記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第17章 追憶の番人『公』

第236話 されど獅子は飼い慣らせぬ

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「ラルフル。バクト達の後をつけてるんだな?」
「え!? ゼロラさん!? どうしてここに――」

 バクト達の後を追っていたら丁度後ろを付けていたラルフルに出会った。
 ラルフルはうっかり大声を出しそうになってしまうが、自らの口を手で押さえてなんとか黙る。

「俺もミリアから話を聞いた。そのことで少し分かったことがある」
「分かったこと……ですか?」
「ああ。お前はミリアの傍にいてやれ。後のことは俺に任せろ」
「わ、分かりました。お願いします」

 ラルフルは俺の言葉に素直に従い、ミリアの元へと駆けていった。
 今のミリアにはラルフルが傍にいてやる必要がある。
 あいつが俺の言うことを信じてくれて助かった。



「ん~? なんや物音がしまんな?」

 ラルフルがこの場を去った後、シシバが俺に気付いて顔を向けてきた。
 そしてそれに呼応するように、バクトと護衛二人も顔を向けてきた。

「ゼロラ? なぜ貴様が俺達の後をつけるような真似をしている?」
「ちょっとあんたに聞きたいことがあってな。……ミリアとのことだ」
「ッ!!?? 貴様……どこで何を聞いた?」

 ミリアの名を俺が口にした途端、バクトの顔に明らかな動揺の色が見えた。
 ミリアと会ってさっきの今での俺の発言だ。何かあったと勘繰ったのだろう。

「……シシバ。貴様何か――」
「俺は何も言うとりまへんで」

 俺がミリアのことをシシバから聞いたのではないかと思ったバクトは確認をとろうとするが、シシバはあっさりと否定する。

「……コゴーダはどうしてる?」
「コゴーダは最近魔幻塔の監視をしとったり、どっか出かけたりしとりますが、ゼロラはんには接触してまへんな」

 バクトはさらにコゴーダのことについてもシシバに確認をとる。
 コゴーダは元々バクトの従者だと言ってたな。あいつも知ってて当然か。

「……ならばまさか、フロストか?」
「そうでっしゃろな~。俺はあの人のことよう知りまへんけど、バクトはんとミリア様のことは俺らより詳しいんでっしゃろ?」

 バクトは俺がフロストから話を聞いたことに勘づいたようだ。
 普段から吊り上がっている目を見開いて、さらなる怒りを表しながら俺へと迫ってくる。

「貴様……フロストから何を聞いた?」
「あんたとミリアの関係についてだ。そのことをあんたの口から直接聞かせてもらおうか」
「チィ! あのバカ学者めぇ! だから俺はあいつを味方にするのは反対だったんだ!」

 バクトはフロストに対する恨み節を吐く。

 バクトがフロストを味方に引き入れるのを嫌悪していた最大の理由――
 それは自らの秘密を知るフロストにそのことを口外されたくなかったからか。

「おい、ゼロラ! このことをミリアには言――」
「残念だが、ミリアも一緒にフロストの話を聞いていた」
「――なっ!?」

 ミリアもフロストの話を聞いていたことを知ったバクトの顔が青ざめていく。
 おそらくそれはかつて我が子を捨てた罪悪感によるもの――

「バクト。ミリアはあんたのことを恨んでなんかいない。ミリアは――あんたの娘は父親に会いたがっている」
「よ……余計なことを……! 俺はあいつを捨てたどころか、妻を――あいつの母を助けられなかった男だぞ!? そんな俺に、今更どの面下げて会えと言う気だぁあ!?」

 バクトは俺の言葉にも耳を貸さず、己の意思を押し通す。
 それは自らの過ちによる罪の意識からか、"本当は会いたい"という己の意思を捻じ曲げるかのように――

「あんたがそこまで嫌がっても、俺はミリアの意思を尊重したい。今からここにミリアを連れてくるが――」
「シシバ」

 ミリアを連れてこようとする俺の言葉を遮り、バクトはシシバに目を向けた。

「なんでっか? バクトはん」
「ゼロラを止めろ。こいつの口を何としても塞げ」

 バクトは俺が思った通り、シシバに俺を止めるように指示を出した。
 俺もシシバの方を向き、いつシシバが襲ってきてもいいように準備を――





「……バクトはん。その命令は聞けまへんわ」

 ――する必要はないようだ。

「なんだと? 貴様、この俺の命令に逆らうのか!?」
「そないなこと言いましても、ここでゼロラはんと俺が戦う理由としては薄っぺらいですわ。そもそも俺かて、バクトはんがミリア様に真相を黙りっぱなしっちゅうのはモヤモヤしとったんですわ。せやからええ機会でっしゃろ? 全部ミリア様に曝け出してまえばええんとちゃいますか?」

 シシバもバクトがミリアとの関係を隠していることに納得していなかったようだ。
 自らの恩人であり、ギャングレオ盗賊団の元締めであるバクトの命令を反故にする。

「まあ……俺もバクトはんの部下には変わりありまへんし、とりあえずは傍観させてもらいますわ。好きにやっておくんなはれ」
「シシバァアア!! 貴様ぁああ!!!」

 命令にあっけからんと逆らうシシバに、バクトは鬼の形相で激昂する。



「もういい! こうなったら……この俺自ら口を封じさせてもらうぞぉ!! ゼロラァアア!!!」

 バクトはそう言うと、着ていたコートの中から一本の刀を取り出し、右手でその柄を鞘から抜き取った。
 さらに鞘を捨てた左手を再度懐に入れて、以前フロストと喧嘩になった時に持ちだしていた銃――自動拳銃を握った。

 ブォン! ブォン! ガァアア!!

 右手に持った刀を何度か荒々しく振り回し、一度その切っ先で弧を描くように地面を削り――

 バァアン! バァアン!

 左手に持った拳銃で空目がけて空砲を二発放つ。

 カチャ カチャ

 それが合図だったのか、バクトの護衛二人もそれぞれ拳銃を取り出し、俺の方へ構える。

「すまんな、ゼロラはん。バクトはんにくっついとるあの護衛二人――ギャングレオ盗賊団精鋭護衛衆言うて一応俺の部下なんやが、俺よりもバクトはんの命令を優先するようになっとるんや。実力だけなら幹部にも引けを取らん」

 俺とバクト達との戦いの場から離れようとしていたシシバが、俺の横を通り際にそう言ってきた。

「そのことなら構わねえさ。だが、あの二人と一緒にバクトへ灸を据えることになるのは構わねえか?」
「かまへん、かまへん。これもええ機会やろ。ただ、俺もバクトはんが戦ってる所なんて見たことあらへん。そないに強いはずはあらへんけど、用心だけはしといてくれや」

 シシバが言う通り先程のバクトの刀の扱い方を見ていると、ただ単に力任せに振り回しているだけのようだ。
 それでも片手であれだけ豪快に刀を振り回し、もう片方の手に銃を握っているのは面倒だ。
 おまけにギャングレオ盗賊団幹部クラスの護衛が二人もついている。

「とりあえず少し頭を冷やしてもらうぜ。バクト」

 俺はバクトと護衛二人に対して構えをとった。

「この俺の秘密をミリアにバラすというのならば……貴様と言えど許さんぞぉおお!! ゼロラァアアア!!!」
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