192 / 476
第14章 まどろむ世界のその先へ
第192話 それぞれの役割
しおりを挟む
「うぁあああ! ゼロラ殿ぉおお! 会いたかったよぉおお! うわぁあああ!!」
俺に会うなり、リョウは大泣きしながら抱き着いてきた。
俺が目覚めた時のマカロンと同様、かなりやつれて髪もボサボサだ。相当俺のことを心配してくれていたことがよく分かる。
俺と一緒に来てくれたマカロン、ラルフル、ミリアも余計な茶々は入れずに、俺とリョウの様子を見守ってくれている。
「フッ。お前がこんな風に泣くとは思わなかったぜ?」
「グスッ……。ボクだって、思わなかったさ……。でも……ゼロラ殿が生きていたのが、嬉しくて……嬉しくて……! うわぁあああん!!」
こんなリョウの姿は今まで見たことがない。こいつが俺にここまで感情を露にしてくれるのは、なんだか嬉しい気がする。
心配かけてすまなかったな……リョウ。
「ゼロラはん。とりあえずリョウは数日間は外に出られる。せやけど、いつまでおれるかは分からへん。リョウに頼みたいことがあるんやろ? 一応急いだほうがええと思うで」
「ゼロラ殿が……ボクに頼みたいこと……?」
シシバが俺にしてきた提言に、リョウも反応する。
「リョウ。出てきてそうそうすまないが、お前に頼みたいことがある。ラルフルと一緒に行ってほしい場所があるんだ」
「ラルフル君と? どういうことかな?」
俺はリョウに事情を説明した。
ラルフルの魔力は勇者パーティー戦士のバルカウスに奪われた可能性がある。
その魔力を取り戻すために、魔法の知識に長けているリョウが必要であること。
そのためにバルカウスをラルフルが魔力を失った洞窟に誘い出すこと
俺はこれからロギウスと共にドクター・フロストの元に向かう必要があるので一緒に行けないが、代わりにマカロンとミリアがラルフルとリョウに同行してくれることになった。
今の俺達には、リョウの力が必要だ。
「クフフフ……。久しぶりの再会だっていうのに、ゼロラ殿と共に過ごす時間はお預けか」
「すまない……。お互いの役目が終わったら、また一緒に馬鹿話をさせてくれ」
「クッフフフフ! 一緒に馬鹿話は実に楽しそうだ! お預けのことは気にしないでくれたまえ。今のボクは最高に機嫌がいいんだ。ゼロラ殿と頼みとあらば、ボクも見せてあげるよ――」
そう言いながらリョウは自らの周囲に七色の魔力の塊を回転させながら、その身を魔法の光で覆った。
「――【七色魔力の響音】。その力を、ボクの大切な友達のためにね!」
光が消えるとそこにいたのはいつもの姿のリョウ。髪も衣服もすっかり元通りになっている。言葉にも活気が戻っている。
【七色魔力の響音】。このルクガイア王国において、賢者リフィーに並ぶほどの魔法の使い手。
魔法や魔力関係でこいつほど頼りになる奴はいない。
「ラルフル君。君の失った魔力の真相究明、魔力の奪還。ボクは喜んで協力させてもらうよ」
「よろしくお願いします! リョウ大神官!」
「ミリア様、マカロン。今回のボクは大真面目だ。二人のこともボクが守る」
「信頼してるわよ。リョウ大神官」
「行きましょう! リョウさん!」
ラルフル、ミリア、マカロンもリョウの同行を快く受け入れてくれた。
こっちは大丈夫だろう。俺は俺で、するべきことをするか。
■
「ゼロラ殿。リョウ大神官には会えたかい?」
「ああ。待たせてすまなかったな、ロギウス」
ラルフル達一行を見送った後、俺は先に馬を用意してもらっていたロギウスと合流した。
「テコロン鉱山までは遠い。一度途中にある"ダウンビーズ"で一泊してから向かうとしよう」
「"ダウンビーズ"?」
「テコロン鉱山から一番近い街さ。あまり治安は良くないけど、野宿よりはマシだろう」
"ダウンビーズ"か。治安の悪い街らしいが、ロギウスの言う通り野宿よりはマシだ。
テコロン鉱山に着いたら戦うこともあるだろう。丁度いいところに街があるなら立ち寄らない手はないな。
「よし。それじゃあ、行くか」
「ああ。ラルフル達のことは向こうに任せて、僕達は僕達の役割をこなそう」
こうして俺とロギウスはドクター・フロストに会うために、まずは近くにあるダウンビーズの街へと向かうのであった。
◇◇◇
「……おや? ゼロラ様とロギウス殿下は出立されたところですか」
「コゴーダの兄貴!? 今までどこ行ってたんすか!? こっちは大変だったんすよ!?」
ゼロラとロギウス。その二人を近くで眺めていた人物がいたことに、二人は気付かなかった――
俺に会うなり、リョウは大泣きしながら抱き着いてきた。
俺が目覚めた時のマカロンと同様、かなりやつれて髪もボサボサだ。相当俺のことを心配してくれていたことがよく分かる。
俺と一緒に来てくれたマカロン、ラルフル、ミリアも余計な茶々は入れずに、俺とリョウの様子を見守ってくれている。
「フッ。お前がこんな風に泣くとは思わなかったぜ?」
「グスッ……。ボクだって、思わなかったさ……。でも……ゼロラ殿が生きていたのが、嬉しくて……嬉しくて……! うわぁあああん!!」
こんなリョウの姿は今まで見たことがない。こいつが俺にここまで感情を露にしてくれるのは、なんだか嬉しい気がする。
心配かけてすまなかったな……リョウ。
「ゼロラはん。とりあえずリョウは数日間は外に出られる。せやけど、いつまでおれるかは分からへん。リョウに頼みたいことがあるんやろ? 一応急いだほうがええと思うで」
「ゼロラ殿が……ボクに頼みたいこと……?」
シシバが俺にしてきた提言に、リョウも反応する。
「リョウ。出てきてそうそうすまないが、お前に頼みたいことがある。ラルフルと一緒に行ってほしい場所があるんだ」
「ラルフル君と? どういうことかな?」
俺はリョウに事情を説明した。
ラルフルの魔力は勇者パーティー戦士のバルカウスに奪われた可能性がある。
その魔力を取り戻すために、魔法の知識に長けているリョウが必要であること。
そのためにバルカウスをラルフルが魔力を失った洞窟に誘い出すこと
俺はこれからロギウスと共にドクター・フロストの元に向かう必要があるので一緒に行けないが、代わりにマカロンとミリアがラルフルとリョウに同行してくれることになった。
今の俺達には、リョウの力が必要だ。
「クフフフ……。久しぶりの再会だっていうのに、ゼロラ殿と共に過ごす時間はお預けか」
「すまない……。お互いの役目が終わったら、また一緒に馬鹿話をさせてくれ」
「クッフフフフ! 一緒に馬鹿話は実に楽しそうだ! お預けのことは気にしないでくれたまえ。今のボクは最高に機嫌がいいんだ。ゼロラ殿と頼みとあらば、ボクも見せてあげるよ――」
そう言いながらリョウは自らの周囲に七色の魔力の塊を回転させながら、その身を魔法の光で覆った。
「――【七色魔力の響音】。その力を、ボクの大切な友達のためにね!」
光が消えるとそこにいたのはいつもの姿のリョウ。髪も衣服もすっかり元通りになっている。言葉にも活気が戻っている。
【七色魔力の響音】。このルクガイア王国において、賢者リフィーに並ぶほどの魔法の使い手。
魔法や魔力関係でこいつほど頼りになる奴はいない。
「ラルフル君。君の失った魔力の真相究明、魔力の奪還。ボクは喜んで協力させてもらうよ」
「よろしくお願いします! リョウ大神官!」
「ミリア様、マカロン。今回のボクは大真面目だ。二人のこともボクが守る」
「信頼してるわよ。リョウ大神官」
「行きましょう! リョウさん!」
ラルフル、ミリア、マカロンもリョウの同行を快く受け入れてくれた。
こっちは大丈夫だろう。俺は俺で、するべきことをするか。
■
「ゼロラ殿。リョウ大神官には会えたかい?」
「ああ。待たせてすまなかったな、ロギウス」
ラルフル達一行を見送った後、俺は先に馬を用意してもらっていたロギウスと合流した。
「テコロン鉱山までは遠い。一度途中にある"ダウンビーズ"で一泊してから向かうとしよう」
「"ダウンビーズ"?」
「テコロン鉱山から一番近い街さ。あまり治安は良くないけど、野宿よりはマシだろう」
"ダウンビーズ"か。治安の悪い街らしいが、ロギウスの言う通り野宿よりはマシだ。
テコロン鉱山に着いたら戦うこともあるだろう。丁度いいところに街があるなら立ち寄らない手はないな。
「よし。それじゃあ、行くか」
「ああ。ラルフル達のことは向こうに任せて、僕達は僕達の役割をこなそう」
こうして俺とロギウスはドクター・フロストに会うために、まずは近くにあるダウンビーズの街へと向かうのであった。
◇◇◇
「……おや? ゼロラ様とロギウス殿下は出立されたところですか」
「コゴーダの兄貴!? 今までどこ行ってたんすか!? こっちは大変だったんすよ!?」
ゼロラとロギウス。その二人を近くで眺めていた人物がいたことに、二人は気付かなかった――
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
学年一の不良が図書館で勉強してた。
山法師
恋愛
春休み。4月になったら高校2年になる成川光海(なりかわみつみ)は、2年の予習をしようと、図書館に来た。そしてそこで、あり得ないものを見る。
同じクラスの不良、橋本涼(はしもとりょう)が、その図書館で、その学習席で、勉強をしていたのだ。
「勉強、教えてくんねぇ?」
橋本に頼まれ、光海は渋々、橋本の勉強を見ることに。
何が、なんで、どうしてこうなった。
光海がそう思う、この出会いが。入学して、1年経っての初の関わりが。
光海の人生に多大な影響を及ぼすとは、当の本人も、橋本も、まだ知らない。
◇◇◇◇◇◇◇◇
なるべく調べて書いていますが、設定に緩い部分が少なからずあります。ご承知の上、温かい目でお読みくださると、有り難いです。
◇◇◇◇◇◇◇◇
他サイトでも掲載しています。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
異世界で最高の鍛冶師になる物語
ふみかん
ファンタジー
ある日、鐵光一は子犬を助けようとして死んでしまった。
しかし、鍛治の神ーー天目一箇神の気まぐれで救われた光一は海外の通販番組的なノリで異世界で第二の人生を歩む事を決める。
朽ちた黒龍との出会いから、光一の手に人類の未来は委ねられる事となる。
光一は鍛治師として世界を救う戦いに身を投じていく。
※この物語に心理戦だとかの読み合いや凄いバトルシーンなどは期待しないでください。
※主人公は添えて置くだけの物語
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
私は普通を諦めない
星野桜
ファンタジー
前世で日本の大学生(アイドルオタク)だった佐藤瑠奈は、強い魔力を持った王族が治める王国の小さな村で生まれた。初めて見た魔法に感動して、期待に胸膨らませていたけど、現実を知る。平民に対するひどい差別と偏見、厳しい暮らし、保証のない生活、こんなのいや!
私、自分にとっての普通を取り戻したい!
そんな不満をぶつけるように、数ヶ月だけ一緒にいたなんか偉そうな男の子にいろいろ言った結果、その子は実は王太子だった。
昔出会った偉そうなお坊ちゃんが王子様系王太子殿下となって再び現れ、王太子妃になって欲しいと言われる。普通の生活を手に入れるために婚約者となった瑠奈と、そんな瑠奈をどうしても手に入れたい最強王太子。
前世の知識を武器に世界の普通を壊していく。
※小説家になろう様で公開中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる