記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第9章 激突・ギャングレオ盗賊団

第112話 ギャングレオ城喧嘩祭り①

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 俺とギャングレオ盗賊団による"喧嘩祭り"が始まった。
 まずは城門前での戦い。俺は一人、相手は数人。しかしある程度戦闘慣れしていても、下っ端の実力は大したことがない。ただ問題なのが――

「ドスコーイ! ドスコォオイ!!」

 幹部・サイバラも攻撃に加わることで数で押されてしまっているということだ。サイバラは相変わらずの馬鹿力で俺が下っ端に囲まれて動きが止まった瞬間を狙って張り手のラッシュを浴びせてくる。心なしか以前よりもスピードが増している。

「それなりに鍛えなおしたみてえだな」
「あったりめえだ! ギャングレオ幹部の肩書は伊達じゃねえ!」

 こちらは押されるがままに、城の壁まで追いやられてしまった。

「今だ! <電撃肉体強化魔法>! か~ら~の~……」

 サイバラの右腕に電撃が纏われる。マズイ! こいつにはこれがあった!

「必殺張り手! <ぶちかマッシャー>!!」

 サイバラの張り手が俺の顔目がけて襲い掛かる! 俺は当たる寸前でサイバラの張り手を躱し――

 ゴチィイイイン!

「~~~~!? いってぇええええ!!?」

 サイバラの張り手はそのまま城の壁に叩きつけられた。すごく痛がるサイバラ。

「流石は魔王軍の"地底魔城"だな。壁も頑丈だ」

 俺はコンコンと壁を軽く叩いてみた。かなり固い。これじゃ殴った側が痛い思いをするだけだろう。

「この後も控えてるんだろ? だったらさっさと決めさせてもらうぜ!」
「う、うぉおお!? な、何を!?」

 俺はひるんだサイバラを持ち上げた。

「バカな!? 以前はこんなに力なかっただろ!?」
「お前も鍛えたみたいだが、こっちも修羅場は潜り抜けてるんでな」

 持ち上げたサイバラを空中に放り投げ、そのまま空中で蹴り飛ばす!

 ドカラァアアン!

「いでぇえ!?」
「ちょ!? こっちまぶ!?」
「隊長重い!」
「早く降りて~!」

 蹴り飛ばされたサイバラがそのまま下っ端に直撃して押しつぶした。ピンを倒すようで中々爽快である。

「こ、これで勝ったと思うなよ~! まだまだギャングレオ城の仕掛けも戦力も用意してるんだからな~!」

 そう言ってサイバラは城の中へと一時撤退していった。あいつ、また出てくるんだな。
 いよいよギャングレオ城内部への潜入だ。何があるかわからねえ。俺は用心しながらも先へと進んで行った。



「ギャングレオ城に入ってみたのはいいんだが、さっきからこの矢印はなんだ!?」

 ギャングレオ城内部はいたるところに俺を案内でもするかのような矢印が書かれた看板が設置されていた。罠か?

「いや……罠ではなさそうだ」

 看板の中にはバツ印と『この先食堂。順路ではありません』と書かれたものもあった。多分なんだが、本当に案内目的の看板みたいだな……。

「ゼロラァア! 余所見してんじゃねーぞー!!」

 サイバラ、本日二回目の出撃。復活早いな。
 俺が看板を気にしていると、いつの間にか俺の近くの塀の上にまた部下数人を連れて待ち構えていた。

「サイバラの兄貴! 今度こそゼロラをぶちのめすでヤンス!」
「おうとも! 行くぞ、お前らぁ!」

 サイバラとその部下達が俺の前に立ちふさがるために段差を飛び降りてきた。

 ガシャァアン!

 ただし、サイバラが飛び降りたところだけは床がもろかったのか、あいつが重かったせいなのか、抜け落ちてそのまま下へと落ちていった。
 サイバラ、本日二回目の撤退。早すぎるわ。

「あ、兄貴~!? おのれ! よくもサイバラの兄貴をでヤンス!」
「いや、どう見ても自爆だろ」

 俺の言葉など知らんとばかりに残った下っ端たちが襲い掛かる。
 サイバラ直属の部下であるヤンス口調はそこそこ厄介だったが、サイバラ抜きでは所詮烏合の衆。あっさりと蹴散らした。

「ぐ~! と、とりあえず兄貴を助けて再出撃でヤンス!」

 ヤンス口調だけはまだ動く体力が残っていたようで、サイバラを探すためにも一時撤退した。
 ……サイバラもまた出てくるんだな。

「なんだか……調子狂うな……」

 せっかく気合いを入れてここまで来たのに、開幕早々のドタバタを見て、俺は愚痴をこぼしながらも先へと進んだ。
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