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第21章 開戦前日

第291話 改革の歌を歌うために

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 ルクガイア王国騎士団は全部で七つの部隊に分かれている。
 ロギウスはそれぞれの部隊を分断し、各個撃破する作戦を話し始めた。



 作戦其の一。
 まずはサイバラが王国騎士団の七番隊を王都前の平原へと誘導し、他の部隊と分断させる。
 今のサイバラになら、王国騎士団も大人しく従うだろう。

「オレの部隊にはホクチ、ナンコ、トーカイ。後は忍衆の四人を付けてくれれば大丈夫ッス」

 サイバラは計七人の部下と一緒に七番隊の相手をするようだ。
 圧倒的に数は少ないが、サイバラにも考えがあるらしい。
 他に戦力を割けるようにサイバラが配慮したのもあるだろうが、こいつ自身もとんでもなく強い。
 今は信用させてもらおう。



 作戦其の二。
 シシバ率いるギャングレオ盗賊団の残存戦力で、王国騎士団の六番隊と五番隊の相手をする。
 一度に二つの部隊を相手にするため数が多く、今のギャングレオ盗賊団で相手できるのかは不安も残るが――

「まあ、そこはなんとかなるやろ。コゴーダ、ヤカタ、ネモトの三人も含めて、一応作戦は用意しとるわ」

 ギャングレオ盗賊団の幹部三人も含めてシシバにも考えがあるようだ。

「五番隊、六番隊、七番隊。王国騎士団の指揮を執るジャコウは、まずこの三部隊を戦線に出してくるだろう。今のギャングレオ盗賊団が相手なら、これでも過剰戦力だと考えてね」

 ロギウスはジャコウの考えを読み解きながら、作戦を考えている。
 そして『三部隊だけでは不利だ』とジャコウが考えた場合のため、次の作戦も用意する。



 作戦其の三。
 スタアラ魔法聖堂の衛兵隊で、後詰から出てくるであろう四番隊の相手をする。
 スタアラ魔法聖堂の戦力では、王国騎士団の一部隊を相手にするのは厳しそうだが――

「スタアラ魔法聖堂側の前線指揮は俺が執る」

 ――そうバクトが名乗り出た。
 前に俺が戦った時もそうだが、バクトには"戦況を見る目"が備わっている。
 バクトがいればスタアラ魔法聖堂の戦力でも四番隊の相手をできるかもしれない。

 もっとも、バクトがスタアラ魔法聖堂の指揮を執るのを買って出たのは――

「あの……バクト公爵。頼りにしてます……」
「……フン」

 ――娘のミリアの存在が大きいのだろう。
 バクトはそっぽを向いているが、ミリアのことを心底心配しているようだ。
 ミリアを守るためにも、バクトはスタアラ魔法聖堂の部隊を率いることになった。



 そして作戦其の四。
 ガルペラを筆頭にした臣下の部隊と、俺、ラルフル、ロギウスで三番隊の相手をする。
 三番隊との戦いは王都の正面付近となるだろう。
 そこに"死んだと思われていた"改革派の象徴たるガルペラが姿を現せば、王国騎士団の出鼻を挫くことができる。

「ロギウス。二番隊と一番隊の相手はどうするんだ?」
「二番隊にはかつての古株である、フロスト元隊長とフレイムの二人に相手をしてもらう。……後で僕の方から伝えておくよ」

 二番隊の相手をするべきフロストとフレイムはこの場にはいない。
 まあ、なぜいないのかというと――

「本当に大丈夫でしょうか? この作戦会議の場にもいらっしゃりませんし……。自分、少し心配です」

 ――ラルフルがいるからだろう。

「まあ、大丈夫だろう。あいつら強いし。それに、今は顔を出しづらいだけだろうし」
「?? なぜ自分はそこまで、フロストさんに避けられているのでしょうか……?」

 俺の言葉にラルフルはキョトンとしているが、今はその話は置いておこう。

「一番隊は出てこないと見ていいだろう。一番隊は王国騎士団一の精強だが、ジャコウのことだ。自らが指揮を執る王都内に待機させて、守りを優先させるだろうね。彼は小心者だから」

 ジャコウの性格を知っているロギウスは、一番隊が前線に出てくることはないと読んだ。

「ジフウ達黒蛇部隊も出てこないと見て大丈夫か?」
「大丈夫だろうね。僕の読みだと、黒蛇部隊は王都正面の門の守りにつくはずだ。そもそも、ジフウ隊長は父上とこちらの意思を尊重してくる。そう考えると、そもそもこちらと戦おうともしないだろう」

 ロギウスも言う通り、国王に忠誠を誓っているジフウなら俺達と戦おうとはしないだろう。
 第一、ジフウはジャコウを嫌っている。
 いくら指揮をジャコウが執っていても、大人しく従うことはないだろう。

「表向きの敵の総大将は父上――国王・ルクベール三世だ。だけど、父上を倒すことがこの戦いの目的ではない。この戦いの目的は相手に、僕達の"改革の意思"を見せつけることだ」

 最後にロギウスは念を押すように言う。
 俺達の目的は王国騎士団を相手に"改革の意思"を見せつけ、このルクガイア王国を変えること――

 そのためにも俺達は、"この戦いが改革のため"であることを、示しながら戦わなければいけない。
 改革という歌を歌う。
 それこそが、俺達の本当の意味での勝利となる――



「ロギウス殿下。貴様の作戦は理解した。だが、本当にこれだけで大丈夫か? 王国騎士団には七つの部隊以外にも、遊撃隊が存在する。数の不利は否めない」
「うーん……それはもっともなんだけどね。今も師匠が信頼できる冒険者を傭兵として雇えるように、動いてくれてるけど……」

 ロギウスが立てた作戦にバクトが口を挟む。
 七つの部隊とは別の遊撃隊の動きをバクトは危惧しており、それはロギウスも承知の上のようだ。
 イトーさんが冒険者に協力を申し出ているようだが、どれだけ集められることか――



 ――そうだ。ここにいる戦力以外でも、頼れる奴らがいたな。

「ロギウス。俺の知り合いに協力を要請しようと思うが、構わないか?」
「ゼロラ殿の知り合いに? それは願ってもない話だ! 是非ともお願いするよ!」

 ロギウスも俺の提案に賛成してくれた。
 そして俺が名前を挙げた知り合いに、すぐに伝令をしてくれることになった。

 どれだけ集められるかは分からない。
 だが俺の信頼できる奴らに、俺達の思いを託してみよう――
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