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第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第272話 獅子凶行逆襲戦⑤

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「とうとう、ここまで戻ってきちまったか……」

 俺が辿り着いたのは屋敷の最上階。俺達が脱出を始めたガルペラの執務室だった。
 ネモトを倒してからここまで、シシバはおろか他のギャングレオ盗賊団とも交戦していない。
 シシバがいるとするならばこの部屋の先しかないのだが――

「考えていても仕方ないな。とにかく入ってみるか……」

 俺は執務室の扉を開けた――



「ヤーンスゥウウ!!」
「ゴーンスゥウウ!!」
「アーリンスゥウウ!!」

「うおお!?」

 俺が部屋に入ったのと同時に三人のギャングレオ盗賊団構成員が襲い掛かってきた!
 この特徴的な口調――サイバラ直属の部下三人か!?

「お前らも正気を失ってるみたいだな……」
「正気ぃ? 何を言ってるでヤンスか!?」
「俺達はギャングレオ城を滅茶苦茶にして、サイバラの兄貴を殺したガルペラに用があるでゴンス!」
「さっさとガルペラの居場所を吐くでアリンス!」

 サイバラが死んだ!?
 にわかには信じがたいし、こいつらも完全に正気を失っている。
 とにかく大人しくさせるのが先決だ!

「いきり立ってるところ悪いが――少し大人しくなってもらうぜ!」





 サイバラ直属の部下三人は死に物狂いで俺に襲い掛かってきたが、こちらも負けるわけにはいかない。
 今までよりは手ごわかったが、十分に俺一人でも相手できるレベルだった。

「ハァ……ハァ……。結構やるんだな……お前らも……」

 それにしても幹部サイバラの直属の部下だけのことはある。
 本気を出せば俺の息を切らすぐらいの実力はあるようだな……。

「おい、お前ら。サイバラが死んだってのは本当か?」
「あ、当たり前でヤンス! 俺達はその兄貴の弔い合戦でガルペラを―― あ、あれ?」
「そういえば……なんで俺達はこの騒動をガルペラ侯爵の仕業だと思っていたのでゴンスか?」
「サイバラの兄貴の安否も確認せずに、俺達は何をしてたのでアリンスか……?」

 三人の様子が変わった……。
 まさか、正気に戻ったのか?

「お前ら、今の状況が分かるか?」
「ゼロラの叔父貴? わ、分かるでヤンスがなんで俺達がこんなことをしていたのかは分からないでヤンス……」
「ギャングレオ城が崩壊して……サイバラの兄貴に助けられて……。その時に黒いモヤモヤに包まれてからよく覚えてないでゴンス……」
「そ、そうでアリンス! サイバラの兄貴の無事やギャングレオ盗賊団がなんでこうなって―― あー!? 訳が分からないでアリンスー!?」

 混乱はしているようだが、どうやら三人とも正気に戻ったようだ。
 今回の<ナイトメアハザード>はそこまで効力が強くないようだ。
 こいつら三人が元に戻ったところを見るに、多少強引に叩きのめせば洗脳を解くことができるのだろう。
 この様子ならヤカタやネモトといった俺が倒した他のギャングレオ盗賊団も元に戻っていそうだ。

「お前ら三人はこのまま外に向かって他のギャングレオ盗賊団を止めに行ってくれ。ヤカタやネモトといった幹部も目を覚ませば正気に戻っているかもしれない」
「そ、それは分かったでヤンスが……ゼロラの叔父貴はどうするでヤンスか?」
「シシバを止めてくる。あいつの相手は俺じゃないと難しいだろう」

 たとえこのまま他のギャングレオ盗賊団が元に戻っていったとしても、頭領であるシシバを止めない限りはこの騒動は収まらないだろう。

「わ、分かったでゴンス。俺達は他のギャングレオ構成員を止めてくるでゴンス」
「シシバのカシラはそこの階段から屋上に向かったでアリンス! どうか気を付けて行ってほしいでアリンス!」

 シシバのことは俺に任せて、サイバラの部下三人は執務室を出て他のギャングレオ盗賊団を止めに向かった。

 シシバは屋上にいる。
 暴走しているシシバ相手に戦いは避けられないだろう。
 俺は意を決して階段を上がっていった――
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