記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇

第138話 騎士蛇双極戦③

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 黒蛇部隊と思われる四人がゆっくりと階段を下りてくる。

「ザッツライ! ミー達こそ、キング直轄のウォリアーズ、黒蛇部隊ね! ミーは<合気道>のアーサーね!」

 髪を頭上で結った男は自らをアーサーと名乗った。
 それにしてもさっきから何語を喋ってるんだ? なんとなく意味は分かるのだが。

「押忍! 俺はトム! ジフウ隊長配下の四人が一人! <琉球空手>の使い手で、押忍!」

 坊主頭の男は自らをトムと名乗った。
 こいつはなんで話の前後に『押忍』を付けてるんだ?

「……俺はボブ。<ルチャリブレ>を使ウ、生粋のルチャドール、ダ」

 顔に派手な覆面をつけた男は自らをボブと名乗った。
 喋り方は割と普通なのに、その覆面はなんだ? 見た目で一番おかしい。

「そんでおいば黒蛇部隊さ副隊長、<ブラジリアン柔術>のポールばい!」

 薄いオレンジ色のサングラスをつけた男は自らをポールと名乗った。
 いや、お前は方言やら訛りやらがひどすぎて言葉が分かり辛過ぎる。しかもこいつが黒蛇部隊の副隊長なのかよ……。

 黒蛇部隊が只者ではないことはよく分かった。――変人揃いという意味で。

「黒蛇部隊はお前ら四人とジフウだけなのか?」
「イエス! ミーたちフォーメンズはサー・ジフウがセレクションしたエリートファイターね!」
「……そこの『押忍』口調の奴、訳してくれ」

 まだ理解できそうだから。

「押忍! その通りで、押忍! 俺達四人はジフウ隊長選りすぐりの精鋭武闘家で、押忍!」

 ジフウが選んだ精鋭武闘家か。それならばさっき各々が名乗った時に一緒に言ったのはこいつらの格闘スタイルってとこか。

「お前らがさっき言ってたのは格闘スタイルのことだな?」
「せやけん。おいどもさ、そいぞいがそいぞいさスタイル極めちょるけ」
「……そこの覆面の奴、訳してくれ」

 まだ理解できそうだから。

「……その通りダ。俺達はそれぞれがそれぞれのスタイルを極めていル」

 やはりスタイルのことだったのか。だが、どのスタイルも俺が聞いたことのないものだ。ジフウが選んだ連中だということは、実力は確かなのだろうが。
 それにしてもジフウの黒蛇部隊といい、シシバのギャングレオ盗賊団といい、この兄弟の部下には変な奴しかいないのか?

「おい、黒蛇部隊! 何があったんだ!?」
「鉄格子がこんなところにも!? 早く開けるんだ!」

 俺が黒蛇部隊の連中と話していると、後ろで鉄格子の向こう側から王国騎士団の連中が集まってきた。
 騎士達は鉄格子を掴みながら黒蛇部隊に訴えかけている。

「……お前ら。まさか王国騎士団を分断するために鉄格子を操作したのか?」
「……そい知らん。おいども、お前さ倒す邪魔不要じゃき」

 なんとなく言っている意味は分かる。
 こいつら黒蛇部隊は俺への戦いの邪魔が入らないようにするのを口実に鉄格子を下ろし、王国騎士団の進入を止めたようだ。
 この様子だと黒蛇部隊と王国騎士団は一緒に行動はしているが、協力はしていないらしい。

「ジフウに足止めでも頼まれたか? あいつがバクト公爵とどう繋がっているかも知ってるんだろ?」
「……余計なしゃべくり不要ばい。おいどもさ、おまんば倒すけ、ゼロラ」

 黒蛇部隊の四人がそれぞれのスタイルに応じたものと思われる構えをとる。

「これ以上言葉はいらねえってか。だったら俺もそれに応じてやるよ」

 ここまで似合わない隠密行為ばかりしてきたんだ。俺もジフウの部下がどれぐらいの実力なのかにも興味はあるし、こいつらにはいつもの流儀で相手をしてやろう。
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