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第10章 黒幕達
第133話 妨害
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王都・貴族街にある屋敷の一つで、レーコ公爵は窓の外を眺めていた。
「へぇ……。バクト公爵にオジャル伯爵……それに倒れたオークまで屋敷の中に連れ込むなんて」
レーコ公爵は窓の外からオクバがバクト公爵邸に急いで担ぎ込まれるのを見ていた。
「ねえ、リフィー。ちょっといいかしら?」
「わたくしに御用ですか? レーコ公爵」
レーコ公爵の呼びかけに答えたのは勇者パーティーの賢者リフィー。かつて勇者レイキースと共に【伝説の魔王】を倒した英雄の一人だ。
現在はレーコ公爵の派閥に所属し、『【伝説の魔王】を倒した英雄』という看板を利用されている。だが決して無理矢理従っているのではなく、むしろ――
「私のお願い、聞いてくれるかしら?」
「あぁ……レーコ公爵の望みならなんなりと……!」
レーコ公爵が妖艶にリフィーの顎を持ち上げながら囁く。リフィーはその言葉に顔を赤く染めながら応じる。
リフィーはレーコ公爵の虜になっていた。リフィーは元々功名心が高く、【伝説の魔王】討伐に参加したのもそのためであった。だが名声を求めすぎるあまり、その心には大きな隙があった。
"妙齢の美魔女"と呼ばれるレーコ公爵にとって、そんなリフィーを誘惑して篭絡させることなど容易いことだった。
「バクト公爵が屋敷にオークを連れ込んだわ。このことを王国騎士団団長のバルカウスと黒蛇部隊隊長のジフウに早急に報告しなさい。どのような理由があれ、この王都にモンスターを連れ込むなんて許されざる行為よ。ジフウ隊長も王都内の案件ならば動かざるを得ないでしょう」
レーコ公爵は自身に流れがきているのを感じていた。
ボーネス公爵はスタアラ魔法聖堂を始めとするオジャル伯爵に関わる件で"三公爵"内での地位も失墜し始めている。ここでバクト公爵が見せた隙を突けば、自らの"三公爵"での地位を確固たるものにし、そのまま派閥を拡大させ、国王の玉座に自らが座ることも可能である。そう考えていた。
「かしこまりました。レーコ公爵のお望みのままに」
リフィーはレーコ公爵の命に従い、王宮へと報告に向かった。
「ボーネス公爵もバクト公爵も詰めが甘いわね。このままこの国は私のモノにさせてもらうわ……!」
王宮へ向かうリフィーを見ながら、レーコ公爵はほくそ笑んだ。
■
「はぁ? バルカウスだけでなく、俺まで出ろだと?」
王宮へやって来たリフィーの話を聞いてジフウは驚いた。
『バクト公爵邸へ押し込み、バクト公爵と匿われているオークを捕縛せよ』。
その命令を王国騎士団団長バルカウスと黒蛇部隊隊長ジフウの二人に出してきたのだ。
「ジフウ隊長。王都内での揉め事ならば、黒蛇部隊も動かずにはいられまい」
出撃を渋るジフウを見て、バルカウスが戒めるように提言してきた。
ジフウはギャングレオ盗賊団――弟シシバのバックがバクト公爵であることを知っていた。それにバクト公爵は弟の命の恩人だ。いくら王都内の揉め事であってもそんな相手に手を出したくない。
「……それはレーコ公爵の指示だな?」
「ええ、そうです。これは急を要する案件故、陛下の指示を伺う暇もありません」
レーコ公爵はこの機に乗じてバクト公爵を権力争いの座から蹴り落とし、その勢いで国王も玉座から降ろす気だ。それはジフウにも読めた。
ジフウにとってバクト公爵は国王の立場を守れる頼みの綱でもあった。バクト公爵に権力への執着はない。国王を押しのける可能性は低い。他の"三公爵"は知らないことだが、ジフウはシシバから聞いて知っていた。
今ここで命令に従ってバクト公爵を捕らえてしまえば、レーコ公爵の手によっていずれ国王の立場は危うくなる。だが、命令に背いてもレーコ公爵によって『国王直轄黒蛇部隊は王都に入ったモンスターを見逃す』と悪評を立てられれば、それでも国王の立場はやはり危うくなる。
いずれにせよ、ジフウにとっては最悪の状況だ。
「僕からもお願いする、ジフウ隊長。バルカウス団長率いる王国騎士団と共にバクト公爵邸へ向かってくれ」
苦悩するジフウに声をかけたのは王子・ロギウスであった。
「ジフウ隊長。このような事態で即決できないのには問題があるな。少し話がしたい。僕についてきてくれ」
「……申し訳ございません、殿下」
ロギウスに命じられ、ジフウは後をついて行くようにその場を去った。
■
「どういう意図があるんですかね? ロギウス殿下」
「すまない。あの場では僕もああいう風に言うしかなかったのでね」
リフィーとバルカウスの元を去ったジフウはロギウスに尋ねた。
「ここでバクト公爵を捕まえても、陛下の立場は遅かれ早かれ危うくなる。そしてレーコ公爵がこの国の実権を握れば、殿下が考える改革も日の目を見ることはないでしょう」
「それは承知の上だ。僕としても今ここでバクト公爵を失いたくはない」
「殿下たち"共通の目的"を持った四人は、"個人の目的"のために協力はしないんじゃなかったですか?」
「それも時と場合による。それにお互い"協力"はせずとも"利用"はするさ」
ジフウは顔をしかめる。ロギウスはどこか腹黒い一面がある。先日の話からこの国のためならば、父である国王の意志に反してでも利用できるものは利用する人間だ。
「それに僕にも策はある。こちらの密偵で調べたことだが、バクト公爵が屋敷に戻る少し前に、従者兼ギャングレオ盗賊団参謀長のコゴーダが地下から屋敷に入ったそうだ。このことはレーコ公爵も知らない」
「ギャングレオ盗賊団が助けに来ると?」
だがそれは下手をすれば、バクト公爵とギャングレオ盗賊団の繋がりを露呈させてしまうことになる。そうなっては事態は変わらない。
だがそれでもこの状況を打開できる可能性がないわけではない。
「バクト公爵のことだ。レーコ公爵に対しては何かしら対策を考えてはいるだろう。時間さえあれば、この事態を好転させる方法はあるはずだ」
「つまり、俺に時間稼ぎをしろと?」
「ジフウ隊長には無理矢理にでもバルカウス団長と一緒に行動してほしい。最悪、バルカウス団長を止める必要が出た場合――それができるのもあなただけだ」
様々な思惑が入り混じり、頭が混乱しそうになるジフウだったが、国王の立場のためにもロギウスの考えに従うことを心に決めた。
「黒蛇部隊! 集結!」
ジフウの号令に黒蛇部隊の部下四人が姿を現す。
「話は聞いてたな。今から王国騎士団と共にバクト公爵邸に向かう。俺達は団長・バルカウスについて作戦進行を遅らせる」
ジフウの命令に部下たちは頷く。
ジフウ達黒蛇部隊は王国騎士団に合流し、作戦を始めるのであった。
「へぇ……。バクト公爵にオジャル伯爵……それに倒れたオークまで屋敷の中に連れ込むなんて」
レーコ公爵は窓の外からオクバがバクト公爵邸に急いで担ぎ込まれるのを見ていた。
「ねえ、リフィー。ちょっといいかしら?」
「わたくしに御用ですか? レーコ公爵」
レーコ公爵の呼びかけに答えたのは勇者パーティーの賢者リフィー。かつて勇者レイキースと共に【伝説の魔王】を倒した英雄の一人だ。
現在はレーコ公爵の派閥に所属し、『【伝説の魔王】を倒した英雄』という看板を利用されている。だが決して無理矢理従っているのではなく、むしろ――
「私のお願い、聞いてくれるかしら?」
「あぁ……レーコ公爵の望みならなんなりと……!」
レーコ公爵が妖艶にリフィーの顎を持ち上げながら囁く。リフィーはその言葉に顔を赤く染めながら応じる。
リフィーはレーコ公爵の虜になっていた。リフィーは元々功名心が高く、【伝説の魔王】討伐に参加したのもそのためであった。だが名声を求めすぎるあまり、その心には大きな隙があった。
"妙齢の美魔女"と呼ばれるレーコ公爵にとって、そんなリフィーを誘惑して篭絡させることなど容易いことだった。
「バクト公爵が屋敷にオークを連れ込んだわ。このことを王国騎士団団長のバルカウスと黒蛇部隊隊長のジフウに早急に報告しなさい。どのような理由があれ、この王都にモンスターを連れ込むなんて許されざる行為よ。ジフウ隊長も王都内の案件ならば動かざるを得ないでしょう」
レーコ公爵は自身に流れがきているのを感じていた。
ボーネス公爵はスタアラ魔法聖堂を始めとするオジャル伯爵に関わる件で"三公爵"内での地位も失墜し始めている。ここでバクト公爵が見せた隙を突けば、自らの"三公爵"での地位を確固たるものにし、そのまま派閥を拡大させ、国王の玉座に自らが座ることも可能である。そう考えていた。
「かしこまりました。レーコ公爵のお望みのままに」
リフィーはレーコ公爵の命に従い、王宮へと報告に向かった。
「ボーネス公爵もバクト公爵も詰めが甘いわね。このままこの国は私のモノにさせてもらうわ……!」
王宮へ向かうリフィーを見ながら、レーコ公爵はほくそ笑んだ。
■
「はぁ? バルカウスだけでなく、俺まで出ろだと?」
王宮へやって来たリフィーの話を聞いてジフウは驚いた。
『バクト公爵邸へ押し込み、バクト公爵と匿われているオークを捕縛せよ』。
その命令を王国騎士団団長バルカウスと黒蛇部隊隊長ジフウの二人に出してきたのだ。
「ジフウ隊長。王都内での揉め事ならば、黒蛇部隊も動かずにはいられまい」
出撃を渋るジフウを見て、バルカウスが戒めるように提言してきた。
ジフウはギャングレオ盗賊団――弟シシバのバックがバクト公爵であることを知っていた。それにバクト公爵は弟の命の恩人だ。いくら王都内の揉め事であってもそんな相手に手を出したくない。
「……それはレーコ公爵の指示だな?」
「ええ、そうです。これは急を要する案件故、陛下の指示を伺う暇もありません」
レーコ公爵はこの機に乗じてバクト公爵を権力争いの座から蹴り落とし、その勢いで国王も玉座から降ろす気だ。それはジフウにも読めた。
ジフウにとってバクト公爵は国王の立場を守れる頼みの綱でもあった。バクト公爵に権力への執着はない。国王を押しのける可能性は低い。他の"三公爵"は知らないことだが、ジフウはシシバから聞いて知っていた。
今ここで命令に従ってバクト公爵を捕らえてしまえば、レーコ公爵の手によっていずれ国王の立場は危うくなる。だが、命令に背いてもレーコ公爵によって『国王直轄黒蛇部隊は王都に入ったモンスターを見逃す』と悪評を立てられれば、それでも国王の立場はやはり危うくなる。
いずれにせよ、ジフウにとっては最悪の状況だ。
「僕からもお願いする、ジフウ隊長。バルカウス団長率いる王国騎士団と共にバクト公爵邸へ向かってくれ」
苦悩するジフウに声をかけたのは王子・ロギウスであった。
「ジフウ隊長。このような事態で即決できないのには問題があるな。少し話がしたい。僕についてきてくれ」
「……申し訳ございません、殿下」
ロギウスに命じられ、ジフウは後をついて行くようにその場を去った。
■
「どういう意図があるんですかね? ロギウス殿下」
「すまない。あの場では僕もああいう風に言うしかなかったのでね」
リフィーとバルカウスの元を去ったジフウはロギウスに尋ねた。
「ここでバクト公爵を捕まえても、陛下の立場は遅かれ早かれ危うくなる。そしてレーコ公爵がこの国の実権を握れば、殿下が考える改革も日の目を見ることはないでしょう」
「それは承知の上だ。僕としても今ここでバクト公爵を失いたくはない」
「殿下たち"共通の目的"を持った四人は、"個人の目的"のために協力はしないんじゃなかったですか?」
「それも時と場合による。それにお互い"協力"はせずとも"利用"はするさ」
ジフウは顔をしかめる。ロギウスはどこか腹黒い一面がある。先日の話からこの国のためならば、父である国王の意志に反してでも利用できるものは利用する人間だ。
「それに僕にも策はある。こちらの密偵で調べたことだが、バクト公爵が屋敷に戻る少し前に、従者兼ギャングレオ盗賊団参謀長のコゴーダが地下から屋敷に入ったそうだ。このことはレーコ公爵も知らない」
「ギャングレオ盗賊団が助けに来ると?」
だがそれは下手をすれば、バクト公爵とギャングレオ盗賊団の繋がりを露呈させてしまうことになる。そうなっては事態は変わらない。
だがそれでもこの状況を打開できる可能性がないわけではない。
「バクト公爵のことだ。レーコ公爵に対しては何かしら対策を考えてはいるだろう。時間さえあれば、この事態を好転させる方法はあるはずだ」
「つまり、俺に時間稼ぎをしろと?」
「ジフウ隊長には無理矢理にでもバルカウス団長と一緒に行動してほしい。最悪、バルカウス団長を止める必要が出た場合――それができるのもあなただけだ」
様々な思惑が入り混じり、頭が混乱しそうになるジフウだったが、国王の立場のためにもロギウスの考えに従うことを心に決めた。
「黒蛇部隊! 集結!」
ジフウの号令に黒蛇部隊の部下四人が姿を現す。
「話は聞いてたな。今から王国騎士団と共にバクト公爵邸に向かう。俺達は団長・バルカウスについて作戦進行を遅らせる」
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