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第20章 獅子は吠え、虎は猛る
第281話 ケジメのつけ方
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「――その後、オレはジャコウに出会った。『貴族殺しの大罪人』としてオレを追っていたようッスが、オレの力を知ったジャコウは、オレにルクガイア暗部構成員として部下になることを提案してきた。オレもひとまずは追われる身から脱却したかったッスからね」
「そしてお前はルクガイア暗部の一人――【虎殺しの暴虎】となった……」
サイバラは俺に銃口を向けたまま、己の過去を語ってくれた。
普段のサイバラからは想像もできない、"忌まわしき過去の記憶"を……。
「そしてギャングレオ盗賊団の活動が活発になった頃、ジャコウはオレにギャングレオ盗賊団に潜入するように命じてきた。ジャコウとしても目障りだったみたいッスからね」
「そしてお前はギャングレオ盗賊団の幹部――特攻隊長となって潜伏を続けた……」
「ええ。ですが、オレはジャコウに大人しく従う気なんてなかった。オレはギャングレオ盗賊団を利用してジャコウやそのバックにいるボーネス公爵達を潰し、このオレ自身が成り上がる――この国に"下克上"を起こすための手駒にしようと考えてたんスよ」
サイバラの目的は自らが満たされるための"下克上"……。
その機会を伺うために己の実力をひた隠し、ギャングレオ盗賊団を利用する機会を伺ってたのか……。
「……だから、今回のギャングレオ盗賊団の暴走は完全にオレの計算外。オレはもう少し機会を伺ってギャングレオ盗賊団を動かそうと――」
「本当にそんな風に思っているのか?」
「――何ぃ?」
ギャングレオ盗賊団をあくまで自らの手駒だと述べるサイバラに、俺は口を挟んだ。
「お前は本当に"下克上がしたい"のか? 俺にはお前が心の底からそう思っているとは思えねえ。お前は本当は……"一緒にいてくれる仲間との絆"が欲しかったんじゃねえのか?」
「ッ!!?? な、何を言って――」
俺はこれまでにサイバラという人間を何度も見てきた。
頭領のシシバにどやされることもあった。
同じ幹部に小馬鹿にされることもあった。
部下のせいで酷い目に会うこともあった。
それでも、ギャングレオ盗賊団の中にいるサイバラは楽しそうだった――
「お前自身も気づいてるんだろ? お前が辛い過去の経験から下克上を考えていたのは事実だが、"ギャングレオ盗賊団特攻隊長"として過ごした日々がいいものだったのも、事実だということを――」
「そ、それ以上言うんじゃねぇええ!! オレの――オレのことを知った風に語るなぁあ!! 過去もねえ! 記憶もねえてめぇがよぉおお!! ゼロラぁあああ!!!」
バァアン! バァアン!
俺の言葉に怒り狂ったサイバラが、こちらに向けて銃弾を発射する。
だがその銃弾は俺を大きくそれて飛んでいった。
――どうやら俺の言葉が図星だったため、ただ怒りに任せて闇雲に銃を撃っただけのようだ。
「確かにてめぇの言う通りさ! オレはただの密偵だったはずなのに、いつの間にかギャングレオ盗賊団での馬鹿馬鹿しい日々を"楽しい"と思うようになっちまった! でもなぁ! オレはもう引き返せねえところまで来ちまったんだ! このオレ自身の手で……ギャングレオ盗賊団を崩壊の道に……!」
サイバラは声を震わせながら己の胸の内を曝け出す。
今尚俺に向けて構えている銃もガタガタと震えている。
――サイバラは今回の騒動を引き起こしたことを後悔している。
「オレもこんなことになるとは思わなかった……! ジャコウに言われるがままにギャングレオ城に渡された箱なんか設置して……! オレの仕業だとバレねぇように脱出方法まで用意しておいて……! もうオレにだって、オレ自身がどうしたいかが分からねえんだよぉお!!」
忌まわしい過去の経験から願った下克上のためにジャコウに従っていたこと。
ギャングレオ盗賊団の一員として馬鹿なことをしながらも楽しく過ごしていたこと。
その両方がサイバラにとって事実である。
相容れない二つの事実がサイバラの中にあるからこそ、サイバラは激しく迷っている――
――だったら、俺がこいつにケジメを付けさせてやろう。
シシバからも頼まれたことだ。
サイバラに――『ルクガイア暗部としての暗躍を続ける』のか、『もう一度ギャングレオ盗賊団の一員としてやり直す』のか。
それをこの場で選ばせてやろう。
「サイバラ。お前に選択肢を与えてやる」
「『選択肢』……? どういう意味ッスか?」
「今からこの俺と戦え。お前が俺に勝ったら俺の首を手土産にジャコウのところにでも持っていけ。それでお前は自身が望む下克上の足掛かりにすればいい。今の俺の首にはそれぐらいの価値があるだろう」
「な、何を言ってやがるんだぁ……?」
突然の俺の話に困惑するサイバラだったが、俺はそのまま話を続ける――
「ただし。お前が俺に負けた場合は……シシバ達ギャングレオ盗賊団に謝罪してもらうぜ。その結果どうなるかまでは俺も保証しない」
「……本気で言ってるんスか?」
「ああ。本気だ……!」
今回のサイバラ相手に生半可な覚悟で戦うわけにはいかない。
【虎殺しの暴虎】としての本気を出すであろうサイバラは間違いなく強敵だ。
以前リョウがこの俺に述べた仮説――
今ならあの時と同じことができそうだ。
俺は右手で上着の肩を掴み、一気に脱ぎ捨てた――
「そしてお前はルクガイア暗部の一人――【虎殺しの暴虎】となった……」
サイバラは俺に銃口を向けたまま、己の過去を語ってくれた。
普段のサイバラからは想像もできない、"忌まわしき過去の記憶"を……。
「そしてギャングレオ盗賊団の活動が活発になった頃、ジャコウはオレにギャングレオ盗賊団に潜入するように命じてきた。ジャコウとしても目障りだったみたいッスからね」
「そしてお前はギャングレオ盗賊団の幹部――特攻隊長となって潜伏を続けた……」
「ええ。ですが、オレはジャコウに大人しく従う気なんてなかった。オレはギャングレオ盗賊団を利用してジャコウやそのバックにいるボーネス公爵達を潰し、このオレ自身が成り上がる――この国に"下克上"を起こすための手駒にしようと考えてたんスよ」
サイバラの目的は自らが満たされるための"下克上"……。
その機会を伺うために己の実力をひた隠し、ギャングレオ盗賊団を利用する機会を伺ってたのか……。
「……だから、今回のギャングレオ盗賊団の暴走は完全にオレの計算外。オレはもう少し機会を伺ってギャングレオ盗賊団を動かそうと――」
「本当にそんな風に思っているのか?」
「――何ぃ?」
ギャングレオ盗賊団をあくまで自らの手駒だと述べるサイバラに、俺は口を挟んだ。
「お前は本当に"下克上がしたい"のか? 俺にはお前が心の底からそう思っているとは思えねえ。お前は本当は……"一緒にいてくれる仲間との絆"が欲しかったんじゃねえのか?」
「ッ!!?? な、何を言って――」
俺はこれまでにサイバラという人間を何度も見てきた。
頭領のシシバにどやされることもあった。
同じ幹部に小馬鹿にされることもあった。
部下のせいで酷い目に会うこともあった。
それでも、ギャングレオ盗賊団の中にいるサイバラは楽しそうだった――
「お前自身も気づいてるんだろ? お前が辛い過去の経験から下克上を考えていたのは事実だが、"ギャングレオ盗賊団特攻隊長"として過ごした日々がいいものだったのも、事実だということを――」
「そ、それ以上言うんじゃねぇええ!! オレの――オレのことを知った風に語るなぁあ!! 過去もねえ! 記憶もねえてめぇがよぉおお!! ゼロラぁあああ!!!」
バァアン! バァアン!
俺の言葉に怒り狂ったサイバラが、こちらに向けて銃弾を発射する。
だがその銃弾は俺を大きくそれて飛んでいった。
――どうやら俺の言葉が図星だったため、ただ怒りに任せて闇雲に銃を撃っただけのようだ。
「確かにてめぇの言う通りさ! オレはただの密偵だったはずなのに、いつの間にかギャングレオ盗賊団での馬鹿馬鹿しい日々を"楽しい"と思うようになっちまった! でもなぁ! オレはもう引き返せねえところまで来ちまったんだ! このオレ自身の手で……ギャングレオ盗賊団を崩壊の道に……!」
サイバラは声を震わせながら己の胸の内を曝け出す。
今尚俺に向けて構えている銃もガタガタと震えている。
――サイバラは今回の騒動を引き起こしたことを後悔している。
「オレもこんなことになるとは思わなかった……! ジャコウに言われるがままにギャングレオ城に渡された箱なんか設置して……! オレの仕業だとバレねぇように脱出方法まで用意しておいて……! もうオレにだって、オレ自身がどうしたいかが分からねえんだよぉお!!」
忌まわしい過去の経験から願った下克上のためにジャコウに従っていたこと。
ギャングレオ盗賊団の一員として馬鹿なことをしながらも楽しく過ごしていたこと。
その両方がサイバラにとって事実である。
相容れない二つの事実がサイバラの中にあるからこそ、サイバラは激しく迷っている――
――だったら、俺がこいつにケジメを付けさせてやろう。
シシバからも頼まれたことだ。
サイバラに――『ルクガイア暗部としての暗躍を続ける』のか、『もう一度ギャングレオ盗賊団の一員としてやり直す』のか。
それをこの場で選ばせてやろう。
「サイバラ。お前に選択肢を与えてやる」
「『選択肢』……? どういう意味ッスか?」
「今からこの俺と戦え。お前が俺に勝ったら俺の首を手土産にジャコウのところにでも持っていけ。それでお前は自身が望む下克上の足掛かりにすればいい。今の俺の首にはそれぐらいの価値があるだろう」
「な、何を言ってやがるんだぁ……?」
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「ただし。お前が俺に負けた場合は……シシバ達ギャングレオ盗賊団に謝罪してもらうぜ。その結果どうなるかまでは俺も保証しない」
「……本気で言ってるんスか?」
「ああ。本気だ……!」
今回のサイバラ相手に生半可な覚悟で戦うわけにはいかない。
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今ならあの時と同じことができそうだ。
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