"をもコピーしていた。
ラルフルがこれまで鍛錬を続けてきた成果もあるのだろう。
だがそれを含めても、ラルフルのパワーアップは想像を絶するものであった。
「ラルフルって、ちょっと前までは魔法使いやったんやろ? それも魔力ゼロになってもうてヘコんどった……」
「そうなんスけどね……。一度地に落ちた人間なのに、ゼロラさんと出会ってからの鍛錬で、ここまで強くなっているとは思わなかったッス」
「……やっぱ、お前も思うか? あいつはさしずめ"鳥"やな。どん底からでも舞い上がってきおる、"不死鳥"やわ」
シシバもサイバラも、ラルフルが持つその潜在能力に驚き、その姿を"不死鳥"のようだと例えた。
たとえ地に落ちようとも再び空高くへと舞い上がる"不死鳥"の姿を、二人はラルフルから感じ取っていた。
「おもろいな~……! キシシシ! ラルフルみたいな坊主がここまで這い上がってきおるなんて……! こりゃ、俺もウカウカしてられへんな~……!」
シシバの右目が狂喜のギラ付きを見せ始める。
それはシシバが初めてゼロラに興味を持ち、相対した時と同じ、シシバの戦闘狂としての本能を見せる灯を――
「あー……カシラ? まさかこのタイミングでスイッチ入っちゃったんスか?」
「ま~な~! まあ、今は明日の大一番のために一旦置いとくわ。俺の場合はこの目をどないかせんことには苦しいからのう」
サイバラはシシバ直属の部下の一人として、シシバが再び戦闘狂としての本性を見せ始めたことを感じ取った。
それを自ら自覚しているシシバは自らの左目の眼帯を指さしながら、サイバラの質問に答えた。
シシバ最大の弱点である"目の悪さ"――
それを克服できた時、シシバは【隻眼の凶鬼】となる前の【凶獅子】と呼ばれた、本来の実力を取り戻すことができる――
「目をどうにかするって……何かアテでもあるんスか?」
「うーん、まー……ないこともない。ちーっとばっかし仲の悪い二人に協力してもらう必要はありそうなんやが……」
シシバには目を回復させるためのある方法があった。
そのためにも、"ある不仲の二人"に協力を求める必要があった。
「まあ、その話も含めて俺らもまずは明日の戦いを乗り切らんとな。……サイバラ。お前の働きにも期待しとるで?」
「カシラには多大なご迷惑をおかけした分、このサイバラ……明日は【虎殺しの暴虎】としての本領を発揮させてもらうッスよぉ……!」
サイバラはシシバに礼をしながらも、その瞳にゼロラと戦った時と同じ眼光を忍ばせる。
ラルフルの奥底に眠る才能に目を向けながらも、新たに"獅子の牙たる虎"となったサイバラは、【虎殺しの暴虎】としての本性を明日の戦いにぶつける覚悟を決めていた。
【隻眼の凶鬼】、シシバ。【虎殺しの暴虎】、サイバラ。
半壊したとはいえ、ルクガイア王国でも屈指の実力をもつこの二人を擁するギャングレオ盗賊団の戦力は、今尚改革派の主戦力であった。
そしてその二人が目の当たりにしたラルフルの不死鳥の如き実力――
それがシシバを"最盛への道"を歩ませる一歩にもなった――
「おう」
ラルフルとの手合わせを終えたシシバは、河原で腰かけながらサイバラに労われていた。
「……サイバラ。お前は昨日、ラルフルとも戦っとったんやったな?」
「ええ。ほんの少しッスけど」
「……そん時と比べて、ラルフルの実力をどない見る?」
シシバはラルフルとの一戦を傍で見ていたサイバラに意見を求めた。
そんなシシバに対して、サイバラはサングラスを外しながら答える。
その奥にある、【虎殺しの暴虎】の本性とも言える目つきを露にさせて――
「……正直驚きッスね。ラルフルが使った最後の投げ技……。あれはオレがラルフルに使った技ッス」
「ラルフルが見様見真似でお前の技を使ったってことか? あんな力任せの技をか?」
サイバラもシシバも驚愕していた。
ラルフルが持つラーニング能力――
確かに技術面でのスキルをコピーすることに疑問はないが、ラルフルはサイバラの"力技"をもコピーしていた。
ラルフルがこれまで鍛錬を続けてきた成果もあるのだろう。
だがそれを含めても、ラルフルのパワーアップは想像を絶するものであった。
「ラルフルって、ちょっと前までは魔法使いやったんやろ? それも魔力ゼロになってもうてヘコんどった……」
「そうなんスけどね……。一度地に落ちた人間なのに、ゼロラさんと出会ってからの鍛錬で、ここまで強くなっているとは思わなかったッス」
「……やっぱ、お前も思うか? あいつはさしずめ"鳥"やな。どん底からでも舞い上がってきおる、"不死鳥"やわ」
シシバもサイバラも、ラルフルが持つその潜在能力に驚き、その姿を"不死鳥"のようだと例えた。
たとえ地に落ちようとも再び空高くへと舞い上がる"不死鳥"の姿を、二人はラルフルから感じ取っていた。
「おもろいな~……! キシシシ! ラルフルみたいな坊主がここまで這い上がってきおるなんて……! こりゃ、俺もウカウカしてられへんな~……!」
シシバの右目が狂喜のギラ付きを見せ始める。
それはシシバが初めてゼロラに興味を持ち、相対した時と同じ、シシバの戦闘狂としての本能を見せる灯を――
「あー……カシラ? まさかこのタイミングでスイッチ入っちゃったんスか?」
「ま~な~! まあ、今は明日の大一番のために一旦置いとくわ。俺の場合はこの目をどないかせんことには苦しいからのう」
サイバラはシシバ直属の部下の一人として、シシバが再び戦闘狂としての本性を見せ始めたことを感じ取った。
それを自ら自覚しているシシバは自らの左目の眼帯を指さしながら、サイバラの質問に答えた。
シシバ最大の弱点である"目の悪さ"――
それを克服できた時、シシバは【隻眼の凶鬼】となる前の【凶獅子】と呼ばれた、本来の実力を取り戻すことができる――
「目をどうにかするって……何かアテでもあるんスか?」
「うーん、まー……ないこともない。ちーっとばっかし仲の悪い二人に協力してもらう必要はありそうなんやが……」
シシバには目を回復させるためのある方法があった。
そのためにも、"ある不仲の二人"に協力を求める必要があった。
「まあ、その話も含めて俺らもまずは明日の戦いを乗り切らんとな。……サイバラ。お前の働きにも期待しとるで?」
「カシラには多大なご迷惑をおかけした分、このサイバラ……明日は【虎殺しの暴虎】としての本領を発揮させてもらうッスよぉ……!」
サイバラはシシバに礼をしながらも、その瞳にゼロラと戦った時と同じ眼光を忍ばせる。
ラルフルの奥底に眠る才能に目を向けながらも、新たに"獅子の牙たる虎"となったサイバラは、【虎殺しの暴虎】としての本性を明日の戦いにぶつける覚悟を決めていた。
【隻眼の凶鬼】、シシバ。【虎殺しの暴虎】、サイバラ。
半壊したとはいえ、ルクガイア王国でも屈指の実力をもつこの二人を擁するギャングレオ盗賊団の戦力は、今尚改革派の主戦力であった。
そしてその二人が目の当たりにしたラルフルの不死鳥の如き実力――
それがシシバを"最盛への道"を歩ませる一歩にもなった――
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