記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第9章 激突・ギャングレオ盗賊団

第120話 獅子を操る者

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「……そら、どういう意味や?」

 しばしの沈黙の後にシシバが俺に問い返す。

「言葉通りの意味だ。お前は誰かの指示でギャングレオ盗賊団を動かしてるんだろ? そいつは誰なんだ?」
「……なんでそんな風に思うんや?」

 これまでの不気味な笑顔とは違う険しい表情を浮かべるシシバ。俺は思ったことをそのまま口にしていった。

「ギャングレオ盗賊団は盗賊稼業で赤字が続いてるんだろ? てめえが喧嘩したいだけでやってるとも考えられる。だが、狙っているのは"平民から評判の悪い貴族"だけだ。兄貴のジフウも言ってたが、俺もこうやって直接会って確信した。てめえ自身は進んで"義賊のような行為をする人間"じゃねえ」
「…………」

 俺の話にシシバは口を挟まずに黙って聞き続ける。今度は俺の方が意趣返しとばかりにニヤつきながら言った。

「ギャングレオ盗賊団の……てめえのバックにはそれを指示している"誰か"がいる。俺も"同じ匂いのする人間"のことは分かるんでな」

 そう、こいつも"俺と同じ"で"誰かの下について"行動を起こしている。ギャングレオ盗賊団には頭領シシバのさらに上に"元締め"が存在するはずだ。

「キシ……キシシシ……! キシャシャシャシャシャ! シャーッシャシャシャシャァア!!」

 俺の話を聞き終わった後、シシバは狂ったように笑い声をあげる。それは"喜び"と"驚き"が入り混じったような笑い声だった。

「驚いたでぇ……いや、ホンマに驚いた! ギャングレオの行動を読んでここまで来ることは予想できとったが、まさかさらにその裏まで読んで発言してくるとはの~!」
「否定しない……ってことは、認めるってことでいいんだな?」

 "元締め"の存在をほぼ認めてしまったシシバだが、わざとらしくはぐらかす。

「さ~て? ど~なんかの~? でもどないな話にしても、できんのは俺に勝ってからや」

 シシバは足元にあったL字型の棒を足ではね上げてキャッチし、ヒュンヒュンと片手で素振りをする。よく見ると先端が二股に分かれているようだ。

「見たことのない武器だな」
「こいつは"バール"っちゅうてな。本来は釘を抜いたりすんのに使うもんやが、中々手に馴染むから獲物としても使っとる」

 右手に持ったバールを肩に乗せて前屈姿勢をとるシシバ。

「俺はな~、ゼロラはん。どないな理由があっても、"強い奴に従う"ことを信条としとるんや~。俺に聞きたいことがあるんやったら……俺に勝って、この口割らせてみろやぁ!」

 シシバはまるでとっておきのオモチャでも見つけた子供のようにその右目をギラつかせている。
 どうやら早く戦いたくて仕方がないようだ。

「俺をガッカリさせんなや? ゼロラはん……!」
「こっちこそ楽しませてもらうぜ? シシバ……!」

 両者睨み合い、緊張が走る。

「音に聞こえしその力……。じっくりと、ほんでもってた~っぷりと……味合わせてもらうでぇ……! 【零の修羅】……ゼロラはんよぉお!!」

 バールを肩に構えたまま、シシバが先手を打ってきた。凄まじいスピードでの突進! 俺目がけて振り下ろされるバール!

「キェエエアァ!」
「ぬうぅん!」

 ガキィイン!

 俺も腕に力を込めてバールをガードする! その振動で腕が一瞬痺れる!
 それでもシシバの手は緩まない。接近と後退を繰り返しながら、バール以外にも回し蹴り等の体術を使って苛烈に攻め立てる。

「オラァアア!」
「キッシシシシ!」

 俺も反撃とばかりに殴り掛かるが、シシバはまるで瞬間移動でもしたかのように避ける。

「キシャァアアア!!」

 シシバの移動先は俺の頭上! 頭を狙って両手でバールを叩きつけようとする!

「ウオラァアア!!」

 ガキィイイイン!!

 なんとか左腕でバールを受け止め、着地したシシバとの鍔迫り合いになる。少しの間膠着状態が続いたが、お互いを弾き飛ばすように距離が置かれる。

「ええで! ええでぇ! もっと……もっと俺を楽しませろやぁ!!」

 ギャングレオ盗賊団頭領、【隻眼の凶鬼】、シシバ。
 その戦いの火ぶたがついに切って落とされた。
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