記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
257 / 476
第19章 光と闇の交差点

第257話 黒色魔力の不協和音

しおりを挟む
 俺とマカロンは屋上まであと一歩のところまでたどり着いた。
 そしてそこには一人の人影が――

「ちょ!? どーなってんだよ、これ!? なんだかどんどん闇が溢れてきてるし、コゴーダの兄貴とははぐれちまうし……。おれ、どーしたらいいのよ!?」
「サイバラ!?」

 俺達の前でサイバラが立ち往生していた。
 ジフウやシシバよりも先に魔幻塔に入ったとは聞いていたが、無事だったのか……。

「ゼロラさん!? よくここまで来てくれたっす! 事情を説明しようにも……おれにもサッパリ分からなくて……」
「おおよその事情は掴めてる。シシバとコゴーダはどうしたんだ?」
「シシバのカシラはおれよりも先に猛スピードで屋上へと駆けあがりました。コゴーダの兄貴とは途中ではぐれちまって……」

 とりあえずシシバは先に向かえたみたいだな……。
 しかしコゴーダはどこに……?

「ゼロラ様!? よ、よかった。来ていただけて助かりました」
「コゴーダの兄貴!? どこ行ってたんすか!?」
「この闇に飲まれるのは危険ですからね……。なんとか安全なルートを探してここまで来ました」

 どうやらコゴーダも無事だったようだ。

「とにかく俺達はリョウのところへ行きたい。この先でいいんだよな?」
「そ、それなんすが……実は屋上への階段が崩れちまって、先へ進めないんすよ……」
「階段が崩れてる……!?」

 サイバラに言われて俺とマカロンは奥の方を見る。
 サイバラが言った通り、この騒動の影響なのか階段が崩れてしまっている。
 シシバ程の身体能力があれば一人でも飛び越えられそうだが、俺とマカロンでは無理そうだな……。

「……コゴーダ、サイバラ。お前らで俺とマカロンを向こう側まで飛ばすことはできるか?」
「え? お二人を向こうに飛ばすんすか? おれとコゴーダの兄貴で手を組んで踏み台にすれば飛ばせると思うんすけど――」
「成程。確かにそれならお二人を向こうまで飛ばせそうですね。……ですが、そちらのお嬢さんも一緒に?」
「説明している時間はない。やれるのなら早速やってくれ」

 リョウを止めるためにはマカロンの光魔法が必要だ。
 俺とマカロン、そしてこの先にいるであろうシシバの三人でなんとしてもリョウを救う!

「マカロン。俺にしっかり掴まっていろ」
「は、はい!」

 俺はマカロンを抱きかかえて助走をつけるために距離をとる。
 マカロンも落ちないように目を閉じて必死に俺に掴まる。

「ゼロラさん! こっちは準備できました!」
「いつでも大丈夫ですよ!」

 俺の進行方向でサイバラとコゴーダが俺を階段の向こうへ飛ばすために、踏み台の準備をしている。

「よし……行くぞぉお!!」

 俺はマカロンを抱えたまま、コゴーダとサイバラの手で作られた踏み台目指して全速力で駆ける!

「フゥゥウウン!!」
「シャラァア!」
「ソロォオッ!」

 ダンッ――

 サイバラとコゴーダの手に足をかけ、俺の体が宙を舞う――

 かなりの高さが必要だったが、なんとか屋上へ続く道へと渡ることができた。

「上手くいったな……」
「あ、ありがとうございます……」

 俺はマカロンを下ろして下にいるコゴーダとサイバラの方を見る。

「ゼロラさーん! シシバのカシラとリョウの姉さんのことを頼みましたよー!」
「我々は他のルートを探してみます! 先にどうかお願いします!」

 サイバラとコゴーダは俺達を見送った後、他のルートを探しにその場を離れた。

「マカロン。俺達も行くぞ!」
「はい! 絶対に――絶対にリョウさんを助けましょう!」

 屋上はもうすぐだ。俺達はとにかく先を急いだ――







「な、なんてこった……! 手出しできひん……!」

 屋上へと辿り着いた俺とマカロンがまず最初に目にしたのは、トンファーを構えながらも困惑しているシシバだった。

「シシバ! 無事か!?」
「ゼロラはん!? それにそっちは確かラルフルの姉ちゃんのマカロンやったか!? あんさんらも来てくれたんか……!」

 シシバは俺達に気付いて振り向く。
 困惑はしているが、大きなケガは負っていないようだ。



 そしてシシバがここまで困惑していた原因は――



「クフフフ……! あれれ~? シシ兄だけじゃなく、ゼロラ殿にマカロンまで来ちゃったんダ?」

「リョウ!!」
「リョウさん!!」

 魔幻塔の屋上で空中に浮かび、この騒動の元凶となっている大量の闇に覆われながら辺りにその闇を振りまく――リョウだった。
 その目元は暗い影に包まれ、本来の綺麗な赤色の瞳からは光が失われている。
 【七色魔力の響音】の二つ名の由来となっているリョウの周りの七色の魔力の塊も、一色のみになっている。

 ――今のリョウの状況を表すような、黒一色に。

「ねえ! 二人も見てヨ! <ナイトメアハザード>を元にして手に入れた、ボクの新しい力ヲ! この力があれば、皆を邪魔して傷つける奴らをぜーんぶ壊せるヨ! クハハハハ! アーハハハハ!!」

 リョウは狂ったように笑い声を上げながら、自らが手にした闇の力――<ナイトメアハザード>と呼ばれる力を賞賛している。

 その力に共鳴するように、俺がリョウにプレゼントした胸元のブローチも黒く塗りつぶされている。

「リョウ……。俺達はそんなことを望んじゃいない。大人しくその<ナイトメアハザード>とかいう力を納めてくれ!」
「お願い! リョウさん! 正気に戻って!!」

 俺とマカロンは必死にリョウへと訴えかける。
 だが――

「……何故だイ? 何故、シシ兄もゼロラ殿もマカロンも……ボクが手に入れた力を喜んでくれないんだイ!? ボクは――ボクは皆のためを思ってやってるんだヨ!?」

 ――リョウは俺達の言葉を拒絶した。

 これがリョウの本心でないことはよく分かる。リョウ自身も操られているんだ。
 この<ナイトメアハザード>という力に――

「もういいヨ……。皆がボクの力を認めてくれないっていうのなら……この力で、この世界ごと滅ぼしてあげるヨ!! クーハハハハッ!!」

 支離滅裂な発言と共に、リョウは自らを纏う闇を膨れ上がらせる。
 今のリョウは俺達のよく知るリョウじゃない。
 こうなった以上、やはり力づくで止めるしかないようだ……!

「マカロン、シシバ。リョウと戦うぞ。覚悟してくれ……!」
「き、気は進みませんけど……やるしかないみたいですね……!」
「……しゃーない。こないなったら無理矢理にでも目ぇ覚まさしたるわ!!」

 俺とマカロンとシシバ。三人ともリョウと戦う準備をする――
 全てはリョウを止め――救い出すために!

「ボクの邪魔をするというのなら、君達三人であっても容赦はしなイ! ボクの新しい力で……皆もボクの世界に連れて行ってあげるヨ!!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...