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第21章 開戦前日
第295話 最後の準備・理刀流
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「師匠、お疲れ様です。人の方は集まりましたか?」
「おお、ロギウス。まあ、なんとかってところだな」
ロギウスは自らの剣術<理刀流>の師匠であるイトーの元を訪れていた。
そこにはイトーによって集められた冒険者が数人いた。
「思いのほか集まりましたね。相手が王国騎士団である以上、あまり乗り気ではないと思ったのですが……」
「この中にはゼロラのことを知ってる奴も多い。俺がギルドを始めたころからゼロラに一目置いてた連中だからな」
イトーが集めた冒険者。
それはゼロラとも顔見知りの者達だった。
ギルドマスターのイトーとその友人であるゼロラ。
双方の人間性を知っているからこそ、王国騎士団という強大な相手であっても名乗り出る者達が揃っていた。
「彼らにはこちらの遊撃隊をお願いしましょう。この戦いは"相手を倒すこと"以上に"こちらの被害を出さないこと"を優先したい。各部隊がピンチの時にこそ動いてもらいましょう」
「それでも全然、手が足りねえぞ……」
想定より多くの冒険者が揃ったとはいえ、まだまだ足りない。
ロギウス達の願う改革が実現する形で王国騎士団に勝利するためには、もう少し人数が欲しかった。
ただの勝利ではない。人々の"思い"を乗せた勝利のためにも、同志をできる限り集めたかった。
「……まあ、ゼロラ殿も知人に掛け合ってくれるそうです。今はそちらも信頼しましょう」
「しっかし、なんだ。ゼロラも記憶を失った二年前から気が付けば、方々に知り合いができたもんだな」
ロギウスとイトーは改めてゼロラという人物について考える。
ここまでこのルクガイア王国の改革を進められたのは、ひとえにゼロラの存在なしでは語れない。
ゼロラがいつの間にか人々との間に紡いできた"絆"。
以前リョウがゼロラのことを【絆、紡ぎし者】と呼んだように、ゼロラにはどこか人を繋げる力があった。
この大事な局面において、ロギウスとイトーもゼロラのその力に望みを託していた。
「こんなことばかり考えていても仕方ありませんね。少し話題を変えましょうか」
「我が弟子とはいえ、なんとも切り替えの早い王子様なこった」
今になってあまり深く考えても仕方ないと思ったロギウスは、話題を変えることにした。
今後の王国での新たな国作り。どうすれば世の中が良くなっていくのか。
この戦いが終わった後、ガルペラと共に国の中心となり、どうするかを軽くイトーと語った。
そして、もう一つ――
「師匠。僕はこの戦いが終わった後、やりたいことがあります」
「ほーう? 何がやりたいんだ、ロギウス?」
ロギウスはイトーに己が胸中を語った――
「僕はこの戦いが終わったら……結婚しようと思います」
「おい!? それ、戦いの前に一番言っちゃいけないやつだろ!?」
ロギウスが放った言葉に驚愕し、思わずツッコミを入れるイトー。
イトーは内心で「こいつは死にたいのか!?」と思った。
「そもそも結婚するつったって誰と!? お前さん確か、前に『政略結婚は嫌だ』とか言って、縁談を断り続けてたって――」
「まだ本人に直接会ったわけではありませんが、あの人こそ僕の運命の相手だと考えています」
「会ったことない相手と結婚する気なのか!? お前さんは!?」
ロギウスの突拍子もない発言に、訳が分からなくなるイトー。
今は改革派の一員として王国と敵対関係にあるが、仮にも王子であるロギウス。
この戦いが終わった時、ロギウスの存在は王国にとってより重大となるだろう。
そんなロギウスの行動に、凄まじい不安を覚えるイトーであった。
「ああ……早くあの女性に会いたい……」
「……もう勝手にしてくれ」
「おお、ロギウス。まあ、なんとかってところだな」
ロギウスは自らの剣術<理刀流>の師匠であるイトーの元を訪れていた。
そこにはイトーによって集められた冒険者が数人いた。
「思いのほか集まりましたね。相手が王国騎士団である以上、あまり乗り気ではないと思ったのですが……」
「この中にはゼロラのことを知ってる奴も多い。俺がギルドを始めたころからゼロラに一目置いてた連中だからな」
イトーが集めた冒険者。
それはゼロラとも顔見知りの者達だった。
ギルドマスターのイトーとその友人であるゼロラ。
双方の人間性を知っているからこそ、王国騎士団という強大な相手であっても名乗り出る者達が揃っていた。
「彼らにはこちらの遊撃隊をお願いしましょう。この戦いは"相手を倒すこと"以上に"こちらの被害を出さないこと"を優先したい。各部隊がピンチの時にこそ動いてもらいましょう」
「それでも全然、手が足りねえぞ……」
想定より多くの冒険者が揃ったとはいえ、まだまだ足りない。
ロギウス達の願う改革が実現する形で王国騎士団に勝利するためには、もう少し人数が欲しかった。
ただの勝利ではない。人々の"思い"を乗せた勝利のためにも、同志をできる限り集めたかった。
「……まあ、ゼロラ殿も知人に掛け合ってくれるそうです。今はそちらも信頼しましょう」
「しっかし、なんだ。ゼロラも記憶を失った二年前から気が付けば、方々に知り合いができたもんだな」
ロギウスとイトーは改めてゼロラという人物について考える。
ここまでこのルクガイア王国の改革を進められたのは、ひとえにゼロラの存在なしでは語れない。
ゼロラがいつの間にか人々との間に紡いできた"絆"。
以前リョウがゼロラのことを【絆、紡ぎし者】と呼んだように、ゼロラにはどこか人を繋げる力があった。
この大事な局面において、ロギウスとイトーもゼロラのその力に望みを託していた。
「こんなことばかり考えていても仕方ありませんね。少し話題を変えましょうか」
「我が弟子とはいえ、なんとも切り替えの早い王子様なこった」
今になってあまり深く考えても仕方ないと思ったロギウスは、話題を変えることにした。
今後の王国での新たな国作り。どうすれば世の中が良くなっていくのか。
この戦いが終わった後、ガルペラと共に国の中心となり、どうするかを軽くイトーと語った。
そして、もう一つ――
「師匠。僕はこの戦いが終わった後、やりたいことがあります」
「ほーう? 何がやりたいんだ、ロギウス?」
ロギウスはイトーに己が胸中を語った――
「僕はこの戦いが終わったら……結婚しようと思います」
「おい!? それ、戦いの前に一番言っちゃいけないやつだろ!?」
ロギウスが放った言葉に驚愕し、思わずツッコミを入れるイトー。
イトーは内心で「こいつは死にたいのか!?」と思った。
「そもそも結婚するつったって誰と!? お前さん確か、前に『政略結婚は嫌だ』とか言って、縁談を断り続けてたって――」
「まだ本人に直接会ったわけではありませんが、あの人こそ僕の運命の相手だと考えています」
「会ったことない相手と結婚する気なのか!? お前さんは!?」
ロギウスの突拍子もない発言に、訳が分からなくなるイトー。
今は改革派の一員として王国と敵対関係にあるが、仮にも王子であるロギウス。
この戦いが終わった時、ロギウスの存在は王国にとってより重大となるだろう。
そんなロギウスの行動に、凄まじい不安を覚えるイトーであった。
「ああ……早くあの女性に会いたい……」
「……もう勝手にしてくれ」
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