記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇

第136話 騎士蛇双極戦①

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 ギャングレオ城の地下からバクト公爵邸へは地下道にあるトロッコを使って移動することができた。

「それにしてもすごいスピードだな」

 しかもトロッコには電気を動力にした加速装置までついている。ギャングレオ盗賊団の技術力も大したものだ。俺が乗ったトロッコはものすごいスピードで走り抜ける。トロッコがここまで速くなるものだとは知らなかった。

「そりゃ、おれが加速装置に電気を流し込んでますからね! ゼェ、ゼェ」

 ――そうだった。俺の案内としてついてきたサイバラがトロッコの加速装置に自身の電気魔法を流し込んで出力を上げているのだった。急を要する事態なので、サイバラには無理をしてもらっている。

「サイバラ。お前はバクト公爵には会ったことがあるのか?」
「ええ、何度かは。あの人は頭は"キレ者"なんですが、常に"キレてる性格"の人です。急なんでこうしてゼロラさんには出張ってもらいましたが、あの人が素直にこっちの助けを受け入れてくれればいいんですけど。ゼェ、ゼェ」

 息も絶え絶えにサイバラは俺の問いに答えてくれた。聞く限りバクト公爵自身もかなり面倒な人間のようだ。余計な問題が起こらなければいいのだが……。



「ゼェ……ゼェ……。着きました。この上がバクト公爵のお屋敷です。そこの梯子を上ると屋敷の倉庫に出れます。そこからバクト公爵がいる最上階の部屋へ向かってください。ゼェ……ゼェ……」

 トロッコが止まり、バクト公爵邸の地下に着いたようだ。ここから先は王国騎士団に黒蛇部隊も待ち構えている。油断はできない。

「助かったぜ、サイバラ。ここからは俺一人で行く。ギャングレオ盗賊団幹部であるお前が来るわけにはいかない」
「そうしてくだせえ……てか、ついていくとか無理……。ゼェ……ゼェ……」

 加速装置に電気魔法を使い過ぎて完全に息切れしたサイバラを残し、俺は一人梯子を上っていった。



 ガコン

 梯子を上った先にあった蓋を開けると、サイバラが言った通り屋敷の倉庫と思われる場所に出た。
 近くにあった窓から裏庭の様子が確認できたので覗いてみたが、すでに多くの王国騎士団が取り囲んでいる。この分では屋敷内にも何人か潜り込んでいそうだ。

「バクト公爵のところへは行けたのか?」
「いや。バルカウス団長と黒蛇部隊が向かっているそうだが、まだ辿り着けてないようだ」
「なんでもバクト公爵がいる部屋までに何重にも鉄格子があるそうだ」

 扉の向こうから声がしたのでゆっくりと開けて外を覗いてみると、王国騎士団の騎士が三人、廊下で話をしていた。どうやらこちらには気づいてないようだ。
 俺は三人の視線が逸れたのを確認すると、素早く接近して後ろからの当身でまず一人気絶させる。

「な、なんだ貴様……!?」

 ゲシッ!

 大声を出そうとしたもう一人の顎を蹴り飛ばしてダウンさせ――

「グェエ……!」

 ギチギチ……

 残った一人の首を後ろから締め落とす。

 なんとか騒がれずに無力化できたようだ。応援の騎士は現れない。俺は以前フォーレスの森でラルフルが使った隠密行動を思い出しながら慎重に先へと進む。
 今回の相手には王国騎士団団長のバルカウスと黒蛇部隊隊長のジフウがいる。体力は温存しておきたい。

「ガラじゃねえが、バレねえように進まねえとな」

 その後も俺は気配を殺しながら屋敷内を巡回していた騎士を無力化していき、静かに先へと進んで行った。



 しばらくすると開けた場所に出た。目の前には階段があるだけで人の気配はない。おそらくはあの先にバクト公爵がいるのだろう。

 ガシャン!

「!?」

 俺が部屋の中央まで来ると、突如入ってきた通路に鉄格子が下ろされ、退路を塞がれてしまった。

「こん屋敷に王国騎士団やギャングレオ盗賊団以外の人間さ潜りこむた思わんかったばい」
「……アレはジフウ隊長が言っていタ、【零の修羅】、ゼロラだナ」
「押忍。だけどこれで都合よく鉄格子を下ろせたで、押忍」
「王国騎士団のナイト達もインはキャンノットね。コントロール奪ってよかったね」

 鉄格子を見て驚いていた俺が再度前を見ると、階段の上に奇妙な四人組が立っていた。
 全員が同じ黒服と黒いマントを身に着けている。王国騎士団とは明らかに違う。この屋敷の使用人とも思えない。
 それならば――

「お前らが……黒蛇部隊だな」
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