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第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇
第149話 ナイトメアハザード・序
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ルクガイア王国近海に浮かぶ一つの島。断崖絶壁で人の侵入を許さないその島の上に一つの城が立っていた。
"魔王城"。
【伝説の魔王】の居城でもあった、"勇者と魔王の戦い"の決戦の地。
現在は誰も住んでおらず、ただの廃墟となっている。
――そのはずであった。
「船長! 魔王城の方からおかしな霧が見えまへんか?」
「ほんまやな。黒い霧や。ありゃなんや?」
この日、港町ウォウサカの二人の漁師が魔王城の見える辺りまで船を進ませていた。そして魔王城から黒い霧が漂ってきているのを確認した。
『――ナシイ――ビシイ――』
「せ、船長!? 今、声が聞こえまへんでしたか!?」
「あ、ああ、聞こえた。まるで幽霊みたいな声やった……」
黒い霧に乗せられるかのように一緒に漂ってきた不気味な声。
人が発するものとは思えないその不気味な声はどんどんと二人の漁師へと近づいてくる。
『――人間――ゼココニ――タシカラ――タウバウツモリカ――』
声は尋ねるように二人の漁師の耳に飛んできた。二人の漁師はこの声が『誰かが意志を持って放っている』と感じた。
「こ……こら……やばい予感しかせえへんわ……」
「は、早く戻りまへんか、船長?」
漁師二人は身の危険を察知し、一刻も早くこの海域から離脱しようと船の舵を切った。だが――
『許さナイ、許さナイ、許さナイ、許さナイ、許さナイ……!』
突如、不気味な声が今までよりも鮮明になる。憤怒と憎悪を伴った声と共に、黒い霧が二人の漁師を襲う。
「な、なんや……!? 頭に声が響いてきおる……!?」
「あかん! 体の寒気が止まらん! とにかく早う逃げるんや!」
不気味な声と黒い霧を振り払うかのように、二人の漁師は全速力で魔王城から離れていった。
『そウだ。ここニ人間なド必要なイ。こコだケがワたしノ居場所……』
■
後にウォウサカに戻った二人の漁師はこう語った。
『あれは悪夢を呼び起こす声や。人ではない何かが発する悪夢や』
ウォウサカの住人たちは二人の話に半信半疑だった。
【伝説の魔王】が復活でもしたのか? そんな風に捉える者もいたが、結局は噂の域を出なかった。
「悪夢の災害……<ナイトメアハザード>……か」
――ただ一人の男を除いては。
赤いローブを纏い、フードを深くかぶった男。何度かゼロラ達の前に姿を現した"紅の賢者"だけは、この事態について何か知っているようであった。
「この時代のうねりに呼応したか……。ついに目覚めの時が来たか……。さあ、諸君らはこの事態にどう動く? どう対処する? 小生はその時が来るまで、傍観しているとしよう……か! ハッハッハッハッ……!」
"紅の賢者"はただただこの予兆を眺めているだけであった――
"魔王城"。
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現在は誰も住んでおらず、ただの廃墟となっている。
――そのはずであった。
「船長! 魔王城の方からおかしな霧が見えまへんか?」
「ほんまやな。黒い霧や。ありゃなんや?」
この日、港町ウォウサカの二人の漁師が魔王城の見える辺りまで船を進ませていた。そして魔王城から黒い霧が漂ってきているのを確認した。
『――ナシイ――ビシイ――』
「せ、船長!? 今、声が聞こえまへんでしたか!?」
「あ、ああ、聞こえた。まるで幽霊みたいな声やった……」
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人が発するものとは思えないその不気味な声はどんどんと二人の漁師へと近づいてくる。
『――人間――ゼココニ――タシカラ――タウバウツモリカ――』
声は尋ねるように二人の漁師の耳に飛んできた。二人の漁師はこの声が『誰かが意志を持って放っている』と感じた。
「こ……こら……やばい予感しかせえへんわ……」
「は、早く戻りまへんか、船長?」
漁師二人は身の危険を察知し、一刻も早くこの海域から離脱しようと船の舵を切った。だが――
『許さナイ、許さナイ、許さナイ、許さナイ、許さナイ……!』
突如、不気味な声が今までよりも鮮明になる。憤怒と憎悪を伴った声と共に、黒い霧が二人の漁師を襲う。
「な、なんや……!? 頭に声が響いてきおる……!?」
「あかん! 体の寒気が止まらん! とにかく早う逃げるんや!」
不気味な声と黒い霧を振り払うかのように、二人の漁師は全速力で魔王城から離れていった。
『そウだ。ここニ人間なド必要なイ。こコだケがワたしノ居場所……』
■
後にウォウサカに戻った二人の漁師はこう語った。
『あれは悪夢を呼び起こす声や。人ではない何かが発する悪夢や』
ウォウサカの住人たちは二人の話に半信半疑だった。
【伝説の魔王】が復活でもしたのか? そんな風に捉える者もいたが、結局は噂の域を出なかった。
「悪夢の災害……<ナイトメアハザード>……か」
――ただ一人の男を除いては。
赤いローブを纏い、フードを深くかぶった男。何度かゼロラ達の前に姿を現した"紅の賢者"だけは、この事態について何か知っているようであった。
「この時代のうねりに呼応したか……。ついに目覚めの時が来たか……。さあ、諸君らはこの事態にどう動く? どう対処する? 小生はその時が来るまで、傍観しているとしよう……か! ハッハッハッハッ……!」
"紅の賢者"はただただこの予兆を眺めているだけであった――
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