記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第12章 舞台へ立つために

第161-2話 決定報告

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「ねーねー、ミリアちゃん。ラルフルとはどこまで行ったの?」
「マ、マカロンさん……。ど、どこまでと言われましても……」

 現在、私は弟ラルフルのガールフレンドであるミリアちゃんと勤め先の宿屋で談話中だ。
 将来的にラルフルとミリアちゃんは結婚するだろう。そうなったら私はミリアちゃんのお姉ちゃんにもなる。
 ミリアちゃんはいい子だし、今の内にも良い関係を築いておきたい。

「そういえばミリアちゃんには家族っているの?」
「す、すみません……。アタシは赤ん坊の頃に両親を亡くして、スタアラ魔法聖堂に引き取られたので……」

 ……迂闊。ミリアちゃんには家族がいないようだ。
 良い関係を築こうと思っていたのに、ミリアちゃんの心苦しいところを聞いてしまうなんて……迂闊。

「でも大丈夫よ、ミリアちゃん! ミリアちゃんはいずれラルフルと結婚するんだし、最早私とミリアちゃんは家族も同然よ!」
「き、気が早いですよ~……」

 ミリアちゃんはきっと家族がいなくて寂しい思いをしてきたに違いない。
 ラルフルとミリアちゃんが結婚したら今までミリアちゃんが寂しかった分、私もミリアちゃんにお姉ちゃんしてあげよう。



「チッ……スタアラの小娘も一緒か」

 そんな私とミリアちゃんの元に誰かがやって来た。
 身なりはコートを羽織った高貴な人だけど、凄まじく目つきが悪くて怖い年配の男の人。
 私達を見て早々に舌打ちするし、ミリアちゃんのことを『スタアラの小娘』なんて呼ぶし、ガラの悪さはゼロラさん以上ね。
 ――むしろゼロラさんって見た目以外は結構ガラ良いわよね?

「バクト公爵……? なぜこちらに?」
「おい、小娘。ゼロラはどこだ?」

 この人が"三公爵"の一人で、ギャングレオ盗賊団の元締め――バクト公爵なのか。
 話には聞いてたけど、本当に目つきも口も悪いわね。

「ゼロラさんに何か御用ですか? 今は少し出かけてますけど……」
「貴様は――ラルフルの小僧の姉か。ならば貴様でいい。"円卓会議"の日程が決まった。内容はこのメモに書いてあるから、ゼロラの奴に渡しておけ」

 そう言ってバクト公爵は私にメモを渡してきた。
 "円卓会議"……。ゼロラさんやラルフルからも聞いてるけど、この国の命運を分けることになる改革活動の大舞台……。
 どうやらその段取りがバクト公爵の方で整ったそうだ。

「"円卓会議"には俺以外の"三公爵"も出席する。奴が帰ってきたらしっかり伝えておけ。じゃあな」
「あ、あの! ゼロラさんが帰ってくるのは待たれないのですか?」
「……スタアラの小娘と一緒になどいられるか」
「なっ……!?」

 それだけ言い残して、バクト公爵はさっさと宿から出ていってしまった。

「なんなのよあの人は!? ミリアちゃんを『スタアラの小娘』だとか馬鹿にしちゃって!」
「お、落ち着いてマカロンさん! 確かにあの人、口はメチャクチャ悪いけど……今はあの人の力がアタシ達には必要なのよ……」

 ミリアちゃんはバクト公爵にあんなに馬鹿にされていたにもかかわらず、今後のためにも必要な人だからと健気にふるまってくれている。
 この子は本当にいい子だ。ラルフル、早く結婚しなさい。



「成程。俺が少し出かけている間にバクト公爵が連絡に来てくれたのか」

 ミリアちゃんが帰った後、ゼロラさんが戻ってきた。
 私は早速バクト公爵から貰ったメモを渡して、ゼロラさんに報告した。

「助かったぜ、マカロン。いよいよこの時が来たんだな――」

 ゼロラさんは神妙な面持ちで考え込んでいる。
 この人はすごい。自らが記憶喪失の身でありながら、他者のため――この国のために体を張る覚悟ができている。
 そんな他人思いの優しい人だから、私も惹かれたんだと思う。

 ――だけど、不安にもなる。

「あの……ゼロラさん? "円卓会議"で戦闘にはなりませんよね……?」
「……さあな。一応話し合いに行くわけだが、敵陣のど真ん中に突っ込むわけだ。下手をすれば荒事にもなるだろう」

 もしゼロラさんの言う通り、王宮内で荒事になってしまったら――ゼロラさんや皆は無事に帰ってきてくれるよね?
 私は怖い。もしもそうなってゼロラさん達の身に何かあったらと思うと――

「ゼロラさん。一つ約束してください」
「ん? なんだ?」

 これは待つことしかできない私からの精一杯のお願い――

「どんな結末になろうと、必ず無事に帰ってきてください」

 私はゼロラさんのジッと目を見ながら、必死にその願いを伝えた。

「……分かってる。何が起ころうと、俺は必ずここに帰ってくる。記憶を失った今の俺の帰って来るべき場所は――ここだからな」

 そう言ってゼロラさんは笑顔で約束してくれた。

 ――信じよう。私が愛した人が、無事に約束を守ってくれることを――
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