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第18章 光と闇の分岐点
第248話 ボクノセカイ
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「やっと戻ったか。リョウ大神官」
「や、やあ……ボーネス公爵。ボクを苦しめてまで連れ戻して……何の御用かな?」
ボクは魔幻塔へと連れ戻された。
黒蛇部隊やギャングレオ盗賊団にも見つからないように、転移魔法で塔の内部へと入れられた。
いや……捕らえられたといったほうが正しいかな……。
ボクが連れられた部屋は窓一つない監禁部屋。両腕を鎖で縛られ、魔法を使うこともできない。
そんなボクの元にボーネス公爵と軍師ジャコウが現れた。
ボクを捕らえて監視していた六人組のリーダーと思われる人物も傍で様子を伺っている。
――この黒づくめの人物……様子からしてルクガイア暗部の構成員だね。
一言も喋ってないし、擬態系の魔法効果があるローブで詳しいことは分からないけど、王国上層部のこの二人に付き従っているぐらいだ。相当な手練れなんだろうね。
それにこの人物――ジフ兄やシシ兄と同じような気配を感じる。
兄さん達のような人間を見てきたボクだから分かる。
この六人組のリーダーは――とてつもなく強い。
ボクが無理矢理逆らってもどうにかできる相手じゃない。
「でかしたぞ、【虎殺しの暴虎】とやら。ジャコウ、早速始めろ」
「ヒヒヒ。分かりましたですじゃ」
ボーネス公爵の指示でジャコウがボクに近づいてくる。
ジャコウの研究は同じく魔法を研究しているボクにとって非常に気味の悪いものだ。
<魔王の闇>の再現。人体を異形化させる薬の開発。
実に胸糞が悪くなる。ボクが求めるものとはまるで違う。人に害をなす毒のような魔法の数々……。
――そして、ボクも今からその犠牲にさせられるのだろう。
「軍師ジャコウ殿……。ボクに何をするつもりかな……?」
「なーに。わしが<ナイトメアハザード>を元に開発した術の媒体になってもらうのじゃよ……!」
<ナイトメアハザード>か……。
ボクも少しだけ聞いたことがあるけれど、魔王城から発せられているという黒い悪夢の霧だったかな?
ボクはそんな術の媒体になってしまうのか……。
――怖い。どうしようもなく怖い。
従うしかないはずなのに、助けてほしいと願ってしまう。
ゼロラ殿……! 皆……!
「ほう? これは魔力を込める宝石を埋め込んだブローチか。これは丁度いい。これに直接術式を書き込んで――」
「ッ!!?? や、やめてくれ! そのブローチだけは――」
不幸なことにジャコウが目を付けたのはボクのブローチ――ゼロラ殿から貰った大切なお守りで宝物……!
ジャコウはそこに自らが開発した術式を書き込んでいく――
「膨大な魔力を持つリョウ大神官にこの術式を書き込めば<ナイトメアハザード>の"悪夢を見せる"効果を利用して、この女を"悪夢で洗脳させる力"の媒体にできますじゃ!」
「ガハハハ! その力さえあれば、<絶対王権>を手に入れる必要もない! このわしこそが、ルクガイア王国の頂点となるのだ!!」
ボクを"悪夢で洗脳させる力"の媒体にする!?
やめろ! やめてくれ!!
ボクをそんな人の心を汚す道具にしないでくれ!!
人の心というのはそのままであるべきなんだ! 捻じ曲げていい物なんかじゃない!
そんなもの……ボクは絶対認めない!!
「や、やめ――あぁ……! アァアアァ!? グアァアアアア!!??」
僕の口から今まで上げたことのない悲鳴がこぼれる。
胸元のブローチが黒く染まり始め、ボクの頭の中まで闇へと落ちていく――
ボクが……ボクでなくなっていく――
■
「どうだ、ジャコウ? 上手くいったのか?」
「え、ええ……。これで成功のはずですのじゃが……」
――二人が何かを話してる。
ボーネスとジャコウか。それに強そうな六人組のリーダーも相変わらずいるね。
――あれ? そもそもボクはどうしてこんなところにいるのだろう?
ゼロラ殿や、マカロンや、ラルフル君や、ミリア様。ジフ兄にシシ兄の兄さん達。
ボクが会いたい人達は近くにいないのかな?
「おい、リョウ大神官! 貴様に植え付けた<ナイトメアハザード>の力を開放するのじゃ!」
ジャコウが何か言ってるね。
<ナイトメアハザード>だっけ? 今このボクの体から溢れ出そうな力の事かな?
――それに、このボクの大切なブローチを黒く染め上げた力でもあるのかな?
なんでこんな酷いことをするのかな?
そもそもなんでボクの近くにいるのかな?
ボクはこの人たちのことが嫌いなんだけどね?
――そうだよ。この人達はゼロラ殿達にとって、みんなにとっての害悪でしかない。
こいつらがいなければみんな苦しまない。
ボクの大切な人達を守ることができる。
ああ、そうだ――
コ コ ニ イ ル ヒ ト タ チ、
ゼ ン イ ン ケ シ チャ オ ウ
ゴォオオ!! バギンッ!!
「な、なんじゃ!? 鎖を引きちぎったじゃと!? リョウ大神官! わしらに逆らう気か!?」
「何を言ってるのかナ? ジャコウは? そもそもボクがお前達に従う必要なんてないよネ?」
ああ……なんだか清々しい。
今のボクならなんでもできそうだ。
「お、大人しくしろ! また貴様の魔力に干渉して、苦しめてくれ――」
「うざったいヨ、お前」
ジャコウがまたボクの邪魔をしようとしたので、手から放った闇に飲み込ませる。
へぇ……これが<ナイトメアハザード>か……。
これならボクの意のままに邪魔者を始末できそうだ。
「こ、これはジャコウの術が失敗したということか!? おい! 【虎殺しの暴虎】! わしを連れて避難しろ!」
「…………」
ダッ――
あー……ボーネスは逃げちゃったか。【虎殺しの暴虎】とかいう奴が連れて行っちゃったね。
でも、いいや。
まずはこの魔幻塔を支配しよう。
ボクの大切な人達にとって目障りなこの塔を支配し、行く行くは――
「コノ世界ゴト、滅ボシチャオウ」
「や、やあ……ボーネス公爵。ボクを苦しめてまで連れ戻して……何の御用かな?」
ボクは魔幻塔へと連れ戻された。
黒蛇部隊やギャングレオ盗賊団にも見つからないように、転移魔法で塔の内部へと入れられた。
いや……捕らえられたといったほうが正しいかな……。
ボクが連れられた部屋は窓一つない監禁部屋。両腕を鎖で縛られ、魔法を使うこともできない。
そんなボクの元にボーネス公爵と軍師ジャコウが現れた。
ボクを捕らえて監視していた六人組のリーダーと思われる人物も傍で様子を伺っている。
――この黒づくめの人物……様子からしてルクガイア暗部の構成員だね。
一言も喋ってないし、擬態系の魔法効果があるローブで詳しいことは分からないけど、王国上層部のこの二人に付き従っているぐらいだ。相当な手練れなんだろうね。
それにこの人物――ジフ兄やシシ兄と同じような気配を感じる。
兄さん達のような人間を見てきたボクだから分かる。
この六人組のリーダーは――とてつもなく強い。
ボクが無理矢理逆らってもどうにかできる相手じゃない。
「でかしたぞ、【虎殺しの暴虎】とやら。ジャコウ、早速始めろ」
「ヒヒヒ。分かりましたですじゃ」
ボーネス公爵の指示でジャコウがボクに近づいてくる。
ジャコウの研究は同じく魔法を研究しているボクにとって非常に気味の悪いものだ。
<魔王の闇>の再現。人体を異形化させる薬の開発。
実に胸糞が悪くなる。ボクが求めるものとはまるで違う。人に害をなす毒のような魔法の数々……。
――そして、ボクも今からその犠牲にさせられるのだろう。
「軍師ジャコウ殿……。ボクに何をするつもりかな……?」
「なーに。わしが<ナイトメアハザード>を元に開発した術の媒体になってもらうのじゃよ……!」
<ナイトメアハザード>か……。
ボクも少しだけ聞いたことがあるけれど、魔王城から発せられているという黒い悪夢の霧だったかな?
ボクはそんな術の媒体になってしまうのか……。
――怖い。どうしようもなく怖い。
従うしかないはずなのに、助けてほしいと願ってしまう。
ゼロラ殿……! 皆……!
「ほう? これは魔力を込める宝石を埋め込んだブローチか。これは丁度いい。これに直接術式を書き込んで――」
「ッ!!?? や、やめてくれ! そのブローチだけは――」
不幸なことにジャコウが目を付けたのはボクのブローチ――ゼロラ殿から貰った大切なお守りで宝物……!
ジャコウはそこに自らが開発した術式を書き込んでいく――
「膨大な魔力を持つリョウ大神官にこの術式を書き込めば<ナイトメアハザード>の"悪夢を見せる"効果を利用して、この女を"悪夢で洗脳させる力"の媒体にできますじゃ!」
「ガハハハ! その力さえあれば、<絶対王権>を手に入れる必要もない! このわしこそが、ルクガイア王国の頂点となるのだ!!」
ボクを"悪夢で洗脳させる力"の媒体にする!?
やめろ! やめてくれ!!
ボクをそんな人の心を汚す道具にしないでくれ!!
人の心というのはそのままであるべきなんだ! 捻じ曲げていい物なんかじゃない!
そんなもの……ボクは絶対認めない!!
「や、やめ――あぁ……! アァアアァ!? グアァアアアア!!??」
僕の口から今まで上げたことのない悲鳴がこぼれる。
胸元のブローチが黒く染まり始め、ボクの頭の中まで闇へと落ちていく――
ボクが……ボクでなくなっていく――
■
「どうだ、ジャコウ? 上手くいったのか?」
「え、ええ……。これで成功のはずですのじゃが……」
――二人が何かを話してる。
ボーネスとジャコウか。それに強そうな六人組のリーダーも相変わらずいるね。
――あれ? そもそもボクはどうしてこんなところにいるのだろう?
ゼロラ殿や、マカロンや、ラルフル君や、ミリア様。ジフ兄にシシ兄の兄さん達。
ボクが会いたい人達は近くにいないのかな?
「おい、リョウ大神官! 貴様に植え付けた<ナイトメアハザード>の力を開放するのじゃ!」
ジャコウが何か言ってるね。
<ナイトメアハザード>だっけ? 今このボクの体から溢れ出そうな力の事かな?
――それに、このボクの大切なブローチを黒く染め上げた力でもあるのかな?
なんでこんな酷いことをするのかな?
そもそもなんでボクの近くにいるのかな?
ボクはこの人たちのことが嫌いなんだけどね?
――そうだよ。この人達はゼロラ殿達にとって、みんなにとっての害悪でしかない。
こいつらがいなければみんな苦しまない。
ボクの大切な人達を守ることができる。
ああ、そうだ――
コ コ ニ イ ル ヒ ト タ チ、
ゼ ン イ ン ケ シ チャ オ ウ
ゴォオオ!! バギンッ!!
「な、なんじゃ!? 鎖を引きちぎったじゃと!? リョウ大神官! わしらに逆らう気か!?」
「何を言ってるのかナ? ジャコウは? そもそもボクがお前達に従う必要なんてないよネ?」
ああ……なんだか清々しい。
今のボクならなんでもできそうだ。
「お、大人しくしろ! また貴様の魔力に干渉して、苦しめてくれ――」
「うざったいヨ、お前」
ジャコウがまたボクの邪魔をしようとしたので、手から放った闇に飲み込ませる。
へぇ……これが<ナイトメアハザード>か……。
これならボクの意のままに邪魔者を始末できそうだ。
「こ、これはジャコウの術が失敗したということか!? おい! 【虎殺しの暴虎】! わしを連れて避難しろ!」
「…………」
ダッ――
あー……ボーネスは逃げちゃったか。【虎殺しの暴虎】とかいう奴が連れて行っちゃったね。
でも、いいや。
まずはこの魔幻塔を支配しよう。
ボクの大切な人達にとって目障りなこの塔を支配し、行く行くは――
「コノ世界ゴト、滅ボシチャオウ」
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