記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第7章 家族

第84話 マッドサイエンティスト

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 ルクガイア王国領内でも王都からかなり離れた位置にあるテコロン鉱山。
 強力なモンスターも多いが、希少な金属が手に入るため、多くの冒険者が危険を覚悟で足を踏み入れる場所である。
 だがそんなテコロン鉱山にも誰も踏み入ることができない"禁則地"と呼ばれる場所があった。
 鉱山の最深部、入り組んだ道を超えながら進んだ先にある洞窟の奥がそう呼ばれていた。

「なんげあん人はこげんとこ籠るばいね」

 そこに一人足を踏み入れる方言が混ざりすぎて言葉が滅茶苦茶になってしまった男、黒蛇部隊副隊長、ポール。
 彼の目的の人物はこの場所にいた。

「これより先、マスターの許可なき者は進入禁止です」

 洞窟を少し入ったところでメイド姿の女性が現れた。水色の髪に同じく水色の瞳が特徴的な美人。彼女は洞窟に入ってきたポールの前に立ちふさがるように現れた。

「おいのこと、分かるけんね? "ドク"に話さあるけ」
「……データベースとの照合が完了しました。元ルクガイア王国騎士団二番隊隊士、現国王直轄黒蛇部隊副隊長のポール様。進入を許可します。どうぞお通り下さい」

 メイドの確認が終わり、道を開けてもらったポールは洞窟の奥へと進んで行った。

「こげんとこ空気、やっぱ慣れんたい」

 洞窟の奥へ進むほど、鉄と油のにおいが強くなる。ポールは鼻を抑えながら目的の人物の元に到着した。

「ニナーナが誰を通したのかと思ったらお前かよ、ポール」
「"ドク"。久しゅうごぜんます」

 ポールが"ドク"と呼ばれる人物に礼をする。黒蛇部隊の前身、元ルクガイア王国騎士団二番隊の隊長。マカロンやラルフルに万が一のことがあった際は"ドク"に連絡を入れることが黒蛇部隊内での一応の取り決めとなっている。

「いきなり来たんが、おいは火急さ知らせばい報告――」
「あー、ちょっと待て。これ付けて話せ」

 "ドク"はポールに一風変わった形をしたマスクを手渡した。

『二番隊の頃から俺と話すときはこの"翻訳機"付けさせられますよね。そんなに俺の言葉って聞き取りづらいですか?』
「メッチャクチャ聞き取りづらい」

 マスクは"翻訳機"と呼ばれ、ある程度の言語を分かりやすく自動翻訳してくれる装置だった。

「それにしても黒蛇部隊が俺のところに来るなんて珍しいな。もう俺は隊長でも何でもない、むしろ王国内の一級危険人物なんだが?」
『そうは言いましてもラルフルやマカロンに何かあって事後報告になったら、あなた後で絶対怒るでしょう?』
「もうあいつらもいい歳だ。俺の出る幕じゃねーよ。それにラルフルのことはこの間、バクトの阿呆とイトーのおっさんからある程度は聞いた」

 ラルフルがスタアラ魔法聖堂の聖女ミリアと交際を始めたこと、死に瀕したこともあったが一命をとりとめたこと。それらの情報はバクト公爵やイトー経由で"ドク"の耳にも入っていた。

『はぁ、まあ。聞いたうえで何も行動しないならこっちも口出ししませんが……』
「ゴチャゴチャうるせーんだよ。お前ら俺のことを何だと思ってんだ」
『とりあえず、"マッドサイエンティスト"ですね』
「それについては否定しねー」

 "ドク"が魔法とは異なる力、"科学力"で作り上げた兵器は時代の百年以上先を行くと言われている。それほど強大な頭脳を持ちながら"ドク"はテコロン鉱山の奥に籠り、ただひたすらに兵器の開発を進めている。

「それよりさっさと要件を言え。世間話をしに来たんじゃねーんだろ?」
『ああ、そうでした。マカロンが誘拐されそうです』
「それは一番最初に言え! 大問題じゃねーか!!」

 "ドク"の態度が急変する。怒りと焦りが混ざった表情を浮かべる。

『現在、相手の同行を伺っているところです。黒蛇部隊を総動員して情報を集めているところです』
「当たり前だ! 陛下の命令よりも優先しろ! 俺も向かうぞ! 誘拐しようとしてる奴らのところに案内しろ!」
『まだ、誘拐されたわけではありませんが』
「誘拐されてからじゃおせーんだよ! 状況についてはまたジフウに"無線"で確認取れ!」

 "ドク"は慌てて使えそうな携帯兵器を装備し、さらに奥の部屋の扉を開ける。

「出番だ! フレイム! 飛行形態で全速力だ!」
「フォオオオオ……」
「なに? 『昨日遅くまで起きてたから眠い』だと~? んなもん知るか! さっさと出撃しろ!」

 フレイムと呼ばれた全身を見慣れない鎧で包んだ大男に"ドク"は檄を飛ばして出撃を命じる。


「さっきば『俺の出る幕じゃねん』と言うていけんど、やっぱ二人さ危険迫っとる分かりゃと動くばいね……」
「だからゴチャゴチャうるせーんだよ! それと"翻訳機"を外すんじゃねー!」
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