記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第15章 メカトロニクス・ファイト

第213話 侯爵ちゃんは続けたい

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「いやー! 素晴らしいショーでしたね! これまでで一番盛り上がりましたよ!」
「流石はガルペラ侯爵です! 僕も頑張った甲斐がありました!」

 ショーを終えて、ヘンショッカーさんは元の商会長さんに、キャプテン・サラダバーさんは元の青年さんに戻ったのです。

「これぐらいお安い御用なのです! ローゼスもお疲れ様なのです!」
「ハァ~……。何故私がこんなことをする羽目に……」

 ローゼスの顔がげんなりしているのです。本当に頑張ってくれたのです。

「ガルペラ様……。ショーのためにわざわざ屋敷にある物と同じ術式の<転移魔法陣>を用意する必要はあったのですか?」
「ヒーローの登場は派手なのが一番です。『魔法陣の中からいきなり登場する』のは演出として最高なのです!」

 丁度都合よく<転移魔法陣>の存在も思い出したのです。
 あれは"転移先を知る者が発動者の近くにいる"状況ならば、どこへでも転移できる便利なものなのです。
 使わない手はないのです。

「私に炎魔法まで使わせるなんて……結構難しかったんですよ? あそこまで調整するの」
「ローゼスだから頼めたのです。ちゃんと台本通りに使ってくれて助かったのです」

 ローゼスは炎魔法の扱いだけに限れば、その腕前はルクガイア王国屈指なのです。
 ちゃんと火球をキャプテン・サラダバーさんに当たるか当たらないかのところで調整して、最後は押し返ってきたように見せて、自分達に当たる直前で演出用の煙と共に解除したのです。これって凄いことなのです。
 敵の大技を跳ね返して倒すのって王道ですけど、やっぱり盛り上がるのです。

「ガルペラ様もよくあんなに器用に風魔法を使えましたね」
「ショーの進行をしながら使うのは難しかったのですが、頑張ったのです」

 私も風魔法を使ってキャプテン・サラダバーさんがサラダチャージできるように演出できたのです。
 風魔法で吹き飛ばした野菜の一つがうまくお口まで飛んでいってよかったのです。
 声援と共に奇跡が起こるのもお約束ですけど、観客と一体感を持って楽しめるのは外せないのです。
 落ちた野菜は後でスタッフで美味しくいただくのです。

「それにしても……私にはずっと気になってたことがあるのです」
「もしかして、ガルペラ侯爵も?」
「あー……私も同じことを気にしてました」

 青年さんと商会長さんも同じことを気にしていたようなのです。

「え? ガルペラ様に皆様方? 何かあったのですか?」

 ローゼスは気にしてなかったみたいなのです。仕方ないのです。
 青年さんと商会長さんに確認をとったところ、やっぱり私と同じことだったのです。

 だから私が代表して言うのです――





「ローゼス。"ヘンショ・クイーン"の役に大分ハマっていたのです。ノリノリだったのです」
「!!? そ、それは――」

 "敵の美人女幹部"がピッタリ当てはまる演技だったのです。
 ローゼスの演技力が不安だったのですが、杞憂どころかハマリ役だったのです。

「一部観客からはヘンショ・クイーンに対する声援もすごかったですよね」
「ヘンショ・クイーンは絶対人気出ますね。ターゲットの世代層が当初とは違いますが」

 青年さんも商会長さんもヘンショ・クイーンのキャラに確かな手応えを感じているのです。

「い、いえ! 私はやるからには全力でやらなければいけないと思って役に徹しただけでして――」
「それにしてもノリノリが過ぎるのです。いつもより元気そうだったのです」

 ローゼスも普段は私の側近であり、ママでもあるので、色々と溜まっているものがあると思うのです。
 なんだか本当の自分を曝け出しているようにも見えたのです。ストレス発散は重要なのです。

「そうなのです! 今後も私がヒーローショーのマネジメントを続けていくのです! ヘンショ・クイーンも出るのです!」
「いいですね! こちらからもお願いします!」
「ヘンショ・クイーンのグッズも是非作りましょう! きっと売れますよ!」

 ヒーローショーが盛り上がり、パサラダ野菜の宣伝もでき、センビレッジの経済も促進し、ローゼスのストレス発散にもなるのです。
 まさに一石四鳥なのです!

「さあ! 今後もみんなでヒーローショーを盛り上げていくのです!」

 センビレッジでのお悩みは、ガルペラ侯爵にお任せなのです!



「勘弁してくださいよ~。ガルペラ様~……」
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