記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第18章 光と闇の分岐点

第243話 ギャングレオ繁盛日記

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「なあ、シシバ。リョウはどれぐらい外にいられると思う?」
「さあな~。分からへん」

 ジフウの兄貴と俺は一応建前上ギャングレオ盗賊団と黒蛇部隊が睨み合っとる。
 こないしてお互いに魔幻塔の前に陣取ってるけど、そもそもはリョウを守るためにやっとることや。
 そのリョウ本人がおらんかったら、陣取る意味もあらへん。

 ……よって、今めっさ暇や。

 そもそも国王陛下の粋な計らいなんかもしれんが、俺と兄貴がこないしてお互いの部下引き連れて、王国の主要機関の前に並んどるのもおかしな話や。

「そういや気になってたんだがよ……。お前なんでそんなに顔面ボコボコなんだ?」
「バクトはんにボコられた」
「ギャングレオ盗賊団の元締めにボコられるって……。何やったんだよ、お前……?」

 ちょっとした親切心のつもりやってんけどな~……。
 ミリア様との親子関係をバラされたくなかったバクトはんの命令に逆らったら、あの後散々顔面ボコボコに殴られてもうた。
 なんであの人あないに力あんねん。重たい刀を片手でぶん回しとったし、俺が打たれ弱いのもあったから、顔面えらいことになってもうたわ。

 まあ、命令に逆らった俺も悪いんやけど……。

「まあ、どうでもいいか。お前の顔面の事なんか」
「弟のボコボコ顔面をどうでもええとは、ひどい兄貴もいたもんや」
「それよりもお前のところの幹部二人。コゴーダとサイバラはどこにいったんだ?」

 俺の顔面よりコゴーダとサイバラの動向が気になるんか……。

「サイバラは『腹減った』言うてそこら辺に生えとったキノコ食ったら、腹下して便所しに行ったわ」
「馬鹿だろ、あのグラサン半裸……。コゴーダは?」
「よう知らんけど、『用事があります』言うてどっか行った」
「いや、そこは把握しとけよ……。お前、頭領だろ?」

 別にええやろ。ギャングレオ盗賊団は"フリーダムに活躍できる職場"を目指しとるんや。
 息苦しくて堅苦しいのは嫌やねん。

「まあ、もうじきヤカタとネモトがこっち来るはずや。それで穴埋めできるやろ。する必要があんのかは知らんけど」
「あ~……ギャングレオ盗賊団の建設現場主任と企画営業部長だったか? ……今更なことを言うが、お前って本当に盗賊団を作る気あったのか?」

 あるに決まっとるやろが。俺はこう見えてバクトはんに対しては義理堅いんやで?
 ギャングレオ盗賊団をバクトはんが望む"貴族が震えあがる巨大盗賊団"にするために、盗賊計画の立案は失敗せえへんように入念にチェック。
 そして盗賊稼業が続けられるように俺の色んなコネを使って様々な事業を展開。
 膨れ上がった人員と盗賊稼業での赤字の穴埋めも行っとる。
 確かに事業を拡大しすぎた気ぃもするが、許容範囲やろ。
 さらには人員募集と福利厚生の充実で、人数に反してギャングレオ盗賊団の離職率はメチャクチャ低い。
 盗賊稼業のためにこんだけ尽力するなんて、盗賊団の鑑やろ。

「正直ギャングレオ盗賊団ほど、盗賊団らしい盗賊団はないと思うで?」
「……いや、お前の盗賊団の定義はおかしい」

 んなアホな。兄貴は盗賊団をなんやと思うとるんや?



「てやんでい! シシバのカシラ、お待たせしたでい!」
「遅くなって申し訳ありやせん」

 お? 言うとる間ぁにヤカタとネモトが来おったわ。
 ……なんや、荷物抱えとるな。

「お前ら、その荷物はどないしたんや?」
「てやんでい! ガルペラ侯爵の仕事を手伝って、余った道具や土産を持ってきたんでい!」
「実はあっしら、ガルペラ侯爵からヒーローショーの依頼を受けやして――」

 ほう? ヒーローショーとな?
 ちょいとヤカタとネモトから話を聞いてみたが、なんやおもろそうやな……!
 最近はギャングレオ盗賊団の方でもバクトはんの指示で悪徳貴族相手に盗賊する必要もなくなってもうたし、これは新しいシノギの匂いがプンプンすんで……!

「よっしゃ! ええこと思いついたで! 俺らもショーやんぞ! 仮名は――"劇団・ギャングレオ盗賊団"や!」
「てやんでい! ステージの設備は任せるでい!」
「何か引っかかる気もしやすが……あっしも企画ならお任せくだせい」

 そうと決まれば早速プロジェクトを立ち上げる準備をせなな!

「ジフウの兄貴。俺はやることできたから、いっぺんここ離れるわ」
「睨み合ってる相手の組織のトップに言うなよ……。もう好きにしろ。俺もどの道この後王宮に戻る必要があるからな」

 兄貴も不在になるんやったら丁度ええな。ぶっちゃけ、リョウがおらん魔幻塔を俺と兄貴が監視しとっても無意味やし。

「さあ! ギャングレオ城に戻ってプロジェクトの立ち上げや!」

 ギャングレオ盗賊団の更なる明日を目指して出航や!





「なーんで俺の弟も妹も優秀なくせに、変な所でおかしな方向に舵を切るんだか……。ハァ~」
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